土田陽介のユーラシアモニター
【土田陽介のユーラシアモニター】原油高に伴う税収の上振れは財政再建に用いられる可能性大で景気加速につながらず
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土田 陽介
三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員
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2026.4.7(火)
ロシア経済の不調が鮮明である。2025年通年の実質GDP(国内総生産)は速報ベースで前年比1.0%増にとどまり、2023年、2024年と2年続いた4%成長から失速した。いわゆる軍事ケインズ効果はすでに剝落しており、今やロシアは軍事スタグフレーションの中にある。つまるところ、軍需にはもはやロシア経済を突き動かすだけの力がない。
連邦統計局はまだ2025年第4四半期の成長率を出していないが、通年の成長率から逆算すると前年比1.0%増と、第3四半期の同0.6%増から持ち直した。一方で、経済発展省が公表する月次の実質GDPは、2026年1月時点で前年比2.1%減と2023年3月(同0.6%減)以来の前年割れとなっている。経済は実質ゼロ成長の状態だ。
ロシア経済が厳しさを強めているという見解は、多くのロシアのエコノミストが認めるところである。ただ、他の主要国と比べれば、ロシアの経済成長率はまだ高いから堅強なままであるという肯定的な評価もあるようだ。とはいえ、ウクライナとの間で戦争を抱えているロシアにとって、そうした評価はあまり意味をなさないのではないか。
なぜなら、ロシア国民にとって重要なことは所得の増加であり、生活の安定だからだ。2年間、実質4%成長が続いた後で1%まで成長が失速したら、通常なら国民の不満は募る。国民は何よりもまず、過去との比較に基づき、現在の経済の状況を評価する。他国と比較すれば秀でているのだから我慢しろと言われても、誰も納得しない。
それに、ロシアの4%成長は、軍需が民需を圧迫するかたちで実現した経済成長だ。つまり、国民は高インフレという対価を否応なしに払わされている。それに見合う所得の増加が実現できているのかも疑わしい。通例、実際に戦火を交えることで生じる特需の恩恵を受ける業種は偏る。国民生活を豊かにする戦争などまずありえない。
ウラジーミル・プーチン大統領にとっての最優先事項は、国民の支持をつなぎ止めておくことだ。これがなければロシアはウクライナとの戦争を続けることは不可能だし、そもそも政権を維持できない。言い換えると、プーチン大統領は為政者として、国民の生活の安定を何が何でも守り、国民の支持をつなぎ止めなければならない。
こうした観点から評価すると、ロシアで今、深刻化している家計の未払い問題は、プーチン大統領にとって憂慮すべき事態である。
消費者ローンの延滞率上昇はプーチン大統領にとって憂慮すべき事態だ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
