手でハートマークを作る女性兵士

ハートに騙されないで!米陸軍は、ジェシカ・フォスターという名の女性兵士は実在しないことを確認した

RTS/Instagram/Swissinfo

スイスの主要メディアが3月26日~4月1日に報じたアメリカ関連ニュースから①3度目の「ノー・キングス」デモは何かを変えるのか②アップル創業50年 今の課題は③フェイクだった美人兵士ジェシカ・フォスター、の3件を要約して紹介します。

このコンテンツが公開されたのは、

2026/04/02 11:00

在外スイス人や「風変わりなスイス」の記事、日刊/週刊ブリーフィングを執筆。英語部門の記事の翻訳、編集、校正、動画のナレーションも担当。
ロンドンで生まれ、ドイツ語と言語学の学位を取得。2005年にベルンに移住する前はインディペンデント紙のジャーナリストだった。スイスの3つの公用語すべてを話すことができ、スイス国内を旅しながら、パブやレストランでスイス語を練習するのが好き。

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警察に連行される自由の女神に扮した抗議者

ロサンゼルスで3月28日、解散命令に従わなかったとして逮捕されるデモ参加者

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3度目の「ノー・キングス」デモは何かを変えるのか

「アメリカで何かが変わりつつあるのだろうか?」――スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは3月29日、こんな疑問を投げかけました。アメリカではその前日、各地で計数百万人がドナルド・トランプ米大統領やイラン戦争、大統領の権威主義的な政策に抗議するデモを起こしました。

ドイツ語圏大手紙NZZは「ドナルド・トランプの反対派が疲弊することはない」と伝え、主催者集計で800万人が、全国規模の「ノー・キングス(王は要らない)」抗議デモに1年で3度目の集結を果たしたと報じました。

NZZによると、抗議者たちはトランプ氏の移民政策と移民捜査局(ICE)のみならず、イラン戦争についても批判しました。「一方では、トランプ大統領が戦争を恣意的で一見無秩序なやり方で遂行していることに不満を抱き、他方では、その結果としてガソリン価格が高騰していることに苛立ちを感じている」

NZZは、ノー・キングスデモの参加者の中心は激しいアンチ・トランプ派で、「アメリカの政治勢力均衡を覆す可能性は低い」と分析しました。「しかし、全国各地で行われているこれらのイベントは、民主党のエリート層以外にもトランプ氏の反対派が11月の中間選挙で議会の政権交代を実現しようと固く決意していることの証だ。この決意は多くのことの命運を握る。民主党が中間選挙で勝利するためには、トランプ政権に不満を持つすべての人々が実際に投票所へ足を運ぶようにしなければならない」

NZZはまた、3回目の「ノー・キングス・デー」は根本的に新しい洞察をもたらさなかったと結論付けました。「多くのアメリカ人、特に左派は、トランプ氏とその政策を嫌悪し続けている。しかし、イラン戦争が長引き、国内の日常生活費が著しく高騰すれば、反トランプ連合を拡大するのに役立つだろう」

ターゲス・アンツァイガーは、トランプ氏にとって問題となっているのは「ノー・キングス」抗議運動だけではないとの見解を示しました。「アメリカでは何かが変わりつつあるのかもしれない」と指摘し、「共和党の政治家でさえ、イラン戦争への不満を公然と表明し始めているという事実が、このことを裏付けている。また、トランプ氏の不人気がかつてないほど高まっていることも示唆しており、秋の選挙で全てが公正に行われれば、トランプ氏とMAGA(米国を再び偉大に)運動は敗北に備えなければならないだろう」と続けました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク、NZZ外部リンク/ドイツ語)

スティーブ・ジョブズ

1998年、iMacの横に立つスティーブ・ジョブズ。

Keystone

アップル創業50年 今の課題は

米テック大手アップルは4月1日、創業50周年を迎えました。スイスメディア各紙は共同創業者スティーブ・ジョブズの功績を振り返り、「成功の怪物」が人工知能(AI)による存亡の危機に直面していると警告しました。

50年前の1976年4月1日、スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック、ロナルド・ウェインがアップルを立ち上げました。スイス・フランス語圏の日刊紙ル・タンはそれでも「アップルとは、もちろん1人の人物、スティーブ・ジョブズに他ならない。1985年に一時的に表舞台から退いたものの、12年後に復帰し、iMac、iPod、iPhoneといった代表的な製品を生み出した、天才的な発明家だ」

NZZは、ジョブズについて「彼は単なるいじくり屋でも発明家でもなく、ユーザーが何を求めているかを理解していた完璧主義者だった。ハードウェアを作り、ソフトウェアを書くのは他の人々だった。製品をクールなものにしたのはジョブズだった」と評しました。

2011年に亡くなったジョブズは、今日でも現代の起業家の典型と見なされている、とNZZは続けました。「製品発表会をショーのように演出した最初の人物だった。コンピューターに語りかけ、封筒から薄型ノートパソコンを取り出した。黒のタートルネックを制服のように着こなし、自らを1つのブランドに仕立て上げた」

ル・タンによると、アップルブランドの時価総額は今や4兆3000億ドル(約690兆円)に達し、従業員数は16万6000人。昨年は売上高4160億ドル、利益1100億ドル超を計上しています。「アップルは成功の怪物であり、金のなる木であり、象徴的なブランドだ」

「しかし、何も保証されているわけではない」と同紙は続けます。「まず、AIという課題がある。音声アシスタントSiriを導入した2011年には先駆者だった同社は、Siriを進化させることも、独自のAI環境を開発することも、約束を守ることもできず、アップルは自社の携帯電話にChatGPTを搭載せざるを得なかった」

ル・タンはさらに、イノベーションの課題も指摘します。アップルの最新の主力製品であるVision Proヘッドセットは、4000フラン(約80万円)近い価格のニッチな製品だと指摘。また579フランのMacBook Neoを発売したばかりですが、「新製品は稀だ」と書きました。

しかし、チューリヒの証券会社Maverix Securitiesのセルゲ・ヌスバウマー氏は、ル・タンの取材により肯定的な見方を示しました。「アップルが生成型AIで遅れをとっているのは明らかだ。しかし、アップルに求められているのは最高のモデルを開発することではなく、自社デバイス上で最高のAI体験を提供することだ。そして、アップルはそれが十分に可能だ。これまでアップルが先駆者になることは稀だったが、統合、収益化、規模拡大においてはトップになることも多い」

ヌスバウマー氏はイノベーションに関して「アップルは単にデバイスを販売しているのではなく、長年にわたって継続的な収益を生み出すエコシステムを販売している」と指摘しました。「iPhone、iCloud、App Store、Apple Music、Apple Payなどのサービスに深く依存するようになると、他社製品に乗り換えるのは難しくなる」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)

ジェシカ・フォスターとドナルド・トランプ

ドナルド・トランプと写っていたジェシカ・フォスターはAIアバターだったことが明らかに

RTS/Instagram/Swissinfo

フェイクだった美人兵士ジェシカ・フォスター

フランス語圏のスイス公共放送(RTS)によると、米兵ジェシカ・フォスターは「米国を再び偉大に(MAGA)」運動にとって「理想の女性」でした。唯一の問題は、フォスターがまさに幻想、つまりAIによって生み出された存在だったということです。RTSは、ジェシカ・フォスターが「AI時代の憂慮すべき新潮流」の象徴例である理由を解説しました。

先週、スイスの複数のニュースサイトで写真映えする米兵ジェシカ・フォスターの写真を掲載しました。RTSによると、フォスターのInstagramアカウントはアメリカで爆発的に人気を集め、2025年12月~2026年3月に100万人以上のフォロワー、数千件の「いいね!」、さらには「愛の告白」を集めました。RTSによると、インスタでは常に笑顔で迷彩服姿のフォスターが戦闘機や空母と一緒にポーズをとったり、トランプ米大統領やロシアのウラジーミル・プーチン大統領といった政治家と並んでポーズをとったりする写真が投稿されていました。

「しかしフォスターの写真や動画、キャプション、トランプ支持の『米国第一主義』の経歴などデジタル上のアイデンティティは全て、AIベースの画像・動画生成ツールを使用して作成されたものだ」

記事では、フォスターが実在の人物ではないことが明らかになった経緯を解説しました。ディープフェイクの専門家や調査報道記者が、IDタグに記載された名前の間違いやアメリカ国旗の誤りなど、数々の矛盾点を発見。さらに米陸軍がジェシカ・フォスターという名の女性兵士は実在しないことを確認したといいます。

「しかし、フォスターは単なるデマではなかった」とRTSは続けました。「このアカウントの背後には商業的な目的があった。それは、主に男性で保守的かつ愛国的な視聴者をOnlyFansのページに誘導することだった」。

OnlyFansとは、投稿されたコンテンツに対してフォロワー(ファン)から料金を徴収するオンラインコンテンツ購読サービスです。RTSによると、フォスターの「ファン」の中には、1つの投稿に100ドル以上もの大金を投じた人も。自分たちのメッセージに個人的に返信してくれる本物の兵士と交流していると信じていたそうです。

この点について、NZZは「フォスターがトランプ氏と親しい関係にあることや軍での階級は、特にMAGA運動の男性層にアピールすることを意図している」と分析しました。

RTSによると、インスタを運営する米MetaはAIの使用を開示せず、誤解を招くコンテンツを公開したため、3月19日になってようやくフォスターのアカウントを閉鎖しました。OnlyFansも追随しましたが、RTSによると、フォスターの画像はX(旧ツイッター)をはじめ他のSNSで引き続き拡散されています。

RTSは、「ジェシカ・フォスターの事例は、AI時代における憂慮すべき新たな傾向を示している」と総括します。「もはやフェイクニュースや改ざんされた画像の問題にとどまらず、政治的感情、性的欲求、そして国民の信頼を操作するために設計された、本格的な架空のデジタル人格の作成が問題となっている」

「この現象は、米国におけるネオコン陣営(ただし、これに限らない)の間でますます広まっている戦略を浮き彫りにしている。それは、極右アカウントが愛国心、ソフトポルノ、AIを組み合わせて政治的なメッセージを拡散し、ユーザーの関心を収益化し、人気を獲得するというものだ」(出典:RTS外部リンク/フランス語、NZZ外部リンク/ドイツ語)

次回「スイスのメディアが報じた米国のニュース」日本語版は4 月15日(木)配信予定です。

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