人口減少、少子化、学校統廃合、教員不足——。日本社会がこれから直面する問題を、一部の地方では、すでに日常として抱えてきた。だからこそ地方には、「学校とは何のためにあるのか」「子どもに何を手渡すべきか」を、迷いながらも考え続けている現場がある。AERA with Kids+の本連載「未来の学びは地方から始まる」では、そうした試行錯誤の最前線にある学校や人を訪ね、地方から立ち上がりつつある“学びの未来”を描いていく。第1回は、島根県の県立隠岐島前(おきどうぜん)高校を取材した。
【写真】島根・隠岐島前高校の様子はこちら(全5枚)
離島の高校で行われる「魅力化プロジェクト」
連載初回に島根・隠岐島前高校を選んだのは、「島留学」という言葉を耳にしたことがきっかけだった。
都会を離れ、離島で学ぶ高校生がいる——。最初はどこか特別な選択のように感じたが、その受け皿の一つ、隠岐島前高校の「高校魅力化プロジェクト」という言葉に出合い、自分の目で確かめたいと思うようになった。
東京から飛行機で向かった先は、鳥取県の米子空港。漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげる氏の故郷にちなみ、「米子鬼太郎空港」の愛称でも知られている。空港を出てJR境線に乗り換え、港のある境港駅へ。妖怪が描かれた「鬼太郎列車」が走る、どこか旅心をくすぐるローカル線だ。
『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する「こなきじじい」をあしらったラッピング車両。境線を走るのは、電気で動く「電車」ではなく、ディーゼルエンジンを搭載した「気動車」だ
境港から船(レインボージェット)に乗り、隠岐諸島へ向かう。隠岐諸島は、島根半島から北へ約60キロ、日本海に浮かぶ島々だ。歴史をさかのぼれば、後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流された地としても知られる。
大きく島後(どうご)と島前(どうぜん)に分かれ、島後は隠岐の島町、島前は西ノ島町・海士(あま)町・知夫村の3町村、計四つの島で構成されている。島と島の移動は、今も船が基本。隠岐島前高校があるのは、海士町。島前地域唯一の高校だ。
海に囲まれた隠岐島前高校。島の自然そのものが、学びのフィールドになっている (写真:学校提供)
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