フィンランド発のテック企業Jolla(ヨラ)は、広く名を知られた存在ではないかもしれない。しかし同社は10年以上にわたり、Linuxベースの「Sailfish OS」をグーグルのAndroidとアップルのiOSという二強体制に対する代替として掲げてきた。そして、初代「Jolla Phone」の市場投入から13年が経ったいま、2020年までアップデートを提供し続けた同社は、同名の後継機を携えてスマートフォン市場に戻ってきた。
Jollaは今回この端末を“欧州のスマートフォン”として売り出している。ビッグテックが第2次トランプ政権に接近したことを受けて高まった不信感に応える戦略だ。
初代のスカンジナビア風デザインを踏襲した新型Jolla Phoneの価格は649ユーロ(約12万円)。2025年12月の発表以降、すでに1万件以上の予約注文を獲得している。出荷は6月末から開始される予定だが、当面はEU、英国、ノルウェー、スイスに注力するという(日本での発売は発表されていない)。今週バルセロナで開催されたモバイルワールドコングレス(MWC)では、ハードウェアの詳細も明らかにされた。
欧州発スマートフォンの再挑戦
Jollaの歩みは決して平坦ではなかった。2015年に「Jolla Tablet」の発売が失敗に終わった後、同社は破産寸前に追い込まれ、自動車メーカーやロシアを含む各国政府に「Sailfish OS」をライセンス供与する方向へと事業を転換した。しかし、ウクライナ侵攻後、ロシアとの関係を断たざるを得なくなる。その後の企業再編を経て、Jollaの資産はJollyboysという新会社のもと、旧経営陣により取得された。

新しいJollaのスマートフォン。
Courtesy of Jolla
2024年には、トルコ企業との協業で製造された「Jolla C2 Community Phone」によってスマートフォン市場へ復帰。この経験が、新型Jolla Phoneで再び本格的にハードウェア事業へ挑戦する足がかりとなった。C2とは異なり、新型Jolla Phoneはフィンランドのサロでのみ、組み立てられる。かつてノキアの携帯電話が製造されていた場所だ。
「欧州の人々は、欧州の技術をより求めています」。Jolla MobileのCEOであるサミ・ピエニマキは『WIRED』にこう語る。「最近、多くの人がビッグテックから距離を置きたいと考えるようになっています。特に欧州では、デジタル主権を確保できるテクノロジーへの関心が高まっています。だからこそ、わたしたちのような企業にも市場でのポジションが生まれるのです」
10年以上前は、スマートフォンをゼロから開発することははるかに困難だった。しかし現在では、多額の初期費用をかけずに、比較的身軽な体制でも事業を展開できるとピエニマキは説明する。
部品は複数の国やベンダーから調達されている。「MediaTek Dimensity 7100 5G」チップは台湾製。5,000万画素のメインカメラと1,300万画素の超広角カメラセンサーはソニー製。8GBまたは12GBのRAMは韓国のSK Hynix製だ。
「中国製の部品もありますが、その点については完全にオープンです。重要なのは、ソフトウェアを自社で開発し、フィンランドでインストールしていることです。それによって製品の信頼性と一貫性を守っています」とピエニマキは語る。
