2026年3月6日 午前7時30分

 【論説】学校教育の場で新聞を活用する「NIE」の本年度県内実践指定校9校の取り組みを紹介する報告集がまとまった。さまざまな人や社会とつながるツールとしての効果が示されており、先進的な実践例として参考にしたい。

 報告集は毎年発行され、児童生徒の思考力、対話力、生きる力などを伸ばす事例が多く掲載されている。これまでの実践校が積み上げてきた取り組みと新しい活動が加わり、NIEの深化を感じさせる。貴重な成果だけに、NIEに取り組むモデルになるだろう。

 実践1年目の小浜市内外海小は、「探究のサイクル」の中にNIEを取り入る活動を目指した。全校集会でNIEタイムを作り、縦割り班で自分の選んだ記事を紹介し合った。またPTA活動と連携し教育講演会を企画。同校は「家庭での新聞活用につながっていくだろう」と期待する。

 実践2年目の越前市武生六中は、サブテーマを「新聞を読み深め、自分の考えを表現する」に設定。各教科の授業では「批判的な考察」「社会の実情と結びつける」という狙いで、数学や社会、音楽のほか、図書や報道委員会でも積極的に新聞を活用した。年間活動として全教員がワークシート製作に輪番で取り組んだ。「新聞にはたくさんのネタが転がっている」と教員自身が新聞への理解を深めた。

 「戦争のない平和な世の中」を探究テーマにしてきた福井大附属義務教育学校(実践2年目)は、同校出身で前駐ウクライナ大使の松田邦紀さんを招き、生徒と議論するシンポジウムを開催。生徒たちは事前に新聞記事を読んだ上で、松田さんからの生の声を聞き、自分たちが取り得る防止策や考えを模造紙に貼り、紙上で意見交流した。

 NIE実践を経験した教員らでつくる県NIE教育研究会の吉村治基会長(鯖江市立待小校長)は「記事を選び、少し手を加えるだけですばらしい教材になる。若い教員が新聞に興味関心を持つことがNIEの礎になる」と話す。

 確かな情報を伝える新聞記事の向こうには、人や社会がある。さまざまな取り組みや人の願いに思いをはせ、思考力を深め、社会とつながることが重要だ。記事から、そこに関わる人の動機や信念、思いを読み取ってほしい。

 NIE実践はこれらを身に付けるための手助けになるだろう。1995年から始まった県内のNIE実践校制度。約30年間の実践を県内全域に受け継ぐことが課題である。