狛犬や龍などの神獣を描き、「Great Harmonization(大調和)」を理念に掲げて世界的に注目を集める現代アーティスト・小松美羽さん。
「霊性」という視点から、宇宙や精神世界をふくむ森響万象に宿る力を顕現させ、調和させることを試みる独自の世界観が評価され、その作品は大英博物館など国内外の美術館や出雲大社など主要な寺社にも収蔵されています。ヒルマ・アフ・クリントをはじめとするスピリチュアルな作家への関心が世界的に高まる近年、小松さんの芸術はますます存在感を強めています。
そんな小松さんが北海道ならではの新作を含む約60点を展示する北海道立函館美術館の「小松美羽 祈り 宿る」展が9月20日に始まりました。
小松美羽 祈り 宿る
会場:北海道立函館美術館(函館市五稜郭町37-6)
会期:2025年9月20日(土)〜11月30日(日)
休館日:月曜日(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日、11月25日
観覧料:一般 920円、高大生 610円、小中生 300円
詳しくは公式サイトへ。
建築家・田上義也氏の設計によるドーム型の天井が壮麗な同美術館のエントランスで出迎えてくれたのは、小松さんによる山犬の彫刻です。人は深い瞑想状態に入ると無防備になってしまうので、中央の石の上に座してそのようになっている人を守るようにぐるぐると回っているとのこと。
小松美羽《輪の中で瞑想》 2025年 ※危険防止のため石の上には登らないでください
田上義也氏の設計によるドーム型の天井が壮麗な北海道立函館美術館
神獣と共存
それにしても、小松さんにはいつもこのような神獣が見えているのでしょうか?答えは展示作品の中にありました。2016年に制作した作品群で、小松さん自身が撮影した写真の上に、その場所から感じとったものを手彩色で描き込んでいるものです。こちらは、イスラエルの博物館に展示された獅子の彫像を見ている小松さんの目線になった私たちが、そばを走り回る二頭の神獣を見ている感覚を得られる作品。
小松美羽《祖先を辿る》 2016年
他にも、イギリスの片田舎の川からヌッと現れた神獣など、日常的に見えているのだということがわかりました。
小松美羽《ガーゴイル》 2016年
小松さん曰く「神獣は神殿などの守護として配置されている事が多く、参拝する人々にとりつく悪いものを見抜き排除する役割があります。また、天と人とを繋ぐ役割もあります。神獣たちは東洋、西洋の神話にも多く存在します」とのこと。
小松美羽《神話は未来形》 2022年 個人蔵
「目の中に仏様がいますね」と言うと、すかさず「それは瞑想する自分自身です」と小松さん。なんと!それまで他人事のように外側にいた自分でしたが、この瞬間、絵の中で瞑想する自分になれたような気がしました。みなさんもジッと見てみてください。
小松美羽《神話は未来形》 2022年 個人蔵 部分
エゾオオカミに学ぶ
そして今回一番心を打たれたのは、人間のエゴによって絶滅してしまった北海道固有のエゾオオカミを描いた作品群です。2022年にアイヌ民族の「絶滅種鎮魂祭」に参加して出会ったエゾオオカミのスピリットを描いたとのこと。
小松美羽《エゾオオカミたちはアイヌの言霊に導かれる》 2025年
例えば、リースのような円をなして回りながら昇天していくエゾオオカミの絵がありましたが、彼らは人を恨んではいないとのこと。「オオカミ達は、やり返すこともできないしそうしようとも思っていません。ただ同じ過ちを繰り返さないよう人間を見ています。それは『自然が持つ寛容さ』で、私たちも感じていかなければいけません」と小松さん。「やられたらやり返す」となりがちな人間の性が清められる思い!
小松美羽《エゾオオカミたちはアイヌの言霊に導かれる》 2025 部分
中心に描かれているのは煩悩を払う剣です。搾取や争いを繰り返して今日に至る私たち人間は、果たしてこのようなサイクルから脱することはできるのでしょうか?
「目指すか目指さないかですから、そうなりたいと思えばできます」と小松さんはきっぱり。私は大きな希望を感じました。迷える私たちを希望に導いてくれる展覧会。飛行機に乗ってでも訪れることをおすすめします。
担当学芸員 門間仁史さんからの一言
小松さんは実は、銅版画家としてキャリアをスタートしているのでその繊細な線描をマスターしています。最近の大型の作品にも銅版のような細かな線描があり、そういう確かな技術が彼女が描く芸術の世界に深みを与えていると思います。
小松美羽《六道輪廻》 2011年 部分
小松美羽《雪の日、エゾオオカミのスピリット達の呼びかけにたくさんの仲間たちがやって来たよ》 2025年 部分
ぜひこの機会に小松さんの線が持つ力にも注目してみてください。(ライター・菊池麻衣子)
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