東京都庭園美術館(白金台)で開幕した「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」。開幕前日の内覧会で取材しました(許可得て撮影)。アール・デコという強い絆に結ばれたハイジュエリーメゾンと旧朝香宮邸の建築が、絶妙のハーモニーを響かせていました。

永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ
Timeless Art Deco with Van Cleef & Arpels High Jewelry

会場:東京都庭園美術館(東京都港区白金台5-21-9)

アクセス:[目黒駅]JR山手線 東口/東急目黒線 正面口より徒歩7分
[白金台駅]都営三田線/東京メトロ南北線 1番出口より徒歩6分

会期:2025年9月27日(土)~2026年1月18日(日)

開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
※11月21日(金)、22日(土)、28日(金)、29日(土)、12月5日(金)、6日(土)は夜間開館のため20:00まで開館(入館は閉館の30分前まで)

休館日:毎週月曜日及び年末年始(12月28日~1月4日)
※祝日の月曜日(10月13日、11月3日、24日、1月12日)は開館、翌日の火曜日(10月14日、11月4日、25日、1月13日)は休館

観覧料:一般1,400円 大学生(専修・各種専門学校含む)1,120円 高校生・65歳以上700円
※中学生以下は無料(予約不要)
※本展は日時指定予約制です

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館、日本経済新聞社

特別協力:ヴァン クリーフ&アーペル

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

年間協賛:戸田建設株式会社、ブルームバーグ、ヴァン クリーフ&アーペル

展覧会特設サイト:https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/

1925年にパリで開催されたアール・デコ博で絶賛されたメゾンと、同博でアール・デコに魅せられ、邸宅にその粋を結集した朝香宮夫妻。

100年の時を経て、東京の地で両者が出会うというドラマチックな展覧会です。共通のルーツを持つがゆえの相性の良さでしょうか。互いに美点を引き出し合います。

「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ」東京都庭園美術館(白金台)で2026年1月18日(日)まで 歴史的なアール・デコ博から100年。厳選されたジュエリー、時計、工芸品約250点を展示し、匠の技を紹介します。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)

左上から時計回りで東京都庭園美術館 本館 大客室、絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット(1924年)、東京都庭園美術館 本館 正面外観、カメリア ミノディエール(1938年)

<以下はプレビュー記事です>

東京都庭園美術館(港区白金台)で9月27日から「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」が開催されます。「アール・デコ」という共通項を持ち、親和性の高い東京のミュージアムとフランスを代表するハイジュエラー。両者が協働して展覧会を開催するのは今回が初めてです。6月19日、東京・南麻布のフランス大使公邸にて開かれた記者発表会の模様をお届けしながら、本展の魅力に迫ります。

左から牟田行秀(東京都庭園美術館副館長)、方波見瑠璃子(東京都庭園美術館 担当学芸員)、アレクサンドリン・マヴィエル=ソネ(ヴァン クリーフ&アーペル パトリモニー&エキシビション ディレクター)、山本晃子(ヴァン クリーフ&アーペル ジャパンプレジデント)、西澤徹夫(西澤徹夫建築事務所)の各氏(6月19日、港区のフランス大使公邸で)

アール・デコ博でグランプリ、ヴァン クリーフ&アーペルの「匠の技」

 ヴァン クリーフ&アーペルは、1895年にアルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚をきっかけに創立されたハイジュエリー メゾンです。1906年、世界の名高い宝飾ブランドがひしめき合うパリのヴァンドーム広場22番地に最初のブティックを構えました。著者もこの広場のブティックを訪れたことがありますが、ハイセンスなパリを象徴する空間にうっとりすると同時に、職人の手仕事が生み出す本物の輝きに圧倒されました。

メゾンは四つ葉のクローバーをモチーフとしたアルハンブラ コレクションでよく知られていますが、その真の実力はハイジュエリーを見ずして語れないという程にヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーは雲上の存在です。最高品質の素材にこだわり、自然の美しさを称えた詩情溢れる作品も多く、受け継がれる「サヴォアフェール(匠の技)」とその芸術性は瞠目に値します。

本展のキービジュアルが掲示された記者発表会の会場(6月19日、港区のフランス大使公邸で)

本展は、そんなヴァン クリーフ&アーペルの作品を通して、1925年にパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称アール・デコ博覧会)」の100周年を祝うものです。メゾンは、この博覧会のジュエリー部門においてグランプリを受賞しました。当時の宝飾界に衝撃を与えた作品群の中から、《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)を見られるとあって本展に期待が高まります。

東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)はアール・デコの粋

 1922年から約3年間に渡りパリに滞在した朝香宮殿下と妃殿下も、1925年アール・デコ博覧会を訪れ感銘を受けたといいます。1933年に建てられた自邸(本展の会場である現在の東京都庭園美術館本館)の設計や室内装飾にアール・デコ様式が採用されているのはその為です。

主要な部屋の設計を博覧会の主要パヴィリオンの室内装飾も手掛けたアンリ・ラパン(1873‐1939)に依頼し、室内装飾にはガラス工芸家のルネ・ラリック(1860‐1945)をはじめとしたアーティストを多数起用しました。

東京都庭園美術館本館 正面 外観(画像提供:東京都庭園美術館)
東京都庭園美術館 本館 大客室(画像提供:東京都庭園美術館)

期待高まる歴史的建造物とハイジュエリーの融合

 東京都庭園美術館副館長の牟田行秀さんは、「機能性が席巻した時代にあっても、アール・デコ様式からは装飾が生活にもたらした遊び心が見て取れる。アール・デコ様式がこのように良い状態で残っているのはフランスでも珍しいこと。本展は建物とジュエリーの一体感を楽しんでいただける貴重な機会」と今展の意義について語りました。

アール・デコを通じてとても親和性の高い両者の出逢いが楽しみです。

 担当学芸員の方波見瑠璃子さんは、「建物もジュエリーもどちらもその時代に生まれた本物。生活する場所であった建物と身に着けるジュエリーは、どちらも“生活の中にある美”として魅力的」と展示の見どころについて話しました。

旧朝香宮邸とハイジュエリー、極上のコラボレーションとなる本展、非日常を日常のものとして想像しながら巡ってみるのも楽しそうです。

ヴァン クリーフ&アーペルのパトリモニー&エキシビション ディレクター、アレクサンドリン・マヴィエル=ソネさんは、「《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)は、旧朝香宮邸のダイニングテーブルの真ん中に飾られる予定。両者は装飾の類似点も多く、とても興味深い。ぜひ、素晴らしい空間でヴァン クリーフ&アーペルに受け継がれるサヴォアフェール(匠の技)を存分に味わって頂けたら」と話しました。お話の内容はもちろん、アレクサンドリン・マヴィエル=ソネさんの左手に輝くダイヤモンド装飾の美しい指輪と、ゴールドの時計も魅力的でした。

 「建物とジュエリーが自然に向き合うように」会場構成の西澤さん

会場構成を担当された西澤徹夫さん(西澤徹夫建築事務所)は、「パリのミュージアムでヴァン クリーフ&アーペルのジュエリー制作過程を映像で見る機会があり、職人の技術力に驚いた。歴史的建造物には保護の観点から展示の方法には制限もあるが、過度に演出するということではなく、建物とジュエリー両者が自然に向き合うような空間を作れたら。遺物とするのではなく、活用することも保存すること。作品が加わることで見え方が変わるのが建物、本展ではそのような化学反応も楽しんで頂きたい」と語りました。

本展、4つの章で巡る両者(建築、ジュエリー)の魅力

本展では、ヴァン クリーフ&アーペルが所有する「パトリモニー コレクション」と個人蔵のジュエリー、時計、工芸品が約250点、さらにメゾンのアーカイブから約60点の資料が展示される予定です。本館には、旧朝香宮邸の時代に合わせて1910年代から1930年代にかけて制作されたアール・デコ期の作品が飾られます。新館では、現在まで継承される「サヴォアフェール(匠の技)」の数々が紹介される予定です。各章の構成を紹介します。

 

第1章 アール・デコの萌芽

アール・デコ博覧会グランプリ受賞作品を含むハイジュエリーの数々が展示される予定です。

 バラはアール・デコ期において象徴的なモチーフの一つ。自然のモチーフを幾何学的に様式化する、アール・デコの美学が見て取れます。つぼみや葉の繊細な表現はもちろん、棘に至るまで巧みに再現されています。

絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット 1924年
プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
ローズ ブローチ 1925年
プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

東洋のイメージに着想を得たロングネックレスでは、幾何学模様と生け花を想起させるモチーフが調和し、東洋の精神性とアール・デコの様式美が融合しています。フランスを代表するメゾンでありながら、多様な文化の受容がみられるのもヴァン クリーフ&アーペルの大きな特徴と言えるでしょう。

ロングネックレス  1924年
プラチナ、エメラルド、ルビー、サファイア、オニキス、エナメル、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

 

第2章 独自のスタイルへの発展

ダイヤモンドやプラチナが巧みにあしらわれたホワイトジュエリーを中心に、1920年代以降ヴァン クリーフ&アーペルが追い求めた立体感のある新たな造形美が感じ取れます。

 1920年代末に制作されたコラレット ネックレスのネックラインには壮麗なダイヤモンドがあしらわれており、鮮やかなエメラルドは総計165カラットにも及びます。

コラレット 1929年
プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド エジプト女王ファイーザ旧蔵
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

幾何学的な八角形を中心に、純潔の象徴でもあるスズランのモチーフが様式化され、左右対称に配されたブローチ。この構成は、 秩序と幾何学を重視するアール・デコの美学を体現するものです。バックルベルトから着想を得たデザインは、チョーカーやブレスレットとしても使用可能で、連結部の精巧な技により、身体の曲線にしなやかに寄り添う着け心地を実現しています。

ハイジュエリーといえども、利便性にも配慮が見られ、所有者が身に着けてこそ輝きを放つ芸術品であったことが想像できます。

ブローチ 1927年
プラチナ、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

 

第3章 モダニズムと機能性

社会の変化に応じてヴァン クリーフ&アーペルが制作した、抽象的・幾何学的造形美と機能性とをかね備えた多様な作品が紹介されます。

 1933年に特許を取得した 「ミノディエール」とは、鏡をはじめ、女性が外出時に必要とする口紅、パウダーコンパクト、ライター、ノートなどを収めるケースのことです。

パーティバッグにしのばせたり、 そのままクラッチとして持つこともできます。本作品はさらにカメリア(椿)の部分を取り外しブローチとして着用することもできるという優れもの。

カメリア ミノディエール 1938年
イエローゴールド、ミステリーセット ルビー、ルビー
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

「南京錠」を意味する「カデナ」をかたどったリストウォッチ。1935年に誕生して以来、メゾンを代表するコレクションとして知られています。一見ブレスレットのようにも見えるデザインは、女性が公の場で時刻を確認するべきではないと考えられていた時代、わずかに傾いた文字盤からさりげなく時刻を確認することができるようにと工夫されたものでした。

実際にカデナウォッチを身に着けてみると、文字盤を覗き込まなくても目線を手元に落とすだけで時刻を確認することができ、よりエレガントな仕草に感じられたものでした。モダンで大胆なデザインは現代を生きる人々が身に着けてもしっくりくるもので、そのような普遍的美もヴァン クリーフ&アーペルの大きな魅力の一つと言えるでしょう。

カデナ リストウォッチ 1943年
イエローゴールド、ルビー
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

 

第4章 サヴォアフェールが紡ぐ庭

ヴァン クリーフ&アーペルに現代まで継承され続けている「サヴォアフェール(匠の技)」の数々が、5つのセクションに分かれて紹介されます。メゾンが愛する草花や動物をモチーフとしたジュエリーが織りなす、5つの庭園を巡る体験をお楽しみいただけます。

躍動的に咲く菊の花をかたどったクリップは、華やかなルビーで表現されています。ヴァン クリーフ&アーペルが1933年に特許を取得した、石を留める爪を表に見せずに宝石の滑らかな質感を実現する「ミステリーセット」と呼ばれる宝飾技法が用いられています。

「ミステリーセット」の作品をいくつか手に取ったことがあります。その美しさは現代の作品にも受け継がれており、石を均一にカットしてレーンに滑らせる必要があるために、想像よりも贅沢に石が使われることを知り圧倒されました。

クリサンセマム クリップ 1937年
プラチナ、イエローゴールド、ミステリーセット ルビー、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

「ジップ ネックレス」は、服飾業界で用いられたジッパーから着想を得たもので、タッセルをスライドさせてジップを閉じるだけで、ネックレスからブレスレットへと変容することができるのも魅力。ヴァン クリーフ&アーペルの作品は、ファッションから影響を受けたものが多いのも特徴です。本デザインは1938年に特許が取得され、1950年に実際のジュエリー作品として誕生しました。

現代に制作されたジップネックレスを手に取り見せていただく機会があり、宝石の数々があしらわれてもタッセルの動きが滑らかなことに感動しました。創造の中心にはいつも職人技があることを実感させられます。

シャンティイ ジップ ネックレス 1952年
イエローゴールド、プラチナ、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

待ち遠しい開幕

ポスタービジュアル

時代を超えて人々を魅了し続けるアール・デコ、当時それらがヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーに授けた輝きと、今なお引き継がれる「サヴォアフェール(匠の技)」を体感できる貴重な機会です。東京都庭園美術館が持つ建物のパワーも、時代を超えたジュエリーに大きな光を当ててくれそうです。(ライター・山本まりこ)

永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ
Timeless Art Deco with Van Cleef & Arpels High Jewelry

会場:東京都庭園美術館(東京都港区白金台5-21-9)

アクセス:[目黒駅]JR山手線 東口/東急目黒線 正面口より徒歩7分
[白金台駅]都営三田線/東京メトロ南北線 1番出口より徒歩6分

会期:2025年9月27日(土)~2026年1月18日(日)

開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
※11月21日(金)、22日(土)、28日(金)、29日(土)、12月5日(金)、6日(土)は夜間開館のため20:00まで開館(入館は閉館の30分前まで)

休館日:毎週月曜日及び年末年始(12月28日~1月4日)
※祝日の月曜日(10月13日、11月3日、24日、1月12日)は開館、翌日の火曜日(10月14日、11月4日、25日、1月13日)は休館

観覧料:一般1,400円 大学生(専修・各種専門学校含む)1,120円 高校生・65歳以上700円
※中学生以下は無料(予約不要)
※本展は日時指定予約制です

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館、日本経済新聞社

特別協力:ヴァン クリーフ&アーペル

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

年間協賛:戸田建設株式会社、ブルームバーグ、ヴァン クリーフ&アーペル

展覧会特設サイト:https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/

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