2025.08.05

大阪歴史博物館(大阪市中央区)で特集展示「YABU MEIZAN」が9月3日から開催されます。

江戸時代の終わりから明治時代にかけて、日本から諸外国に輸出された鹿児島の薩摩焼は“SATSUMA” と呼ばれ一大流行を巻き起こしました。この流行に乗って全国の窯業地や輸出港に近い地域でも「薩摩焼」風陶磁器の製産や上絵付を行う産業が見られるようになりました。そうしたなか、明治初期から昭和初期までのおよそ半世紀にわたり、大阪市北区でも輸出向け薩摩焼の上絵付と販売が行われており、YABU MEIZAN(藪明山)はその工房主の名前でありブランド名でもありました。

工房主の藪明山こと政七(1853~1934)は南画家・藪長水(1813~1867)の子として嘉永6年(1853)に大阪で生まれ、明治初年から大阪で実業に従事し、明治13年(1880)に工房を構え活動しました。大正9年(1920)には、その功績をたたえ大阪府より実業功績者表彰を受けるなど、近代大阪の美術工芸界に重きをなした人物のひとりでもありました。
本展では、平成17年(2005)に開催した特集展示「明山薩摩の美―万国博覧会で愛された近代大阪のやきもの―」から20年間の研究成果をもとに、YABU MEIZAN(藪明山)の実像に迫ります。

特集展示「YABU MEIZAN」

会場:大阪歴史博物館 8階 特集展示室(常設展示場内)
(大阪市中央区大手前4-1-32)

会期:2025年9月3日(水)~11月3日(月・祝)

開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

休館日:火曜日(ただし9月23日[火・祝]は開館、翌24日[水]は休館)

観覧料:常設展示観覧料で観覧可
(大人:600円、高校生・大学生:400円)
※中学生以下無料
※大阪市内在住の65歳以上(要証明)無料
※障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料

問い合わせ:TEL 06-6946-5728

アクセス:Osaka Metro谷町線・中央線「谷町四丁目」駅2・9号出口すぐ
大阪シティバス「馬場町」バス停前

公式SNS:X(旧Twitter) Instagram YouTube
詳細は、大阪歴史博物館公式サイトまで。

主な展示資料を紹介!
藪明山肖像写真(左)と藪恒夫肖像写真(右) 大阪歴史博物館蔵(菅野京子氏寄贈)

藪明山(1853~1934)こと政七は、明治13年(1880)10月には大阪市北区中之島二丁目に薩摩焼上絵付工房を開設して“SATSUMA”(薩摩焼)の上絵付と欧米諸国向けの販売事業を手がけました。明山の養嫡子・藪恒夫(1868~1941)は、岡山県津山の士族・中西家に生まれました。明治16年(1883)に明山の妻カヨの実母の養子となり、のちに明治28年(1895)に藪家に入籍、明山とともに工房の運営を担い、明山の引退後二代明山を継ぎました。

白象唐子遊図皿 藪明山 明治時代 大阪歴史博物館蔵(森田まみ子氏寄贈)

海外の「薩摩焼」の需要に応え、いち早く輸出事業を手がけた窯場のひとつが京都の粟田焼でした。明山の工房では、はじめ粟田焼の帯山窯などから素地を仕入れ、「薩摩焼」の製産を始めたため、いわゆる「京薩摩」と呼ばれる作品に酷似した品を手がけました。本作品は「明山製」という金彩銘から明山工房の初期作品で明治20年代初頭までの製作と推定されます。唐子たちが白象に群がり遊ぶ図様の皿は、欧米における東洋趣味(オリエンタリズム)と巧みに呼応し欧米で人気を博しました。力強く大胆な絵付が見られますが、最盛期の明山作品に見られる緻密さは未だ感じられません。

風景図花瓶 藪明山 明治時代 大阪歴史博物館蔵(森田まみ子氏寄贈)

明山工房の小さく細密な仕上がりの薩摩焼作品は日本の他産地のSATSUMAの追随を許さないものでした。本作品は直径約40mm、ちょうど掌に収まるほどの小さな花瓶で、全体に隙間なく細密な紋様が上絵付けされています。明治26年(1893)に開催されたシカゴ万国博覧会では明山の工房で製作された「密画の薩摩陶器は一度に皆売れた」といい、「貴婦人が皆明山の陶器はなきやと尋ね来るに驚いた」との逸話が残されています。明山はこのような小作品の人気を背景として、小型で細密な上絵付作品の製作に注力していったのです。

幕末から明治前半にかけて、「SATSUMA」ブランドの名で欧米を席巻した絢爛豪華なやきものは、鹿児島をはじめ、京都や横浜など各地で盛んに生産されていました。なかでも大阪では、名工・藪明山が頭角を表し、精緻を極めた超絶技巧作品を次々と世に送り出していきました。本展は、藪明山とその工房の活動に光を当て、長年の研究成果を結集した画期的な特集展示となっています。本展で、”明山薩摩”ならではの驚異的な表現力を、ぜひ肌で感じてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)

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