公開日時 2025年07月10日 15:44更新日時 2025年07月10日 18:47

魅力伝える「よそ者」の宿 宮城・南三陸、移住者開業

 東日本大震災をきっかけに宮城県南三陸町に移住し、藍染め体験ができる宿を開業した中村未来さん=宮城県南三陸町

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共同通信

 東日本大震災をきっかけに宮城県南三陸町に移住した東京都出身の中村未来さん(37)は「町の魅力を伝えたい」と、古民家を改修した宿を開業した。「よそ者だからこそ分かることがある」。震災から立ち上がった人たち、ゆったりとした時間が流れる自然…。大好きになった南三陸を多くの人に知ってもらい「住民と一緒に盛り上げていきたい」。

 「ビューティフル!」。山あいにある宿で7月上旬、台湾から訪れた男女8人が藍染めを体験して歓声を上げた。自家栽培した自慢の「南三陸藍」。水が澄んだ川で洗うと、深い青色が浮かび上がる。中村さんは「南三陸らしい風景と体験を味わってもらえてうれしい」と喜んだ。

 東京都府中市で生まれ育ち、「風土に合った建築家」を目指し鳥取県の大学に進んだ。卒業後は大阪府の建築設計事務所に就職。1年目に震災が発生し、ボランティアとして南三陸町に隣接する宮城県気仙沼市に駆け付けた。津波で家々が流され、人が暮らしていたことが信じられなかった。

 「暮らしを取り戻すお手伝いがしたい」と、2012年秋に津波の爪痕が色濃く残る南三陸町に移り住む。観光協会で働き、建築の知識を生かしボランティアらの宿泊施設整備に尽力した。「諦めたくなる光景から前に進むパワーがあった」。住民が持つ力強さと、移住者を受け入れる温かさに魅せられた。

 14年ごろ、石川県輪島市の宿に泊まり、夢ができた。決して豪華ではないけれど、新鮮な食材を使った料理、行き届いたおもてなし。「私も心地よい宿を開き、町を好きになってくれる人を増やしたい」

 21年に念願の宿を開業した。築100年を超える古民家に泊まり、南三陸の自然を満喫してもらう。まき割りも体験でき、夜になると星とホタルの光が瞬く。「小さな宿のん」という名前には「のんびり過ごしてほしい」という思いを込めた。

 今春から町移住・定住支援センターで週2回、移住の相談も受けている。町の人口は震災前に比べ、4割近く減少。それでも住民と移住者が協力すれば活気は失われないはずだ。「よそ者だからこそ気づく魅力がある。大好きな町を一緒につくっていく」。柔らかなまなざしで未来を見据えた。

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