トランプ米大統領がインドを含む主要新興国グループ「BRICS」加盟国に新たな関税を課す可能性を示唆したことで、米国との有利な貿易協定の締結を急ぐインドは難しい立場に置かれている。
トランプ氏は今週、「BRICSの反米政策」に同調するいかなる国に対しても、追加で10%の関税を課す考えを示した。これに先立ち、トランプ氏はインドとの貿易協定について最終合意が近いと述べていた。
その後、トランプ氏は新たな関税通知の書簡を公表。中でもブラジルに対しては50%と、7日以降に通知のあった関税率の中で最高水準となった。8月から適用される見通しだ。
今月6-7日にリオデジャネイロで開催されたBRICS首脳会議では、関税賦課が貿易をゆがめるとする批判を盛り込んだ共同声明を採択した。BRICSを巡るトランプ氏の発言に対し、ブラジルや南アフリカ共和国は個別に反発を示している一方、インドは公には反応を控えており、米国との関係維持に向け慎重な様子がうかがえる。
非公開協議を理由に匿名を条件に話したインド当局者によると、インド側は現時点ではトランプ氏の発言をそれほど深刻に受け止めていない。トランプ氏はBRICSがドル基軸体制を弱体化させようとしていると見ているが、インドはBRICSの共通通貨構想を支持しておらず、現地通貨建て取引への参加もあくまでリスク分散が目的だとしている。

リオデジャネイロで開かれたBRICS首脳会議(7日)
Photographer: Pablo Porciuncula/AFP/Getty Images
インド商工省は、コメントを求めた電子メールに回答しなかった。一方、インドの上級外交官、P・クマラン氏は8日の記者会見で、モディ首相がブラジルを訪問している際に、ルラ大統領との間でトランプ氏の関税発言に関する議論はなく、「話す機会もなかった」と明かした。
インドは2026年にBRICSの議長国を務める予定で、米国への対抗色を強める中国やロシアなど他の加盟国との差別化が求められる。米国に対しては、戦略的価値と通貨に関する中立的な立場を強調し、他国とは異なる扱いを目指す構えだ。
世界貿易機関(WTO)で首席交渉官を務めた元インド大使のモーハン・クマール氏は、「トランプ氏は、代替の基軸通貨を模索している一部のBRICS加盟国に不満を抱いている」と指摘。「インドは現地通貨建て取引と脱ドル化を明確に区別してきており、そのカテゴリーには入らない」と述べた。
米印は数カ月にわたる交渉の末、インド側が最善の提案を米国に提示し、現在はその返答を待っている段階だ。
一方、今回のトランプ氏による新たな関税発言は、インドからさらなる譲歩を引き出すための交渉上の駆け引きの手段との見方もある。トランプ氏はこれまでも、BRICSが二国間貿易でドルを使用しなければ、最大100%の関税を課すと警告してきた。
クマール氏は「トランプ氏の発言と実際の行動は区別して捉える必要がある」と述べている。
原題:Trump’s BRICS Warning to India Adds New Twist to Trade Deal (1)(抜粋)
