トランプ米大統領が世界の金融市場に混乱をもたらしていた上乗せ関税の一時停止を発表した際、英国ではスターマー首相の側近らが保守党政権を襲った悲劇を連想していた。
2022年に当時のトラス首相は財政の裏付けのない大型減税パッケージを打ち出したが、債券市場で英国債が激しく売り込まれ、屈辱的な方針転換を余儀なくされたトラス政権は短命に終わった。

スターマー首相
Photographer: Neil Hall/EPA/Bloomberg
こうしたドラマを目の当たりにした英政府高官にとって、米国債相場が急落し、トランプ氏が方針を変えざるを得なくなった同じような物語が今、英国より大きなスケールで展開されているとみている。英政府高官は匿名を条件に政府内の考えについて語った。
米国の同盟国も対象とする「トランプ関税」を巡る混乱に英国も巻き込まれ、特に長期国債が大きく値下がりし、30年債利回りは1998年以来の高水準に達した。この状態が続けば、英政府の支出計画に影響が及ぶ可能性もある。ある政府高官は「債券市場がボス」と表現している。
保守党が下野し、労働党政権が発足してから9カ月を経て、スターマー首相は米政府からの衝撃波にどう対応するか次第で、自身の任期が大方決まるという認識を深めている。トランプ政権はロシアがウクライナで2022年に始めた戦争についても、欧州とウクライナ抜きに停戦に向けた交渉をロシアと直接している。
同首相は先週の演説で、「不安定な時代」が到来すると英国民に警告。「これは一時的なものではない」と述べ、「国家安全保障や国防で経験したように、今は貿易や商業においても、変化し続ける全く新しい世界であり、長年当然のこととされてきた古い前提がもはや通用しない時代」との認識を示した。
スターマー首相が対米交渉を通じ、トランプ政権が英国に課す10%関税や自動車と鉄鋼に対する25%の関税、あるいは予想される医薬品関税を引き下げられる可能性があるかどうかを問われた別の政府高官は、英政府として全く分からないが、ディール(取引)をまとめる努力を続けると述べた。
トランプ大統領との交渉は混沌(こんとん)としており、日々大きく揺れ動いているとこの高官は説明。そして、英国ができることは、貿易であれウクライナ情勢であれ、最悪の事態を避けるためトランプ大統領の説得を図ることだけだと話した。

原題:Trump’s Liz Truss Moment Helps UK Remember Bond Market Is Boss (抜粋)
