2025年のFIA-F1世界選手権が幕を開け、レッドブル・レーシングが直面する深刻な構造的課題が今なお改善されていないことが浮き彫りとなった。それは「マックス・フェルスタッペンとチームメイトとの埋まらない差」だ。

ペレス、ローソンともに“両翼”を支えられず

勝率95.5%を記録するなど、史上最も支配的なマシンと評された「RB18」が投入された2023年には、セルジオ・ペレスがフェルスタッペンに次ぐランキング2位を獲得し、チーム総得点の40.2%を稼ぐ健闘を見せた。しかし、それは例外的な1年に過ぎなかった。

2019年にダニエル・リカルドがルノーへ移籍して以降、レッドブルは一貫して“片翼”状態に陥っており、2019年から現在に至るまでの獲得ポイントの7割近くをフェルスタッペンが稼いでいる。

2024年シーズンにおいては、その非対称性がさらに際立つ形となった。

ペレスは開幕5戦で4度の表彰台を獲得したものの、第6戦マイアミGPを境に急失速。シーズン後半18戦での獲得ポイントはわずか49にとどまり、年間通算でも152ポイントに終わった。

一方、フェルスタッペンは後半戦だけで337ポイントを積み上げ、両者の差は実に288ポイントに達した。この結果、フェルスタッペンは自身4年連続となるドライバーズタイトルを獲得したが、前年王者のレッドブルはコンストラクターズ選手権でマクラーレン、フェラーリの後塵を拝し、3位に転落した。

2024年F1アブダビGPでコンストラクターズタイトルを決めポディウムでトロフィーを掲げるマクラーレンのランド・ノリスとCEOのザク・ブラウン-2024年12月8日ヤス・マリーナ・サーキットCourtesy Of McLaren

2024年F1アブダビGPでコンストラクターズタイトルを決めポディウムでトロフィーを掲げるマクラーレンのランド・ノリスとCEOのザク・ブラウン-2024年12月8日ヤス・マリーナ・サーキット

こうした状況を受け、レッドブルはペレスとの契約を終了し、後任として育成ドライバーのリアム・ローソンを起用した。だが、状況は改善されるどころか、むしろ悪化している。

ローソンは開幕戦オーストラリアGPで予選最下位、決勝ではクラッシュによりリタイア。続く中国GPでも再び予選最下位に沈み、レースは完走したものの、上位3台の失格の恩恵を受けてなお12位と、未だポイントを獲得できていない。

ペレスが急激に調子を落とした直近20戦において、フェルスタッペンが337ポイントを稼いでいるのに対し、ペレスとローソンの合計は驚くべきことに、わずか49ポイントにとどまる。

これはフェルスタッペンがチーム全体の87.3%ものポイントを稼ぎ出している計算であり、もはや「1台で戦っている」と言っても過言ではない。これが、現在の“両翼格差”の実態だ。

2024年開幕バーレーンGP以降のフェルスタッペンとチームメイトの成績

フェルスタッペン
ペレス&ローソン

グランプリ
順位
得点
順位
得点

バーレーン
1
26
2
18

サウジアラビア
1
25
2
18

オーストラリア
DNF
0
5
10

日本
1
26
2
18

中国
1
33
3
21

マイアミ
2
26
4
18

イモラ
1
25
8
4

モナコ
6
8
DNF
0

カナダ
1
25
DNF
0

スペイン
1
25
8
4

オーストリア
5
18
7
7

イギリス
2
18
17
0

ハンガリー
5
10
7
6

ベルギー
4
12
7
7

オランダ
2
18
6
8

イタリア
6
8
8
4

アゼルバイジャン
5
10
DNF
0

シンガポール
2
18
10
1

アメリカ合衆国
3
23
7
6

メキシコ
6
8
17
0

ブラジル
1
31
11
1

ラスベガス
5
10
10
1

カタール
1
26
DNF
0

アブダビ
6
8
DNF
0

オーストラリア
2
18
DNF
0

中国
4
18
12
0

合計
2024年イモラ以降

337

49

コースを外れグラベルにホイールを落とすリアム・ローソン(レッドブル)、2025年3月16日(日) F1オーストラリアGP決勝(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

コースを外れグラベルにホイールを落とすリアム・ローソン(レッドブル)、2025年3月16日(日) F1オーストラリアGP決勝(アルバート・パーク・サーキット)

“フェルスタッペン専用車”の烙印、車体特性が生む非対称性

この成績差は、レッドブルのマシン―RB20、RB21を含む一連のモデルが、フェルスタッペン以外のドライバーにとって手に負えないほど繊細で“ピーキー”な特性を持っていることを強く示唆するものといえる。「フェルスタッペン専用車」との指摘があるのも、決して過言ではない。

2019〜2020年にかけてフェルスタッペンとコンビを組んだアレックス・アルボンは以前、レッドブルのマシンの特性を次のように語っている。

「僕もマックスと同じように、フロントの入りがいいマシンを好む。ただ、好みの“シャープさ”のレベルがまったく違うんだ」

「PCゲームをする人なら分かるかもしれないけど、マウス感度を最大に上げた状態で動かすと、カーソルが画面中をビュンビュン飛び回るよね?あれと同じ感覚なんだ。反応が鋭すぎて、運転しながら緊張してしまう」

そして問題はシーズンを通じて“加速”する。

「シーズン序盤は少し差があるだけ。でもマックスはシーズンが進むにつれて、どんどんクルマを“もっとシャープに”していく。そうすると、彼はさらに速くなる。そして僕ら(チームメイト)は、それについていこうとリスクを取らなければならなくなる。それが雪だるま式に悪化していく」

ドライバー集合写真に臨むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月16日(日) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ドライバー集合写真に臨むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月16日(日) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)

ローソンの起用は“レッドブルに両翼を与える”起爆剤として期待されたが、現時点では結果に結びついていない。現状のような明確な戦力格差がチーム内に存在する限り、レッドブルが長期的にタイトル争いを維持することは困難だ。

”フェルスタッペン専用車”に適応できるドライバーを探し続けるアプローチもあるだろうが、むしろマシンそのものの特性を見直すことこそが、本質的な解決への鍵であり、むしろ組織としてはそれを目指すべきだ。

その理由は、フェルスタッペンが現行契約を途中で解除し、他のチームへと移籍したシナリオを想像しさえすればいい。仮にフェルスタッペンが2025年に向けてレッドブルを去っていた場合、チームが開幕2戦でノーポイントに終わっていたとしても不思議はない。

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