ウォール街では過去20年にわたって、相場が下げれば押し目の好機というムードがほぼ常態化していた。しかしこの常態は数週間前から、トランプ米大統領によって打ち消された。

  代わりに台頭してきたのは、利益を確定して、トランプ氏の貿易戦争がもたらす混沌(こんとん)が経済見通しを一変させるのをじっと見守ろうという声だ。新しい時代に入った株式市場で誰が勝ち組になるのか、不確実性が高まっている。

  「今押し目で買いを入れるのは、誰が演奏するのか分からないコンサートのチケットを割引価格で買うようなものだ」と話すのは、ラウンドヒル・インベストメンツのデーブ・マッツァ最高経営責任者(CEO)だ。「最近まで押し目買いは信頼できる戦略だったが、今では関税と貿易政策による不確実性の高まりで、投資家は大もうけするか大損を被るかのどちらかになりかねない」と述べた。

  このセンチメントからうかがわれるのは、ウォール街でかつて主流だった強気の信頼感をトランプ氏が揺さぶっている現状だ。数十年前から世界経済を強力に推し進めてきたグローバル化をトランプ政権は巻き戻し、国内経済を着実に刺激する政府支出に大なたを振るっている。

  政策自体はかつてのトランプ式ではあるが、発動しては取り消し、また発動するという場当たり的なやり方が投資家をきりきり舞いさせている。株価は12日の市場で浮揚したが、そうした相場の持ち直し期待はボラティリティー(変動性)の上昇に打ち消された。

  NFJインベストメント・グループのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、バーンズ・マッキニー氏は「不確実性は恐らくしばらくは続くだろう」と述べた。

Dip Buyers No Longer

Stocks have gone 15 sessions without consecutive days of gains

Source: Bloomberg

  米株式市場は1990年代に起きたインターネットバブル以来の強力な強気相場だったが、それをこの不確実性が押し下げた。強気相場を支えたのは、米企業利益の急増と人工知能(AI)革命を米ハイテク大手がリードするという観測だった。これを背景にナスダック100指数は2023年に54%、24年には25%上昇した。

  バリュエーションが高過ぎる可能性が指摘されながらも、上昇相場は押し目買いのメンタリティーを支援してきた。S&P500種株価指数は昨年7月下旬までの356営業日、一度も2%を超える下げを記録していない。ブルームバーグ・インテリジェンスのデータによれば、ここまで長い上昇局面は世界金融危機の後にはなかった。

  S&P500種株価指数は2月中旬から下落局面にあり、過去最高値からの距離を広げてきた。テクニカル分析上、直近高値からの10%下落に定義される調整局面の入り口に差し掛かっている。

  12日の市場で3日ぶりにS&P500種が上昇したように、下落局面を反転させようとする試みはあるものの、同指数は2月に最高値を付けた後は一度も続伸していない。12日の反発もすでに帳消しに向かっており、13日朝の市場ではS&P500種、ナスダック100指数ともに下げている。堅調な経済データを受けて相場はやや勢いを取り戻したものの、トランプ大統領が欧州連合(EU)からの酒類に関税を発動すると脅したことが株価を押し下げた。

  ナスダック100指数も過去最高値を記録した後は、一度も続伸していない。同指数は3月上旬に調整局面に入った。

 

原題:‘Buy The Dip’ Calls Fade as Trump Selloffs Rattle Wall Street(抜粋)

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