基幹産業である林業の維持に向け、宮崎県は人工林を伐採した後に再び植樹する「再造林」の取り組みを本格化させている。宮崎はスギ素材(丸太)の生産量で32年連続日本一を誇る「林業県」だが、近年の再造林率は7割台で頭打ちの状態にある。担い手不足や木材価格下落など林業を取り巻く環境は厳しく、生産量の尻すぼみが懸念されるなか、「手遅れになる前に対策を」との危機感が背景にある。(金堀雄樹)

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再造林された民有地を案内する都城森林組合の宮脇参事。スギの苗木には赤いリボンが巻いてある(都城市で)再造林された民有地を案内する都城森林組合の宮脇参事。スギの苗木には赤いリボンが巻いてある(都城市で)約8割が伐採適期

 4月、都城森林組合の案内で都城市高崎町の民有林を訪れると、スギの切り株の間に等間隔で苗木が植えられていた。昨秋、同組合が所有者の依頼を受けて植樹したといい、高さはまだ40~50センチほど。40~45年の歳月をかけて30メートル超に育て、伐採期を迎える。 「毎年収穫できる農作物と違い、伐採期までは手入れ費用がかかるだけで、収入はない。この場所のような再造林が望ましいが、現実には『後継者がいない』などと放置され、雑木林になるケースも多い」。同組合の宮脇史参事はそう話す。実際、隣接地には雑木が生い茂る一帯も見られた。 県内は戦後の木材需要増加でスギの植林が進み、約8割は伐採適期を迎えている。今後伐採が進むとみられるが、再造林されない土地が増えれば、「植える→育てる→伐採→使う」を繰り返すサイクルは崩れる。厳しい林業環境 主に住宅建材として引き合いがある県産スギ材は、林道整備や高性能林業機械の導入が進んだことで伐採などがしやすくなり、1991年に初めて生産量が日本一に。最新集計の2022年は187万8000立方メートルに上り、都道府県別で全国2位の秋田県(111万2000立方メートル)を引き離す。 そんな林業県の宮崎にも再造林が進まない場所が見られる。一因に挙げられるのが、木材価格低迷だ。県森林組合連合会(県森連)によると、1979年度に3万5544円をつけた県内市場の1立方メートル当たりの価格は2012年度に8343円まで下落。23年度は1万2720円まで回復したが、かつての価格には及ばない。外国産が国内市場での競争力を増すなどしたことが背景にある。 担い手不足も深刻だ。国勢調査によると、1975年に8460人いた県内の林業就業者数は2020年には2420人まで減少。この間、65歳以上の割合は5%から25%に高まった。 県森連の担当者は「林業経営の継続意欲が薄くなっていると感じる。このままでは県の林業は危機的状況に陥る」とする。宮崎モデル確立へ 県は昨年9月、再造林率を全国一に引き上げる目標を打ち出した。18~20年度平均は73%で林業の盛んな道県で3位。これを向上させ、1位の北海道の90%を上回りたい考えだ。 達成に向け、市町村や伐採、造林関係者らと「再造林推進ネットワーク」を今年度設立し、今夏の運用開始を目指している。県内8エリアごとにある森林組合が事務局機能を担い、森林所有者が伐採を相談する際の窓口を明確化して、民間の伐採、造林事業者と調整などを図って再造林を進める。こうしたネットワーク設立は全国初としており、森林組合の把握外で伐採され、再造林されないまま放置されるといった事例の抑制などを目指す。 また、再造林をする森林所有者の負担軽減に向け、ネットワークを通じて再造林を行う際は、県と市町村の補助金を現行の計68%から計90%に引き上げる。その際、植え付け時期が制限されない「コンテナ苗」を用いるほか、林道が整備されて採算性の高い場所への再造林も促し、人手不足を念頭にした、より効率的な林業を目指す。 7月には、全国初の「再造林推進条例」の施行も目指している。森林資源は木材としてだけでなく、生物多様性保全などの多面的機能があるとして一般県民にも再造林の必要性を訴える内容としたい考えで、機運情勢を図る。 県が今年度新設した県再造林推進室の永田誠朗室長は「林業は豊富な資源があってこそ成り立つので、将来に向けた再造林は不可欠。県庁の取り組みだけでは産業維持は難しく、『宮崎モデル』と言える仕組みを確立したい」と話す。

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