再建された本堂内部を案内する三好住職(大洲市で)再建された本堂内部を案内する三好住職(大洲市で)

きょう落慶 本堂再建 縁が力
 2018年の西日本豪雨で浸水した大洲市の四国別格二十霊場八番札所・
十夜ヶ橋(とよがはし)
永徳寺の本堂再建工事が完了し、12日に落慶法要が営まれる。地元住民らの協力もあって生まれ変わった本堂は、演奏会など地域のイベントにも活用できる。三好円暁住職(52)は「多くの人に支えられたこの場所が、今度は憩いの空間になれば」と願う。(黒岩美緒)
地元やボランティア支え 十夜ヶ橋は、橋の下で弘法大師・空海が野宿をした伝説に基づき、修行としての野宿が全国で唯一認められている霊場で、毎年約2万人の参拝者が訪れる。橋の下には空海の寝姿をかたどった石像があり、参拝者が願いをこめて布団をかける風習がある。2018年の西日本豪雨で浸水被害を受けた十夜ヶ橋の本堂(左)=十夜ヶ橋提供(大洲市で)2018年の西日本豪雨で浸水被害を受けた十夜ヶ橋の本堂(左)=十夜ヶ橋提供(大洲市で) 「本堂がだめになっている」。18年7月7日昼頃、仕事で京都に滞在していた三好住職のもとに、茶色く濁る水にのまれた本堂の画像が届いた。大洲市内では肱川が氾濫し、中心部が冠水。広範囲で浸水被害が確認された。 急いで戻り、泥にまみれた街の姿にあぜんとした。境内にはほかの家の家具や、木の枝などが土砂とともに流れこんでいた。「うちには冷蔵庫が二つしかないのに、数えたら六つもあった。いろいろなものが建物に引っかかってあふれていました」と振り返る。
 建物は床上約1・6メートルまで浸水し、内部の土壁が
剥落(はくらく)
した。さらに、基礎部分が水に削り取られた本堂は傾き、倒壊の可能性があるとして解体を余儀なくされた。「どうして私の代でこんなことに」という不安がこみ上げた。
壁面に並ぶ金色の空海像。支援者とのつながりを物語る(大洲市で)壁面に並ぶ金色の空海像。支援者とのつながりを物語る(大洲市で) 再建のノウハウも人手も足りない。途方に暮れる三好住職を支えたのは、全国から訪れた延べ約200人のボランティアだった。知り合いの住職や友人らが片付けのために続々と集まった。被害を聞きつけ、高知県から急きょ引き返したお遍路さんもいたという。 19年4月には、地元有志らによる再建実行委員会が発足。再建計画を立てて寄付を呼びかけたほか、売り上げを再建資金に充てる縁日なども開催した。再建工事は、建設会社を営む松山市の知人が「赤字でもかまわない」と引き受けた。 しかし、20年以降はコロナ禍で停滞。参拝者は年間500人にまで落ち込んだ。当初は22年完成予定だったが、延期するしかなかった。 2年後に工事が再開し、今年5月、ついに本堂が完成した。以前は50人程度しか入れなかったが、1階を見下ろせる中2階を設け、約120人収容できるようになった。内子町の芝居小屋「内子座」などを参考にした構造だという。 壁面の棚には、金色の空海像がずらりと並ぶ。手のひらほどの大きさで、寄付を行った支援者への記念として置かれ、その数約2000体。棚の上には「北海道」「外国」など、寄付者の居住地別の看板がある。 本堂は、12日の落慶法要で地域住民にお披露目される。今後は演奏会や絵画の展示会などの利用も考えているという。三好住職は「地域の人々がイベントなどにも利用できる場所になってほしい。さまざまな縁を結べる空間にしたい」とほほえんだ。

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