各地の大学の理工系学部で「女子枠」入試の導入が進む中、2024年度入学者向けに実施した国公立大15校のうち少なくとも5校の学科などで、志願倍率が国公立大2次試験全体の平均倍率(2・9倍)を上回ったことが読売新聞の取材でわかった。地元産業に直結する技術や情報系分野などを学べる大学が人気の一方、地方では定員割れもあり、二極化の現状が浮かび上がった。(新井清美、内田郁恵)
「私立無償化」などで志願者減、公立高入試制度見直しへ…大阪府教委
産業界の要望 文部科学省などによると、24年度入試では国立大12校、公立大3校が女子枠を設定。詳細を公表しないとした山梨、琉球の国立2校を除く13校に取材したところ、志願倍率が3倍以上の学科・コースがあったのは5校で、うち3校は4倍を超えた。
24年度に女子枠を初めて設けた東京工業大は、環境・社会理工学院の3学系のうち建築学系(定員3人)に37人、物質理工学院(同20人)に128人が志願するなど人気が殺到した。24~25年度に計143人の枠を設け、現在13%の女子学生の割合を2割超に増やす方針を掲げる。井村順一副学長は「海外の有名大は男女比がほぼ半々。日本は大幅に遅れている」と危機感を持つ。
30年前から1学科で実施していた名古屋工業大は、自動車など製造業が盛んな東海地方にあり、「地元産業界から女性の理工系人材を求める声が強かった」という。24年度は計4学科に拡大し、情報工学科の志願倍率は6倍だった。ロールモデル少なく 地方では専攻によって明暗が分かれた。 熊本大は、半導体関連の技術者を育成する情報融合学環で8人を募集し、33人が志願した。半導体受託製造の世界最大手が熊本県に進出したことも影響したとみられる。 大分大理工学部は、定員2人の知能情報システムに6人が志願した一方、機械工学など2分野は定員割れした。 北見工業大(北海道)は工学部2学科で計16人を募集したが、志願者は13人にとどまった。金沢大理工学域には倍率が2倍の分野もあったが、5人の枠を設けたフロンティア工学の志願者は1人だった。両大学は24年度が初実施で、「入試広報不足」を理由に挙げた。「活躍している理工系女性のロールモデルが少ない」(富山大)といった課題もあるようだ。男女比に偏り 各大学は女子中高生向けに理工系進路選択を支援するイベントを開いているが、男女比の偏りは変わっていない。経済協力開発機構(OECD)の19年の統計によると、日本で科学、技術、工学、数学を学んで大学を卒業した女子の割合は17・5%で、加盟国平均の32・5%を大きく下回る。
26年度に女子枠を導入予定の京都大学 文科省は23年度の大学入試に関し、多様性確保のため「理工系分野における女子等」などの入試を工夫するよう求めた。25年度に神戸大、26年度に京都大と大阪大が女子枠を導入予定で、今後も広がる見込みだ。 一方、課題を指摘する声もある。 女子の理系進学に詳しい横山広美・東京大教授(科学技術社会論)は「理科・数学離れが深刻になる中学生に理数系科目の魅力を伝え、進学者が徐々に増えるのが正常な道のりで、女子枠には基本的に賛成しない。しかし対策が必要なのも事実だ。実施する大学は女子枠での入学者が十分に能力を伸ばせるよう支援するほか、学内で多様性の意識を高めるための教育も浸透させるべきだ」と話す。
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