インタビューに応じる三菱ケミカルグループの筑本社長(東京都千代田区で) 三菱ケミカルグループは、国内の需要が減り、生産設備が過剰なエチレンを始め、石油化学事業へのてこ入れが課題になっている。総合化学メーカーは成長が見込まれるヘルスケアや半導体といった分野に力を入れている。筑本学社長に話を聞いた。
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化学では稼げず、悔しい思い ――社長に就任した抱負を。
「新しいメンバーで2月ぐらいから動いてきて、3月末に予算案を作ってあとは取締役会に通すだけという状況に持っていくことができた。公表されている数字を見てもらえればわかるが、産業ガスと医薬品を除くと、本業の化学では稼げていない。
惨憺(さんたん)
たる状況だ。本業で稼げない会社になったのは本当に悔しい思いだ。
これまで合理化を進めてきたが、投資ができていない。投資をしないと、トップラインが伸びないから、利益も増えない。今後はターゲットを絞って、取捨選択を明確にして、お金をかけて人をかけて、研究開発をやっていく。そうしないと、スペシャリティケミカルズ(機能化学品)が伸びない。本業で稼げる会社にしたいというのが一番だ。 スペシャリティを強くしても、(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる)カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現できないとだめだ。そのためには、石油化学事業の再編が必要だ。 稼げることと従業員が楽しく働けること。そのためには成長が感じられること。それから、お客さまや社会の役に立って喜んでもらえる、感謝される会社になりたい」 ――前社長は石油化学事業と炭素事業を分離し、他社との事業統合を目指していた。ビジネス環境をどうみているか。 「厳しいですよ。鉄鋼向けのコークスを作る炭素事業は、ロシアによるウクライナ侵略以降、ロシアの石炭が出回らなくなり、豪州産に買いが集中して、値段が上がっている。景気がよくないから鉄鋼の消費も増えない。高い原料を買って安い製品を売っていて、ほぼすべてにわたって赤字。出血している状況の立て直しが一番だ。ちゃんとした事業にしないと、身の振り方も決められない。
石油化学は、今後は需要が戻らない。(エチレンの生産設備)ナフサクラッカーの稼働率が低い状況が続く。どこももうからないから、
淘汰(とうた)
が起こる。分離することには全く意味がない。なんとしても脱炭素や循環経済を実現しなければならず、再編は不可欠だ。再編することでどんな未来が待っているのか、目標を共有できる相手と協議していきたい」
2030年をめどに新たな生産設備稼働 ――再編の具体案は。 「2030年をめどに、脱炭素に対応した新たな生産設備を稼働させたい。事前調査や建設にかかる期間から逆算すると24年度中には、どこかと組んでどのような形で進めるか、構想をまとめる必要がある。 旭化成と共同運営する水島(岡山県)のナフサクラッカーは、西日本に設備を持つ同業他社とコンソーシアム(共同事業体)を作って協議を進めていきたい。各社が出資者となって、ナフサクラッカーを運営する事業体を作る」 ――既存設備の集約だけでなく、同時に新たな設備も建設するのか。 「もちろんだ。川下に多くの事業者が連なる石油化学業界が脱炭素を実現できなければ、日本の主要な産業が沈んでしまう。輸入に頼るのは不確実性が高い。この分野は、日本人が一番得意なところなので、化学メーカーにとってはチャンスだと思う」 ――鹿島(茨城県)の設備は。 「コンビナート内の川上や川下の企業と、垂直統合で脱炭素を進めていく。再生可能エネルギーに由来する水素を使ったメタノールを原料に、プラスチック樹脂を生産する方針だ」
◆筑本学氏(ちくもと・まなぶ)
1988年東大経卒、三菱化成工業(現三菱ケミカル)入社。三菱ケミカルグループのエグゼクティブバイスプレジデント(副社長に相当)を経て、2024年4月から社長。石油化学部門が長く、インドやシンガポールへの赴任も経験した。趣味は学生時代から続けている水球で、シニアチームに所属して大会にも出場する。祭りでみこしを担ぐことも。広島県出身。
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