2026年F1第5戦カナダGP決勝でフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダ)のリタイアを招いた「シートの問題」の詳細が明らかになった。

チーフ・トラックサイド・オフィサーを務めるマイク・クラックの説明によれば、単なるシート合わせの不具合ではなく、コックピット内でドライバーをより寝かせた姿勢とする設計上の判断と関係している可能性がある。

アロンソ、不快感で「苦痛に終止符」

19番手スタートのアロンソはカナダGPの決勝でソフトタイヤの優位性を生かし、3周目に10番手まで浮上した。だが、AMR26にはそのポジションを維持するだけのペースがなく、レースが進むにつれて本来の位置へ戻っていった。

それでも、リタイアの直接的な理由はペース不足ではなかった。当初、アロンソは「シートの問題」と認めるにとどめていたが、周回を重ねるごとに強まる不快感が原因であったことが判明した。

モータースポーツ専門メディア『Crash』によると、アロンソは「周回を重ねるごとに、どんどん不快になっていった。適切なポジションとは思えなかった」と説明する。

「ポイントを獲得できる望みはなかったし、もう[大逆転を狙えるような]雨の脅威もなかった。だからこの苦痛を終わらせることにしたんだ」

アロンソは、リタイアそのものよりもペース不足への不満を強く口にしていたが、AMR26の問題は単純なスピード不足にとどまらず、より基本的なドライバーズシートの設計にも及んでいた可能性がある。

寝かせた着座姿勢が負担に

ドライバーズシートは各ドライバーの体型に合わせて成形されるが、わずかなズレが不快感につながることがある。ただ、クラックによれば、今回のアロンソの問題は、設計上の誤算が引き起こした可能性がある。

アストンマーティン・ホンダは今季、ドライバーの着座姿勢を変更し、より寝かせた姿勢とする設計哲学を採用している。その狙いは重心を下げること、そしてドライバーのヘルメットがコックピット下流の気流に与える影響を低減することにあると考えられるが、これはドライバーの身体に必要以上の負担をかける可能性もある。

クラックは、アロンソがコックピット内で「寝かされすぎている」ことが不快感と関係している可能性があると説明した。

「彼はしばらく前から不快感を抱えていた。ただ、レースをリタイアしなければならないほど深刻なものではなかった」

「それはツボを押されるようなもので、どんどん悪化していくような感覚だ」

この問題がカナダで強く表面化した背景には、AMR26の信頼性向上が関係している可能性もある。マシンが以前より安定してロングランをこなせるようになったことで、ドライバーはより長時間にわたってクルマをプッシュし始めている。

クラックは、リクライニングの角度を含めた現在の仕様について「少しやり過ぎているのかもしれない」とし、調査したうえで見直す考えを示した。

アロンソによれば、カナダでの予選を終えてチームは決勝に向けて修正を試みたが、問題を完全に解決することはできなかったという。次戦モナコGPに向けては、新しいシートが用意される見通しだ。

ギアボックス改善で見えた前進

空力アップデートがないにもかかわらず、カナダでのアロンソのパフォーマンスは以前と比べて明らかに向上していた。スプリント予選では今季初のSQ2進出を果たし、予選でもQ2進出に0.421秒差と迫った。

もっとも、空力パーツ以外の部分では常に改善が進められている。直近のマイアミGP後にアロンソは、ギアボックスの挙動改善が再優先事項と訴えていたが、この問題はカナダで大幅に改善していた。

「コースに出るたびに、マシン、エンジン、セッティング、ギアボックスには何かしら新しい要素が加わっている」とアロンソは語る。

「マイアミからここまでの間に、ギアボックス、ギアシンク、ダウンシフトは大きく改善した」

「それがラップタイムにどう反映されるかを数値化するのは難しい。でも、微調整したことで、まったく同じマシンながらも、ここではマイアミより明らかに速かった」

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