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アルゼンチンの原油生産量は2025年10月に過去最高値である日量85.9万バレルを記録し、その後も、高い水準で推移している。この増産を牽引しているのが同国中西部に位置するVaca Muertaシェールだ。2024年3月からの2年間で、Vaca Muertaシェールの原油生産量は61.7%増加、日量59.2万バレルとなり、アルゼンチンの総生産量に占める同シェールの割合も、2年前の54%から67%に増加した。
アルゼンチンではJavier Gerardo Milei政権下で「基盤法」(「アルゼンチン人の自由のための基盤および出発点に関する法律」)が成立し、大型投資奨励制度(RIGI)が導入された。アルゼンチン国内で2億ドルを超える投資を行い、その内の40%を最初の2年間に投資するプロジェクトに対しては、30年間の法律上および規制上の安定性が保証され、また、輸出税が免除される等の特典が与えられる。陸上の石油開発プロジェクトがRIGI対象外とされたため、石油・ガス関連では、Vaca Muertaシェールで生産されるシェールオイルを大西洋岸のPunta Coloradaまで輸送するためのパイプライン等を建設するプロジェクトVaca Muerta Oil Sur(VMOS)と、同シェールで生産されるシェールガスを液化して輸出することを目指すSouthern Energy LNGの2プロジェクトのRIGI申請が承認された。
2026年2月に、RIGIに関して新たな政令が公布され、RIGIの申請期限が1年間延長され、2027年7月8日までとなるとともに、RIGI適用範囲が陸上の新規石油・ガス開発全体に拡大され、規制も簡素化された。これを受け、Vaca Muertaシェール開発プロジェクトについて、YPF、Pluspetrol、Pampa Energía等がRIGI申請手続きを取り、Chevron、Phoenix Global Resources等が同申請を計画している。
RIGI改定により、同制度の適用を申請するVaca Muertaシェール開発プロジェクトが増加し、さらに、申請期限が迫っていることもあり、Vaca Muertaシェールへの投資決定は加速している。石油・ガス分野への投資は大幅に増加しており、原油生産量の急速な増加が持続すると見られている。2030年のアルゼンチンの原油生産量は日量170万バレルへと増加する見込みとの見方が強まっている。ただし、RIGI申請中のエネルギー企業は資金を調達できるのか、また、政権交代時や経済の急激な悪化時にもRIGIが継続して適用されるかについて懸念する向きは多い。
アルゼンチンの原油生産量は2025年10月に、1998年5月に記録された過去最高値である日量84.7万バレルを上回り、日量85.9万バレルを達成した。その後も原油生産量は、2025年中は日量85万バレルを上回る水準で、さらに、2026年に入ってからは日量87万バレルを上回る水準で推移している。

(図1)アルゼンチンの原油生産量(単位:日量千バレル)
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
この増産を牽引しているのが同国中西部に位置するVaca Muertaシェールである。同シェールは、EIAが、シェールガス技術的回収可能量が802兆立方フィートで世界第2位、シェールオイル技術的回収可能量が265億バレルで世界第4位としたアルゼンチンのシェールの中核をなすシェール層であり、Vaca Muertaシェールのシェールガス技術的回収可能量は308兆立方フィート、シェールオイル技術的回収可能量は162億バレルとされている。アルゼンチンのシェール層の中で商業ベースの開発が行われている唯一のシェール層でもある。
2026年3月のアルゼンチンの原油生産量が、2024年3月からの2年間で29.5%増加し日量87.8万バレルとなったのに対し、Vaca Muertaシェールの原油生産量は同期間に61.7%増加し日量59.2万バレルとなった。アルゼンチンの生産量に占めるVaca Muertaシェールの割合も、2年前の54%から67%に増加した。

(図2)アルゼンチン堆積盆地別シェール技術的回収可能量
(出所:EIA Technical Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resourcesを基にJOGMEC作成)
アルゼンチンでは2024年より大型投資奨励制度(RIGI/Régimen de Incentivo para Grandes Inversiones)が導入された。これにより、Vaca Muertaシェールの増産加速が支えられ、アルゼンチン全体の原油増産がさらに促されると考えられる。
本稿では、RIGI導入、改定により、さらなる進展が期待されるVaca Muertaシェールのプロジェクトを紹介し、アルゼンチンの原油生産量の今後の推移を見通す。
2. 大型投資奨励制度導入により、石油・ガスインフラプロジェクトが進展
アルゼンチンでは2023年12月10日に大統領に就任したJavier Gerardo Milei氏が、就任直後の同月20日に、アルゼンチン経済再生のための基礎を築き、個人に自由と自治を取り戻させるために、300以上の法律を改正する計画を発表。同月27日には、「アルゼンチン人の自由のための基盤および出発点に関する法律」(「基盤法」または「オムニバス法」)案を下院に提出した。紆余曲折を経て、2024年6月13日に上院が、6月28日に下院が同法案を承認、同法が成立した。
石油、ガス政策に関して、基盤法は、政府が炭化水素の国内価格の設定に関与することを禁じるとした。また、炭化水素の自給自足はもはや国家の目標ではないとして、炭化水素の輸出入を自由化した。さらに、国外からアルゼンチンへの投資を促進するための新たなインセンティブ制度、RIGIを導入した。これにより、アルゼンチン国内で2億ドルを超える投資を行い、その内の40%を最初の2年間に投資するプロジェクトに対しては、30年間の法律上および規制上の安定性が保証されることとなった。また、プロジェクトの規模に応じて、2~3年間、輸出税の支払いが免除される。さらに、プロジェクトに関連する部品等の輸入も非課税となり、輸出代金の国内還流義務についても、事業開始から2年経過後は輸出代金の20%、3年経過後は40%、4年経過後は100%が免除対象とされた。RIGIは、施行に関する規則の公布や評価組織の設立等を経て、2024年10月22日に申請受付を開始した。
Luis Caputo経済大臣によると、後述するRIGIに関する新たな政令が公布された2026年2月19日時点で、254億7,900万ドル相当の10件のプロジェクトについて、申請が承認され、RIGIが適用されることになった。承認済みのプロジェクトのうち石油、ガス関連のものは、Vaca Muerta Oil Sur(VMOS)とSouthern Energy LNGの2プロジェクトのみであった。これは、探鉱・開発分野では、既に大手エネルギー企業がRIGIで求められる基準を超える大規模な投資を行っているので、優遇措置を必要としないと考えられてしまい、陸上上流石油開発プロジェクトがRIGIの申請対象とならないとされたことによる。
とは言え、VMOSとSouthern Energy LNGの2プロジェクトにより、Vaca Muertaシェールで産出される原油の輸出量を増やし、また、天然ガスをLNGとして輸出する新たな機会が誕生する可能性が高まった。
(1) VMOSプロジェクト
VMOS(Vaca Muerta Oil Sur/Vaca Muerta南部油田開発)プロジェクトは、Vaca Muertaシェールで生産されるシェールオイルの輸出量を増加させるため、Río Negro州Allenから大西洋岸のPunta Coloradaまで全長437キロメートルにわたり、口径30インチのパイプラインを敷設し、Punta Coloradaにターミナル、タンクと貯蔵設備を建設するものである。
同プロジェクトを推進するVaca Muerta Oil Sur S.A.については、YPF、Vista Energy、Pan American Energy(PAE)、Pampa Energía、Shell、Chevron、Pluspetrol、Tecpetrolが株式を所有している。
同プロジェクトは、2024年11月にRIGIを申請、2025年3月20日に承認を受けた。
2025年7月には、同プロジェクト実現のため、Citi、Deutsche Bank、Itau、JPMorgan Chase、Santander等の大手を含む14の金融機関や機関投資家と20億ドルの融資契約が締結された。YPFによると、この20億ドルはVMOSプロジェクトに必要な資金の約70%を賄うもので、残りの30%はパートナー企業が出資するという。
同プロジェクトは、現在、パイプラインと関連輸出施設を建設中で、2026年末に輸送能力、日量18万バレルで操業を開始、2027年後半にこれを日量39万バレルに、2027年末までに日量55万バレルに増強する計画となっている。ポンプステーションを増設することにより、日量80万バレルまで輸送能力を拡張することも可能とされている。

(図3)アルゼンチンのパイプライン等地図
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
(2) Southern Energy LNGプロジェクト
Southern Energy LNGプロジェクトは、Vaca Muertaシェールで生産されるシェールガスを液化して輸出することを目指して、Rio Negro州San Matías湾に浮体式LNG生産施設(Floating LNG:FLNG)2基を係留し、パイプラインやコンプレッサー・ステーション、係留システム等を建設する計画である。1基目のHilli Episeyo FLNG(液化能力:年間245万トン)は2027年、2基目のMKII FLNG(同:年間350万トン)は2028年に操業を開始する予定となっている。Vaca MuertaシェールからSan Matías湾までの同プロジェクト専用のガスパイプラン(全長500キロメートル)は、MKII FLNGの稼働開始に合わせて、完成、操業を開始する予定で、それまでの間は既存のガスパイプラインを利用して天然ガスを調達する。
同プロジェクト実現のために設立されたSouthern Energy S.A.(SESA)は、PAEが30%、YPFが25%、Pampa Energiaが20%、Harbour Energyが15%、Golar LNGが10%のシェアを保有している。
同プロジェクトは、2024年11月にRIGIを申請し、2025年5月に承認された。
2025年12月に、SESAは、ドイツ国営エネルギー企業Securing Energy for Europe GmbH(SEFE)と8年間のLNG供給契約を締結した。Hilli Episeyo FLNGが生産を開始する2027年以降、Hilli Episeyoの液化能力の80%以上に相当する年間200万トンのLNGを販売するという内容だ。
また、2026年4月には、同プロジェクト専用のガスパイプランの敷設を、イタリアのSicimと地元企業のVíctor Contrerasが共同で率いるコンソーシアムに委託することを決定した。インドのWelspunが同プロジェクト向けに約2億ドル相当のパイプ供給契約を獲得しており、パイプライン敷設作業は2026年後半に開始される予定となっている。
3. 大型投資奨励制度改定により、Vaca Muertaシェール開発進展へ
アルゼンチンは、2026年2月19日に、RIGIに関して新たな政令を公布した。
この政令により、RIGIの申請期限は1年間延長され、2027年7月8日までとなった。RIGIの申請期限は法律の発効から2年、すなわち2026年7月8日までとされていたが、政府は1度限り、その期限を1年間延長することができるとされていた。
また、RIGI適用分野が陸上の新規石油・ガス開発全体に拡大された。最低投資額は、新規の陸上の石油・ガス開発プロジェクトについては6億ドルとされた。
加速償却制度の範囲が明確化され、配当分配、資本財輸入、外国為替市場へのアクセスについても調整が行われたという。
RIGIの申請期間が延長され、適用範囲が陸上の石油・ガス開発にまで拡大され、規制が簡素化されたことで、RIGI適用を申請するVaca Muertaシェール開発プロジェクトが増加している。
YPFやVista Energy、Pluspetrol等、Vaca Muertaシェールで探鉱・開発中の大手エネルギー企業は、RIGI改定の恩恵を最も受けると考えられ、また、同シェールに関心を持つ大規模な外国投資家の参入を促す可能性もあると思われる。一方で、小規模企業や在来型の石油・ガス開発については、最低投資額を調達するのが困難なため、RIGI申請を見送らざるを得なくなる可能性が高いと見られている。
2026年2月19日以降にRIGIの申請を行ったVaca Muertaシェールの主な石油・ガス開発プロジェクトと申請を計画中のプロジェクトを以下に紹介するが、この他にもTotalEnergiesやCentral Puerto等のアルゼンチン企業がRIGIの申請を計画しているという。

(表1)RIGI申請中、申請を計画中のVaca Muertaシェールの主な石油・ガス開発プロジェク
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

(図4)Neuquén州主要鉱区図
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
(1) Pampa Energía、Rincón de Aranda鉱区開発に45億ドルを投じ、15年間にわたり日量4万5,000バレルを生産する計画
アルゼンチンの独立系エネルギー企業Pampa Energíaは2026年3月9日、Vaca MuertaシェールRincón de Aranda鉱区の開発について、RIGIの適用を申請した。45億ドル規模の石油開発プロジェクトで、中央原油処理施設、関連パイプライン、その他関連施設の建設に加えて、より多くの坑井の掘削を目指す。現在の生産量、日量1万8,200バレルを2027年半ばまでに日量4万5,000バレルに引き上げ、15年間維持する計画だ。中央原油処理施設は処理能力が日量4万5,000バレルで、2027年第1四半期に稼働開始を予定しており、それまでの間は仮設施設が使用される。Pampa Energiaによれば、RIGI適用により、同鉱区北部まで開発が可能になり、生産量の増加が加速するという。承認は今後数ヶ月以内に得られる見込みだが、最大で7ヶ月かかる可能性もある。
(2) Tecpetrol、Los Toldos II Este鉱区に24億ドルを投じ開発、10年間にわたり日量7万バレルの生産を計画
アルゼンチン第3位の石油生産企業Tecpetrolは、Vaca MuertaシェールLos Toldos II Este鉱区についてRIGIを申請したと2026年4月初めに報じられた。24億ドルを投じ、380坑の坑井を掘削し、関連インフラを整備する計画だ。原油生産量を、2026年1月の日量3,400バレルから、2027年3月までに日量3万5,000バレル、2027年7月までにその倍の日量7万バレルに引き上げ、10年間、その水準を維持することを目指す。Los Toldos II Este鉱区の権益保有比率はTecpetrolが90%、Neuquén州州営石油会社Gas y Petróleo del Neuquén(GyP)が10%となっている。
Tecpetrolは、同社のVaca Muertaシェール全体の原油生産量を日量2万2,600バレルから2027年までに日量10万バレルに引き上げることを目指している。大半はLos Toldos II Este鉱区から、残りはPuesto Parada鉱区からもたらされる。
(3) Pluspetrol、Bajo del Choique-La Invernada鉱区に120億ドルを投じ開発、20年間にわたり日量10万バレルの原油生産を計画
Pluspetrolは、Vaca MuertaシェールのBajo del Choique-La Invernada鉱区にRIGIを適用するため、2026年4月23日に申請を行った。120億ドルを投じ、600以上の坑井を掘削、4つの処理プラントを建設する計画だ。Bajo del Choique-La Invernada鉱区を2段階に分けて開発、南部では日量5万バレルの原油と日量600万立方メートルの天然ガスの生産を目標とし、北部でも同量の生産を期待しているという。2025年の生産量が原油、日量約1万2,000バレル、ガス、日量270万立方メートルであった同鉱区が、20年間にわたり日量10万バレルの原油と日量1,200万立方メートルの天然ガスを生産することになる。
Pluspetrolは、Vaca Muertaシェールの資産取得に積極的だ。
同社は2024年12月にExxonMobilからExxonMobil Exploration Argentina(EMEA)を買収した。これにより、Vaca MuertaシェールのBajo del Choique-La Invernada、Los Toldos I Sur、Los Toldos II Oeste、Pampa de las Yeguasの鉱区権益に加え、Oldelval石油パイプラインの権益21.3%を取得した。また、Vaca Muerta Oil Sur S.A.の株式17.8%も保有している。
さらに、PluspetrolはYPFとの資産交換に合意し、YPFが2025年9月にTotalEnerriesのアルゼンチン子会社Total Australから買収したVaca Muerta Inversiones(VMI)の株式44.4%を取得した。VMIはLa Escalonada鉱区とRincón de la Ceniza鉱区の権益45%を保有しており、権益の残りはShellとGyPが保有している。
(4) GeoPark、Loma Jarillosa Este鉱区とPuesto Silva Oeste鉱区に10億ドル以上を投資、3年間で生産量を日量20,000バレルへ拡大する計画
GeoParkはGyPと共同で、10億ドル以上を投資し、Vaca Muertaシェールにおける非在来型石油開発拠点を整備し、Loma Jarillosa Este(LJE)鉱区とPuesto Silva Oeste(PSO)鉱区の生産量を今後3年間で石油換算、日量1,500バレルから日量20,000バレルへ拡大することを目指して、RIGIの申請を行った。
このプロジェクトは、両鉱区を統合して開発、水平坑井の掘削を進め、PSO鉱区の生産を合わせて処理するための中央処理施設を建設、また、共通の輸送、搬出インフラの整備を行うもの。GeoParkは2026年3月にLJE鉱区で最初の掘削を開始したところ。RIGI適用により、この開発計画を迅速かつ効率的に進め、加速させることを目指す。
(5) YPF、LLL石油プロジェクトに250億ドルを投じ、2032年までに日量24万バレルの生産を目指す
YPFは、LLL石油プロジェクトに250億ドルを投じ、2032年までに日量24万バレルの生産を目指すとし、RIGI申請を行った。
LLL石油プロジェクトの対象は、Vaca MuertaシェールのLa Angostura Norte、La Angostura Suroeste、La Angostura Sur II、Barreal Grande、La Angostura Sur Iの5鉱区である。これら5つの鉱区は、YPFがかつて保有していた在来型鉱区の一つであるLoma la Lata-Sierra Barrosa鉱区を再編、設定された。同鉱区では2010年代初頭からタイトガス開発が行われていたが、2025年にLa Angostura Sur IおよびII鉱区が設定され、シェールオイル開発が進められるようになっていた。RIGI適用により、在来型ガスおよびタイトガス生産から大規模な非在来型石油開発へと移行することになる。
YPFは、これら5鉱区を、統合的かつ資本効率の高い方法で開発していく意向で、地上設備、掘削装置、フラクチャリング装置、物流インフラを5鉱区で共有し、5鉱区全体で1,152坑の坑井を掘削する計画だ。そして、2032年までに原油、日量24万バレルを生産することを目指す。生産される原油はすべて輸出向けで、2026年後半に稼働開始予定のVMOSパイプラインで輸送される。年間輸出額は2032年までに60億ドルに達すると推定され、プロジェクト全体の輸出額は1,000億ドルを超える見込みであるという。一方、随伴ガスは国内市場に供給される。
YPFは、Vaca Muertaシェールの開発に集中するため、在来型油・ガス田をすべて売却するとしている。2026年3月末には、Vaca Muertaシェ-ルの掘削リグを2基追加し14基とし、さらに2026年末までに最大19基まで増やす計画であるという。同社はシェールオイル生産量を、2025年の日量16万5,000バレルから2026年に日量21万5,000バレル、2027年に日量29万バレル、2030年には日量47万バレルに引き上げることを目標としている。
(6) Chevron、100億ドル超のVaca Muertaシェール開発プロジェクトについてRIGI申請を計画
Chevronが、Vaca Muertaシェールのシェールオイル開発プロジェクト(総額100億ドル超)についてRIGI申請を計画していると、Luis Andrés Caputo経済相が2026年5月6日に明らかにした。Caputo経済相は、Chevronの幹部と会談後、Chevronが「今後数日中に100億ドル超規模の新たなRIGIプロジェクトを申請する予定だ」とした。Caputo経済相は、Chevronがどの鉱区にRIGIを利用する計画なのか、詳細を明らかにしなかった。
Chevronは、3月に開発が遅れているEl Trapial、Narambuena鉱区についてRIGIの適用を申請する予定であるとし、4月には今後、El Trapial Este鉱区の開発に注力する方針を示しており、これらの鉱区について申請が行われるのではないかと見られている。
現在、Vaca Muertaシェールの開発は主に同シェールの中央部で進められている。例えば、Loma Campana鉱区は原油、日量9万5,000バレル程度を生産し、同国最大の石油生産鉱区となっている。他に、La Calera、Loma La Lata-Sierra Barrosa、Fortín de Piedra、Mata Mora Norte、Aguada del Chañar等Vaca Muertaシェール中央部に位置する鉱区が主要な生産鉱区となっている。このように、同シェール中央部の開発が進展したことから、多くの企業が新たな成長エリアを模索しており、El Trapial Este鉱区等北部の鉱区に注目している。YPFやTecpetrol、米国を拠点とするContinental ResourcesやアルゼンチンのCentral Puertoといった新規参入企業等、多くの企業がVaca Muertaシェール北部への投資に積極的だ。
Chevronも、YPFと共同開発するLoma Campana鉱区がアルゼンチン最大の石油生産拠点ではあるが、同国における石油生産の将来的な拡大に向けて、VacaMuertaシェールの北部に賭けるとしている。Chevronは長年El Trapial鉱区で操業を行ってきた。当初は在来型石油を生産していたが、ここ数年でシェールオイルにシフトし、生産量を2024年末の日量2万バレルから2026年には日量3万バレルに増加させた。
Chevronは現在、VacaMuertaシェ-ルで日量、約7万4,000バレルの原油を生産しており、現在の操業条件であれば、今後10年間で生産量を3倍に増やすことができる見込みであるという。ただし、同社は、Milei大統領はシェールオイル産業への外国投資誘致を目的とした優遇措置の拡大を進めているが、アルゼンチンのシェールオイル産業の潜在能力を最大限に引き出すには、さらなる経済改革が必要とし、政策改革と投資促進策の継続によって、米国シェールとの差を縮めたいと考えているという。
(7) Phoenix Global Resources、Vaca Muertaシェール東部での事業拡大に約60億ドルを投じ、生産量を約260%増加させる計画
スイスのMercuria Energy Groupが出資する石油生産会社Phoenix Global Resourcesは、Vaca Muertaシェールに約60億ドルを投資する計画で、RIGI申請を予定していると、2026年3月末に報道された。Vaca Muertaシェールの東部での事業拡大と追加鉱区の取得を目指しているという。Phoenixは、現在の生産量、日量約2万2,000バレルを、2020年代末までに約260%増加させる計画であるという。
(8) Vista Energy、Bajo del Toro鉱区のRIGI申請可能性について示唆
アルゼンチンを中心に活動するメキシコの石油会社Vista Energyは2026年5月7日、Vaca MuertaシェールのBajo del Toro鉱区の権益15%とBandurria Sur鉱区の権益4.9%を7億1,200万ドルで取得する契約をEquinorと締結した。Vista Energyは、このうちBajo del Toro鉱区に関してオペレーターのYPFがRIGI適用を申請する可能性があるとしている。
Vista Energyは、Vaca Muertaシェールの原油生産増に余念がない。
同社は、2026年2月末には、2026年に前年比22%増となる最大16億ドルを投じ、80~90坑の油井の生産を開始し、Vaca Muertaシェ-ルの石油・天然ガス生産量を2025年の石油換算、日量11万5,000バレルから2026年には石油換算、日量14万バレルに増加させる計画であるとしていた。しかし、4月末になると、中東での戦争が世界の原油供給に与える影響を考慮し、2026年のブレント原油の価格を、以前の予測のバレル当たり65ドルからバレル当たり75~95ドルに上方修正するとした。そして、原油価格上昇の結果、投資額の増加を伴わずに生産量の増加が実現できる見込みで、2026年の投資額は15億~16億ドルに据え置くものの、Vaca Muertaシェールの2026年の生産目標を石油換算、日量14万バレルから2.1%引き上げ、石油換算、日量14万3,000バレルとするとした。この目標には、Equinorから権益を取得した2鉱区は加味されていないという。Vista Energyは2月時点で、生産量を2028年に石油換算、日量18万バレル、2030年に日量20万バレルまで増やすとしていたが、RIGI申請や鉱区入札参加でさらなる増産を目指すとしている。
このように、アルゼンチンでは、RIGI改定により、同制度の適用を申請するVaca Muertaシェール開発プロジェクトが増加している。申請期限が迫っていることもあり、Vaca Muertaシェールへの投資決定は加速しており、石油・ガス分野への投資は大幅に増加する見通しとなっている。原油生産量の急速な増加が持続すると見られている。
これまで、アルゼンチンの原油生産量は2026年12月までに日量100万バレルに、2030年には日量140万バレルから日量150万バレル程度まで増加するとの見方がなされていた。しかし、このような状況を受け、2026年4月中旬以降、業界団体であるアルゼンチン炭化水素探鉱生産会議所(Argentinian Chamber of Hydrocarbons Exploration and Production)がアルゼンチンの原油生産量は2030年までに日量170万バレルへと増加する見込みであるとする等、将来のアルゼンチンの原油生産量を高く見積もる傾向が生じている。
ただし、この原油生産増加の見通しを懸念する向きもある。
RIGIでは、投資額の40%を最初の2年間に投資することが求められているが、RIGIを申請中のエネルギー企業はその資金を調達できるのだろうか。特にYPFのLLL石油プロジェクトについては投資額が250億ドルと大規模で、どのように資金調達を行うのかに関心が集まっている。
また、RIGIは基盤法が定める優遇措置が30年間変更されないと保証されているが、政権交代時や経済の急激な悪化時にもRIGIが継続して適用されるかについて憂慮する向きは多い。
今後のアルゼンチンの原油生産量を推し量るには、エネルギー企業によるVaca Muertaシェールの開発状況とともにRIGIの適用状況を注視していく必要があろう。
以上
(この報告は2026年5月26日時点のものです)
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