【オウルズレポート】レアアース市場を作り直す米国、都市鉱山は日本企業の新たな武器になるか

福山 章子

follow
著者フォロー

フォロー中

2026.5.16(土)

都市鉱山からレアアースを取り出す資源循環が加速しつつある(提供:kiriyama/イメージマート)

1. レアアースは「採掘」から「市場設計」の競争へ

 レアアースをめぐる議論は、単なる資源開発の話ではなくなっている。いま米国が進めているのは、新しい鉱山を探すことだけではない。中国に偏った供給網を前提に、採掘、分離・精製、磁石製造、リサイクル、需要家の長期購入契約、さらには価格フロアや国境措置まで組み合わせて、重要鉱物の取引ルールそのものを作り直そうとしている。

 レアアースは通商政策の新しい主戦場になりつつある。2025年10月、日米首脳は重要鉱物・レアアースの供給確保に向けた枠組みに署名した。2026年2月には、米国ワシントンで重要鉱物をテーマとする多国間閣僚会合が開かれ、日本を含む54カ国とEU(欧州連合)が参加した。

 この大きな流れの中で、今後見ておきたい論点の一つが「都市鉱山」である。「都市鉱山」の概念自体は1980年代から日本で提唱されてきた。都市に蓄積された使用済み製品を資源の貯蔵庫と見なし、そこから金属を回収する発想である。

 従来は環境対策やリサイクル業界の文脈で語られることが多かったが、近年はその性格が少しずつ変わりつつある。

 使用済みのEVモーター、産業ロボット、業務用空調機、ハードディスク、MRI(磁気共鳴画像装置)、ドローンなどに組み込まれた永久磁石には、ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムといった、供給リスクの高いレアアース元素が含まれている。これらを回収し、再び供給網に戻す試みは、経済安全保障、防衛産業、そして同志国間の通商政策とも接点を持ち始めている。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、カナダ発の新興企業Cyclic Materials社がアリゾナ州メサに立ち上げるレアアースリサイクル施設の動きを紹介している(2026年1月27日「電子ごみリサイクル、中国レアアース支配を崩せるか」)。同社は使用済み機器から永久磁石を取り出し、化学処理によってレアアース酸化物を回収する。2026年1月には7500万ドルのシリーズC資金調達を完了した。同社創業者は、北米で毎年廃棄される電子製品を「世界最大のレアアース地上鉱床」と位置づける。

 もちろん、「都市鉱山」だけで中国のレアアース支配を短期的に崩すことは難しい。Cyclic Materials社のメサ施設も、年間処理能力は大きいが、回収されるレアアース酸化物は米国内需要の一部にとどまる。

 だが、それをもって意義が小さいと見るのは早計である。本稿で注目したいのは、都市鉱山がレアアース政策の中心に躍り出たということではない。米国が価格フロアや国境措置を含めて重要鉱物市場を作り直そうとする中で、都市鉱山由来の供給の位置づけを見通すことだ。そこには、日本を含む同志国企業にとっての新しい商機も見えてくる。

Share.