スクエア化された2UR-GSE

英国のスウィンドン・パワートレイン社が開発した新型のV8エンジンが、オーストラリアのレプコ・スーパーカーズ・チャンピオンシップ(RSC)を席巻している。

同社は、トヨタのホモロゲーションパートナーであるウォーキンショーTWGレーシングからエンジン開発の指名を受けた。RSCでは、トヨタ・ガズー・レーシング・オーストラリアとの提携で2台のトヨタGRスープラが参戦している。

スウィンドン・パワートレイン社が開発したV8エンジンスウィンドン・パワートレイン社が開発したV8エンジン

4969ccのベースユニットは、2007年に初登場し、主にレクサス車に使用されてきたトヨタの『2UR-GSE』を大幅に改良したものである。

シリーズの規定では5.0Lおよび5.7Lの排気量が認められているため、スウィンドンはストロークを89.5mmから94mmに拡大。新しいクランクシャフトを製作し、ストロークとボアを一致させることで古典的な「スクエア」構成を実現したのだ。これにより、2UR-GSEの堅牢なブロックを改造することなく、規定を満たすことができた。

吸気システムも変更された。このシリーズでは直噴が認められておらず、ポート噴射への切り替えのため、シリンダーヘッドのインジェクターの穴は「削除」された。現在はスウィンドンが設計し、ウォーキンショーTWGが製造した新しい吸気システムが、ポートインジェクターと全車両共通のスロットルボディに対応している。

コストと性能要求を両立

直噴からポート噴射への切り替えによって燃焼特性が変化するため、それに合わせて燃焼室も再設計された。シリンダーヘッドに対するその他の改造は最小限に抑えられたが、これは標準のポート形状がパフォーマンス走行に適していたことも理由の1つである。

新しい吸気マニホールドはすべてのシリンダーに空気を均一に分配し、その音響特性はエンジンのトルクカーブとマッチしている。吸気マニホールドは、樹脂製の3Dプリント部品と機械加工部品で構成されており、これは英国のBTCCでも優勝実績のある技術だ。

RSCに参戦するトヨタGRスープラのレーシングカーRSCに参戦するトヨタGRスープラのレーシングカー

スウィンドンは、社内のバルブトレイン用シミュレーションソフトを用いて新しいカムシャフトプロファイルを設計した。実質的に、トヨタの市販用バルブロッカーの制限内で機能するように設計された、レース用カムである。

市販の2UR-GSEエンジンは、排気カム用に油圧式可変バルブタイミング(VVT)を、吸気用には電動式VVTを備えている。シリーズの規定では、指定のソフトウェアを搭載した密閉型ECUを使用しなければならない。これらは電動式VVTに対応していないため、スウィンドンは排気バルブトレインのシステムを模倣した新しい油圧システムを設計。カムキャップ、カムカバー、オイルウェイが一新されている。

こうした改造や部品変更はあるものの、市販エンジンの主要コンポーネントの大部分はほとんどそのまま引き継がれている。これはレース規定への対応だけでなく、コスト面も配慮したためだ。

新しいコンポーネントを設計したのはスウィンドンだが、V8エンジンの組み立てとメンテナンスは、メルボルン近郊にあるウォーキンショーTWGレーシングの拠点で行われている。

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