大阪大学・山根聡教授に聞く

イランを訪問しガリバフ国会議長と握手するパキスタンのムニール氏=写真:4月16日(提供:Hamed Malekpour/ICANA/AP/アフロ)

アメリカとイランの停戦交渉で仲介役を務めるパキスタンに注目が集まっている。特に同国のムニール陸軍元帥はトランプ米大統領から「お気に入りの元帥」と評価されるなど、キーパーソン的役回りを演じる。なぜパキスタンはこの重要な役目を担っているのか。同国の情勢を専門とする大阪大学の山根聡教授に話を聞いた。

紛争時に「西側」の意図を汲めるパキスタンという国

──パキスタンについては、英エコノミスト誌が「(財政危機やテロリズムに苦しんだ過去を考えると)特筆すべき偉業」と称賛するなど、ダークホース的立ち回りを見せています。なぜパキスタンは今回、仲介国として台頭したのでしょうか。

山根聡・大阪大学教授(以下敬称略): アメリカにとってもイランにとっても、都合のよい国だったからでしょう。パキスタンは2025年5月、鶴の一声でインドとの停戦を実現したトランプ米大統領へ謝意を示しており、国会で「トランプ大統領をノーベル平和賞に」という決議を出しているほどです。

 湾岸諸国がイランに攻撃されている中、アメリカにとってもイランとある程度関係があり、アメリカ寄りに動いてくれる国はパキスタンくらいしかないという事情があります。

 イランとパキスタンは双方切りたくても切れない関係だと形容できるでしょう。パキスタンには人口の10分の1ほどシーア派(イランの国教)の人が住んでいますし、政界の有力者にもシーア派が何人もいます。また、パキスタンの国軍はイランの革命防衛隊と共同訓練を繰り返し実施しています。

山根 聡(やまね・そう) 大阪大学外国語学部教授 専門はウルドゥー文学、南アジア・イスラム論。大阪外国語大学卒業、パキスタン・パンジャーブ大学大学院ウルドゥー文学研究科修了。博士(京都大学・地域研究)。在パキスタン日本国専門調査員を経て大阪外国語大学助教授、大阪大学外国語学部教授などを経て2016年から現職。著書に『アフガニスタン史』(共著、河出書房新社、2021年)『越境者たちのユーラシア』(共著、ミネルヴァ書房、2015年)など。

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 パキスタンという国は、隣国で戦争が起きるたびにプレゼンスを上げてきた国です。ソ連のアフガン侵攻では西側諸国から莫大な資金を得ましたし、2001年のアフガニスタンでの対テロ戦争では国際社会からの支援を受け入れました。

 今回のアメリカ・イスラエルとイランの戦争においても、パキスタンは防衛協定(2025年9月締結)を結ぶサウジアラビアに約5万人の兵士を派遣しています。湾岸諸国で最も裕福な国であるサウジとアメリカを後ろ盾にするパキスタンの今の外交政策は非常に上手くいっていると評価すべきでしょう。

──トランプ大統領はムニール陸軍元帥を「素晴らしい仕事をしている」と激賞していました。

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