4月30日、ドイツ・ミュンスターにある連邦軍基地を訪問したメルツ首相(写真:AP/アフロ)
[ロンドン発]フリードリヒ・メルツ独首相が進める大規模な軍備計画が欧州の地政学的・産業的バランスを根底から揺さぶっている。ドイツが劇的な「再軍備」に舵を切った背景にはウクライナを侵略するロシアの脅威や第2次トランプ政権下で露呈した欧米の分断がある。
2026~30年にかけ国防費に計7790億ユーロを投入
日本と同じく第2次大戦の侵略国であり敗戦国として裁かれたドイツは戦後の「平和国家」を卒業し、2026~30年にかけ国防費に計7790億ユーロを投入し、欧州屈指の軍事大国の道を進んでいる。ドイツの強大な力が欧州の安全保障を真に統合するのか、それとも分断を招くのか。
ナチズムの反省から民主国家に忠誠を誓う「市民としての兵士」の理念を支持した第2次大戦時のドイツ陸軍将校アクセル・フォン・デム・ブッシェは1953年10月、「ドイツ再軍備:希望と不安」と題して米外交雑誌フォーリン・アフェアーズに寄稿した。
ブッシェは42年、東部戦線でユダヤ人虐殺を目の当たりにしたことから反ナチス抵抗運動に身を投じ、クラウス・フォン・シュタウフェンベルクらによるヒトラー暗殺計画に加わった数少ない生存者の1人である。戦後は外交官や開発援助の実務家として活動した。
