4月29日、国賓としてアメリカを訪問中のイギリス国王チャールズ3世とカミラ王妃がニューヨークを訪れ、現地で大きな話題になった。その際、同市のマムダニ市長が、インド原産の貴重なダイヤモンド「コ・イ・ヌール」を返還するよう国王に呼びかけると発言して注目された。マムダニ市長は、ウガンダ生まれのインド系移民だ。
ロイター通信の報道によると、この日開催された、9.11米同時多発テロ犠牲者の追悼式典に国王夫妻を迎える前の記者会見で、マムダニ市長は「もし追悼の件とは別に国王と話す機会があれば、おそらくコ・イ・ヌール ダイヤモンドを返還するよう勧めるだろう」と述べたという。
その後、チャールズ国王とマムダニ市長は式典の席で実際に言葉を交わしたが、バッキンガム宮殿はそれについてのコメントを控え、マムダニ市長側も何が話されたかに関するコメント要請に応じなかった。
エリザベス皇太后(エリザベス2世の母)の王冠に配されたコ・イ・ヌール ダイヤモンド。Photo: Tim Graham Photo Library via Getty Images
マムダニ市長が言及したコ・イ・ヌールは1849年、イギリスとの戦争に敗れたインド北西部のシーク王国から奪われ、ビクトリア女王に献上された。以来、このダイヤモンドは多くのインド人にとって、イギリスによる植民地支配の象徴的存在となった。
ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたマムダニ市長のコメントに関する記事では、「ペルシア語で『光の山』を意味するコ・イ・ヌールは、105.6カラットで鶏卵ほどの大きさがあり、世界最大級のカットダイヤモンドの1つ」と記されている(イギリスに渡った後に再研磨されて現在のサイズになった)。
コ・イ・ヌールはまた、世界最古のダイヤモンドの1つで、数千年前にインド南部の砂漠で掘り出されたとの言い伝えもある。歴史的資料によると、13世紀以降いくつもの王朝が興亡したインドとその周辺国で、何世紀にもわたり所有者が変遷してきた。
2017年に出版された『Koh-I-Noor: The History of the World’s Most Infamous Diamond(コ・イ・ヌール:世界で最も悪名高いダイヤモンドの歴史)』の共著者、ウィリアム・ダルリンプルはニューヨーク・タイムズにこう語っている。
「このダイヤモンドには不運をもたらす長い歴史があります。今回も、チャールズ国王のニューヨーク訪問をつまずかせるトラップになったようです」
一方、インドはコ・イ・ヌールの返還を繰り返し求めてきたが、いまだ実現していない。昨年、国際司法裁判所にダイヤモンドの返還を求める訴訟を起こしたヒンドゥー教活動家のプリヤ・ダルシャン・パトナイクは、「マムダニ市長がこの問題を提起したと聞いて驚きました。私たちはコ・イ・ヌールを取り戻すことに努めるべきです」と述べている。(翻訳:石井佳子)
from ARTnews
あわせて読みたい
