【3月2日 CNS】このところ、多くのミルクティー店に注文が殺到している。背景にあるのは、インターネット大手による「AIお年玉」キャンペーンだ。
阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)傘下のAIアプリ「通義千問(Tongyi Qianwen)」は、春節(旧正月、Lunar New Year)に合わせて総額30億元(約665億4510万円)分のミルクティー無料企画を打ち出し、開始から9時間で1000万件の注文を突破した。想定以上の反響でアクセスが集中し、オンラインは一時不安定に。実店舗でも注文が急増し、対応しきれず企画を取り下げる店舗も出た。
これは、春節を前に過熱するAIお年玉競争の一端にすぎない。騰訊(テンセント、Tencent)、アリババ、百度(Baidu)、字節跳動(バイトダンス、ByteDance)などが相次いで大型施策を展開し、総額は45億元(約998億1765万円)に達している。
春節の「お年玉」は、単なる販促ではない。2014年、微信(ウィーチャット、WeChat))は「シェイク」機能と連動したお年玉企画で決済市場に一気に切り込み、ユーザー基盤を拡大した。2018年には抖音(Douyin)、2020年には快手(Kuaishou)が春節キャンペーンを通じて利用者数を伸ばしている。
ただし今回の狙いは決済ではない。各社が目指しているのは、AIを日常的に使う習慣を広げることだ。「困ったらAIに聞く」という行動を定着させ、将来的な利用拡大につなげようとしている。
2月以降、プラットフォーム間の競争は一段と激しくなった。微信が他社AIアプリの関連ワードをブロックする動きもみられ、ユーザー接点を巡る攻防が続く。各社に共通するのは、お年玉や無料特典をきっかけに自社サービスへ誘導し、利用を促す戦略だ。
背景には、AI競争の軸が変わりつつあることがある。海外では半導体や計算資源の確保が焦点となっているが、計算資源の普及やモデルのオープン化が進むなか、競争はユーザー数、利用シーン、定着率へと移りつつある。
中国では、飲食やSNS、娯楽といった日常生活に近い分野にAIを組み込み、利用機会を増やす戦略が目立つ。2025年に公表された政府方針でも、AI応用の普及率向上が重視されており、実生活での活用拡大が政策目標となっている。
統計によると、2025年末時点で中国の生成AI利用者は6億人を超え、前年比で大幅に増加した。普及率も4割を超え、AIは本格的な拡大段階に入ったとみられる。
総額45億元の春節キャンペーンは、研究開発段階にあったAIが、生活に根づく段階へ移行しつつあることを示す象徴的な出来事ともいえる。今後の焦点は、一時的な話題性ではなく、利用者を継続的に引きつけられるかどうかだ。
ユーザーの定着、日常生活での活用頻度、サービスの実用性――これらを積み重ねられる企業が、AI分野で持続的な競争力を確立していくことになりそうだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News
