
フランスのマクロン大統領(左)とドイツのメルツ首相=12日、ベルギー中部リンブルフ州(AFP時事)
欧州は、安全保障上、米国依存からの脱却を明確に打ち出す一方で、ウクライナ和平に向けた取り組みは断念していない。ロシア軍がウクライナ国内のエネルギー施設だけでなく、鉄道インフラなどの攻撃を継続する中、欧州は長期戦への対応を迫られている。
ロシアによる侵攻から4年、欧州は、ロシアの脅威への危機感を強めるポーランドやバルト3国、フィンランドなどの東欧諸国とフランス、ドイツ、イタリアなど比較的危機感が薄い西欧諸国、ハンガリーなどロシアからのエネルギー供給を継続し、極度の対露対立を避ける国々に3分割されている。
そのため、ウクライナ支援についても欧州内で温度差がある。実際には欧州からウクライナへの軍事支援が激増する一方、和平実現へウクライナに圧力をかけるトランプ米政権は昨年3月以降、軍事援助停止を表明。年300億ユーロ(約5兆4900億円)を超える支援負担が欧州を苦しめている。
米国の支援額が激減した一方で、欧州諸国の支援額は約7割増となっている。欧州連合(EU)にとってウクライナ戦争は対露防衛の最前線と位置付けられているが、負担増への不満の広がりから、加盟27カ国の合意は困難となっている。欧州防衛の戦略的自立への流れはすでに不可逆だが、独立防衛体制構築でも微妙な温度差が加盟国の間にある。
フランスのマクロン大統領は、自立した安全保障構築に熱心な半面、予算に限りがある。欧州最大の経済大国ドイツのメルツ首相はEU唯一の核兵器保有国フランスの核の傘の下に入ることに熱心だが、国内には左派反戦勢力を抱えており、政治的合意を得るには課題も多い。
侵攻当初から、米国依存の欧州の防衛産業は低調だった。軍備強化の方向に舵(かじ)を切り、戦後最大の軍備再編期を迎えた欧州の生産能力は拡大しているものの、供給能力は追い付いていない。欧州の防衛支出は2030年には国内総生産(GDP)比2・9%、8000億ユーロに達すると予想されるが、トランプ米大統領は5%に増やすよう要求している。
EU加盟国はそれぞれ独自の調達制度を持つ。装備品の仕様は異なり、調達プロセスもばらばらで、共同調達が進まない構造的問題を抱えている。軍需産業に携わる溶接工などの人材不足、戦争のデジタル化に対応したハイテク人材も不足している。厳しい現状を抱えながらウクライナ支援を継続するには多くの課題がある。
負担増を迫られる欧州で支援の限界が指摘されている。ウクライナ支援は財政負担の巨大化と持続性の両面で困難に直面している。EUは26年から27年に向け、900億ユーロの追加融資を決定した。危機感の強い東欧は支援に積極的だが、仏独伊などでは支援疲れが表面化している。
フランスでは来年、大統領選挙が実施される。支援策や防衛自立政策で不透明な部分も多い。EUは凍結したロシア資産の利子をウクライナ支援に充てる仕組みを導入したが、国際法との整合性、ロシアの報復リスクという課題があり、ハンガリーのようにウクライナ支援に慎重な加盟国もある。
欧州では今、トランプ政権の登場で安全保障環境のみならず、経済環境も激変している。結果的にEUが本来目指した経済統合もその行方に不透明感が漂い、これまでの欧州ビジョンの再構築が問われている。欧州の未来像は大きなリセットの時を迎えている。
(パリ安倍雅信)
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