半導体産業の集積地として、急激な変化を遂げてきた熊本。経済的恩恵が一気に広がる一方で、その変化に「混乱しているところはある」という声も聞こえる。
 そんな渦中の熊本で、地場産業が育んできた価値や、歴史と風土、地に足のついた経済活動を改めて確かめ、クリエイティブの力で“未来を想像する起点”をつくる——熊本最大級のビジネスカンファレンス「FIVE RINGS 2026」が、熊本市内できょう開幕した。

 宮本武蔵『五輪書』にならい、「地・水・火・風・空」の5テーマで「成長企業の実践知」を共有し、企業ブースや交流会を通じて次の成長につながる出会いも生み出すという。

 前回2025年は参加者600名超、登壇者30名超、協力企業25者超。今年はどんな熱量が立ち上がるのか。開幕前の特番では、実行委員長で立ち上げ人の椿原(つばきはら)“ばっきー”さんとともに、堀潤が見どころを解説した。

◆「行政だけでは回らない」——民間のエンジンをつくりたかった

 番組で椿原さんは、立ち上げの理由を大きく2つに整理した。
 ひとつは、瀬戸内の民間主導イベント「BLAST SETOUCHI」を見て「熊本でもできるはず」と感じたこと。もうひとつは、スタートアップを盛り上げる動きが行政側から始まっていた一方で、民間側の“走る仕組み”が不足していると見えたことだ。

 実際、初回は「手弁当」で仲間の応援を集めて形にしたが、回を重ねるごとに金融機関や成長企業、メディア、行政が加わり、規模が拡大。さらに「公益性・透明性」を高めるため、カンファレンス運営のための法人も立ち上げたという。

8bitNewsより8bitNewsより◆目指すのは“お祭り”——硬い場に出てこない人が、交わる空間へ

 FIVE RINGSの特徴として強調されたのが、ビジネスイベントでありながら「お祭り」を目指すこと。
 椿原さん自身、音楽イベントやフェス文化に関わってきた経験があり、空間や演出を含めた“場づくり”を重視する。そこには、従来の硬い交流会では出会えなかった層——若者、学生、挑戦の入口にいる人を呼び込み、地域の渦を太くする狙いがある。

 この思想は、過去の発信でも「目指しているのは“お祭り”」「クリエイティブへ投資し続ける」と言語化されてきた。

「FIVE RINGS 2026」HPより「FIVE RINGS 2026」HPより◆見どころは2本柱——「出会い」と「生々しい実践知」

 3年目を迎えた今年、椿原さんたちが立てた問いは「何のために続けるのか」。番組では、その答えを「地域に実利を生む」と表現した。

そのために置いた“柱”が2つある。

出会い(マッチング):ブース、交流会などを通じて、事業提携・採用・資金調達など具体的な次の一手につながる接点をつくる。実践知(生々しい話):専門家の一般論ではなく、成長企業や経営者が「実際に何をやってきたか」を聞ける場にする。

 さらに番組内では、「カンファレンスに合わせて新しい発表が出てくると面白い」といった話も出た。今日のセッションの中では、大型の発表を行う準備を進める企業もある。東京の大規模イベントのように、ここが“最初に動きを聞ける場所”になれば、地域の温度はもう一段上がる。

◆“半導体だけじゃない熊本”へ——最後は「地域投資」と長い時間軸

 注目セッションとして語られたのが、最後の「空」の巻。
 短期の売上や組織論だけでなく、地域や社会の単位で数年先を見る視点を持ち込み、投資家・金融の目線で熊本の未来を考える場にしたいという。

 椿原さんは現在の熊本を「よくも悪くも混乱して、ふわふわしている」と表現した。地価上昇など“表層の投資”の話題が先行しがちな中で、チャレンジする人を育てる投資のあり方を、会場で深めたい——。その問題意識が、きょう開幕のFIVE RINGS 2026に通底している。

◆会場で配られる“紙のメディア”も——クリエイティブ投資が渦をつくる

 もう一つのトピックが、イベント発の紙媒体(カルチャー誌)だ。
 「イベントだけでは伝えきれない」「年に何度も開催できない」という限界を踏まえ、別の形で物語を届ける試みとして準備。スポンサーの支えも得て、参加者へ配布するプロトタイプとして世に出すという。

雑誌「VOOOOOID」も手がけることに 椿原さん提供資料雑誌「VOOOOOID」も手がけることに 椿原さん提供資料

 クリエイティブを担うのは、デザイナーの佐藤かつあき氏。 2016年、熊本地震をきっかけに地元のクリエイターたちが立ち上げた一般社団法人BRIDGE KUMAMOTOの代表理事を務める。被災家屋で使われなくなったブルーシートを再利用したカバン「ブルーシードバック」は2017年グッドデザイン賞BEST100&特別賞受賞を受賞。熊本と日本、世界を繋ぐクリエイティブをさまざま手掛けてきた。

「VOOOOOID」より「VOOOOOID」より

 「クリエイティブへの投資は止めなくていい」——番組で語られたこの言葉は、FIVE RINGSが“経済イベント”であると同時に、“文化の装置”でもあろうとする姿勢を象徴していた。「FIVE RINGS 2026」が放つ価値に、注目だ。

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