
秋田県鹿角市内で自動撮影カメラに写ったクマ=2023年8月(同県自然保護課提供・共同)
クマにしてみれば「県境」など知ったこっちゃない。
今年6月、山形県酒田市の住宅街で捕獲され、山に返されたクマが、10月、約50キロ離れた秋田県横手市に出没し、駆除された。
6月3日、酒田市の住宅街にある「法輪寺」で子グマが床下に入る姿が防犯カメラに写った。5日後の8日夜、市が仕掛けた箱わなにかかったのは、親離れしたばかりとみられる体長96センチ、体重32キロのメスだった。獣医師が麻酔銃で眠らせ、両耳に個体識別用のタグをつけて市街地から離れた山間部に放った。
4カ月半が経った10月24日朝、横手市内の集落で小屋に入り込むクマが目撃された。市が秋田県を通じて山形県に個体識別番号を照会したところ、酒田市で捕獲後、放獣されたクマと同一個体だと判明したため、駆除した。4カ月半の間に体長は120センチ、体重は推定50キロに成長していた。ケガ人はいなかった。
「環境省のガイドラインでは、暴れたり、人に危害を及ぼす恐れがあるとか、頻繁に人間の生活圏に下りてくる場合を除いて放獣を推奨しています。保護の観点からも、ガイドラインに沿って山に放ちました。酒田市で放獣したのは、ここ数年でこの1頭だけです。秋田で再び出没したため、放獣後、再被害を起こした個体と判断され、駆除となった」(酒田市危機管理課担当者)
放獣時の6月はクマの出没がそれほどあったわけではなく、同じクマが長距離移動して再び秋田に現れたことが報じられると、ネット上には「それぐらい常識だろう」と、放獣の判断を批判する書き込みが相次いだ。
■福島県、岩手県、宮城県は状況によって判断
放獣か、捕殺か。その判断は自治体によって分かれる。秋田県と青森県、新潟県、富山県は捕獲した個体は全頭駆除しているが、福島県、岩手県、宮城県は状況によって判断するという。長野県は11月、クマが嫌がる行為を学ばせて山に戻す「学習放獣」を一時休止し、駆除する方針に転換した。
「クマは回帰性が高いので食べ物の味を覚えると、5キロや10キロの距離を戻ってくる。放獣した個体が移動して、人身被害を起こしたら大変なことになります」(青森県自然保護課担当者)
判断基準がバラバラだと「こっちは必死で駆除しているのに、そっちが山に返したから被害を受けた」と、モメかねない。
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