サントリー美術館(東京・六本木)の「NEGORO 根来ねごろ -赤と黒のうるし」が12月17日から後期展示(1月12日まで)に入りました。同日に行われたメディア内覧会を取材しました。
本展は民藝展という枠に収まりません。日本人の美意識のダイナミックな変遷を追体験する「ネゴロ・ジ・オリジン」展です。
なぜ漆器である根来はこれほど心を打つのでしょうか。
長年の使用で表面の朱色が磨滅し、下地の黒が予測不能の表情を生む根来は、大正時代に柳宗悦らの「民藝運動」により見いだされました。しかしその視点をアンインストールすると、朱塗りの漆器は神仏の近くに置かれる神聖さと高貴さゆえに、塗り替えられず経年したという「用の美」とは対照的な起源が浮かび上がります。
(右から)国宝 唐櫃(熊野速玉大社古神宝類のうち)南北朝時代 明徳元年(1390)和歌山・熊野速玉大社、唐櫃 個人蔵/子守宮伝来、重要文化財 楯 鎌倉時代・嘉元3年(1305) 奈良・大神神社
とはいえ、民藝の価値観や美意識は現代人に強く根付いています。ぜひ会場に入る前にエレベーター正面の椅子に設置されている図録のP.144〜「総論2 近現代の根来の価値観と美意識について」(大城杏奈・サントリー美術館学芸員)を読んでみてください。この論考を頭に入れておくと、根来の見え方がガラリと変わり、新鮮な驚きで楽しめるはずです。
民藝の価値観や美意識は現代人に根付いています。エレベーター正面の椅子に設置されている図録P.144〜「近現代の根来の価値観と美意識について」(大城杏奈同館学芸員)を読んでから会場に入って下さい。この論考を頭に入れておくと、根来の見え方がガラリと変わり、新鮮な驚きをもって楽しめるはずです。 pic.twitter.com/rUSqFR7RCV
— 美術展ナビ (@art_ex_japan) December 17, 2025
根来寺は1585年に豊臣秀吉による焼き討ちで伽藍のほとんどが灰塵と化しました。実は焼き討ち前の根来寺やその周辺で作られた狭義の「根来塗り」と確定できるものはなく、漆銘で根来寺産と推定できるのは、茨城県水戸市の水戸大師六地蔵寺が所蔵するこちらの重要文化財「布薩盥ふさつたらい」だけとのこと。
(手前4口)重要文化財「布薩盥」室町~安土桃山時代 寛正3年(1462)~天文8年(1539)頃 水戸大師六地蔵寺
根来寺の学頭寺院だった「智積院」は、徳川家康によって1601年に京都の現在地で再興されます。豊臣氏滅亡後の1615年には、秀吉が夭折した息子の菩提を弔うために建立した祥雲寺も与えられました。長谷川等伯の「楓図」と息子・久蔵の「桜図」など、長谷川一門による智積院の国宝障壁画はもとは祥雲寺の障壁画でした。
(読売新聞美術展ナビ編集班 岡本公樹)
NEGORO 根来 - 赤と黒のうるし
会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階)
会期:2025年11月22日~2026年1月12日 *作品保護のため、会期中展示替を行います。
開館時間 10:00~18:00(金、1月10日は〜20:00) (入館は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日、12月30日〜1月1日(1月6日は〜18:00)
アクセス:東京ミッドタウン[六本木]まで都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結/東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路直結/東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩約3分
入館料:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 1000円
詳しくは公式サイトへ。
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