【12月10日 CNS】「まさか中国国家博物館(National Museum of China、以下「国博」)で『干飯(夢中になってご飯を食べること)』する日が来るとは!」
遼寧省(Liaoning)の観光客・于麗娜(Yu Lina)さんは、古代の食文化展に並ぶ精巧な料理模型の前で驚きを口にした。「干飯」という言葉には、展示を「味わう」ことと「実際に食べる」ことの両方が重なっており、いま中国の博物館で起きている現象を象徴している。
近年、中国の多くの博物館が工夫を凝らした飲食サービスを導入し、個性的で美味しいメニューが若者の心を引きつけている。国博の食堂は文化要素を盛り込んだメニューで知られ、シンプルなサンドイッチやケーキでさえ「料理の背後にある文化」が魅力を高めているという。
今の若者にとって、博物館での「干飯」は単なる食事ではない。展示を見た後、食堂を「必ず訪れるスポット」として楽しむ文化が広がり、例えば遼寧省博物館(Liaoning Provincial Museum)では、地元名物の鍋包肉(甘酸っぱい豚肉料理)定食が20元(約438円)で味わえる。「普段食べるのと違い、展示を観た直後に味わうと体験の深みが増す」と于麗娜さんは話す。
一方で、博物館食堂の人気には現実的な理由もある。2024年の博物館来館者数は延べ14億9000万人に達し、大規模館では数時間歩き続けて空腹を覚える来館者が多い。四川博物院(Sichuan Museum)が2024年末に館内食堂を導入すると、すぐに館内で最もにぎわう場所の一つとなった。「長時間の観覧に温かい食事は欠かせない」と北京第二外国語大学の呉麗雲(Wu liyun)教授は指摘する。
飲食サービスの導入は、来館者のニーズに応えるだけでなく、博物館自身の発展戦略でもある。四川博物院の鐘玲(Zhong Ling)副院長は、親しみやすい食堂を設けることで滞在時間が延び、展示や文化への理解が深まると説明する。中国伝媒大学(Communication University Of China)文化産業管理学院の卜希霆(Bu Xiting)副研究員も、飲食サービスを拡充することは、博物館が「生活空間」として進化する重要なステップだと分析する。
各地では地域文化や展示にちなんだ料理も続々登場している。河北博物院(Hebei Museum)の「長信宮灯」麺、殷墟博物館(Yin Ruins Museum)の甲骨文字ラーメン、国博の「発掘チョコレート盲箱」など、文化要素と「映え」の要素を兼ね備えたメニューが若者を引きつけ、SNSでの共有欲求にも応えている。
また、こうした魅力的な食べ物は周辺住民も博物館に引き寄せており、食事のついでに展示を訪れる新たな観客層が生まれている。湖北省博物館(Hubei Provincial Museum)では、名品「越王勾践剣」をモチーフにした丼料理が人気となり、それをきっかけに若者が展示室へ足を運び、歴史に興味を持つようになった。博物館は今、特別な観光地から、日常に寄り添う文化拠点へと変わりつつある。
一方で、「食堂が博物館の雰囲気を壊すのでは」「商業化が文化体験を損なうのでは」と懸念する声もある。これについて卜希霆氏は、飲食サービスの導入は人気取りに走るべきではなく、博物館の文化的な雰囲気と調和しているかが最も重要だと述べ、「文化を主軸に据える姿勢を守り、干飯が展示観覧の目的を上回ってはならない」と強調した。(c)CNS/JCM/AFPBB News
