冬の味覚 カキに異変 広島 一部海域で大量死 高水温影響か、他産地でも
広島県呉市沖で水揚げされ、漁港に運ばれる養殖カキ=18日

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琉球新報朝刊

 栄養満点で「海のミルク」とも呼ばれる冬の味覚、カキに異変が起きている。全国一の生産量を誇る広島県の一部海域で8~9割が大量死し、水揚げ時期を迎えても出荷が見込めない状況が続く。海水温の高さが影響したとみられる大量死は瀬戸内海の他の産地でも確認され、国や自治体が対応に追われている。
 「来年の分も死んでいる。どうすればいいのか」。広島県呉市の景勝地・音戸(おんど)の瀬戸(せと)近くに養殖いかだを持つ水産会社ナバラの名原大輔社長(44)は途方に暮れる。普段なら出荷が本格化している11月中旬、ワイヤに連なったカキを海から引き揚げると、口が開いて中身のなくなったカキ殻が大量に姿を現した。
 かろうじて生き残った個体も茶色で水っぽく身入りが悪いため商品にはならない。来年の準備のため水揚げは続けなければならず毎日船を出すコストだけがかさんでいく。
 呉市のカキはふるさと納税の人気返礼品で、10月27日までに約1700件の申し込みがあった。市は提供の見通しが立たないとして新規の受け付けを中止し、既に寄付した人には品物の変更やキャンセルを呼びかける。
 東京商工リサーチは11月21日、県内の関連事業者への影響が約300億円規模になるとの見通しを発表。全国の飲食や宿泊、観光業に影響する恐れがあると指摘している。
 農林水産省の統計によると、2024年に全国で生産された養殖カキは15万トン近く。うち約6割が広島産だ。地元では身を大きくするため2、3年かけて養殖するのが一般的で、例年でも夏を越すごとに2割程度は死んでしまうとされている。
 生産量全国4位の兵庫県も危機感を強める。県水産漁港課や県内主要産地の漁協によると、9月以降に大量死が増え始め、5~8割が死んでいる。今後水揚げが本格化する香川県でも、試験的な水揚げで5~8割の大量死が確認された。
 一方、岡山県や広島県西部など、深刻な被害が出ていない海域もある。今後水揚げシーズンを迎える漁場では、不漁のイメージが広まることへの警戒感を持つ関係者もいる。
 広島県水産海洋技術センターは、海水温と塩分濃度が高い状態が長期間続いたためにカキが衰弱したと推定。センターは水温などをリアルタイムで収集し、養殖の位置や水深を変えるスマート漁業を推進しており、戸井真一郎技術次長は「データに基づいた漁場の管理が大切だ」と話す。
 県は国に原因究明や支援を要請。水産庁は漁業者の資金繰りに支障がないよう関係機関に対応を求める通知を出した。11月19日には鈴木憲和農相が東広島市のカキ養殖場を視察し、早期に具体的な支援策を提示する考えを示した。

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