公開日時 2025年11月22日 05:00
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東京電力福島第1原発事故で、新潟県柏崎市に避難した石沢千枝子さん=10日
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琉球新報朝刊
「人間が造ったものに『絶対』なんてない。それでも原発を動かすなら安全で確実な作業をしてほしい」。新潟県柏崎市に住む70代前半の石沢千枝子さん。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故に直面し、福島県双葉町から避難してきた。あれから14年。故郷の自宅は帰還困難地域にあり、いまだに戻れない。「いっときも(事故につながる)ミスは許せない」。柏崎刈羽原発の再稼働に向けた動きを複雑な思いで見つめる。
双葉町では原発で清掃の仕事をしていた。非番だった2011年3月11日、スーパーで買い物中に大きな揺れに襲われ「生死をさまよった」。翌12日に息子の妻が出産し、息子らと共に兄が住む柏崎市へ避難した。柏崎刈羽原発の存在を気にしている余裕はなかった。
時がたっても帰れず、自宅の解体を決意。手続きのため昨年、双葉町へ向かった。家はツタに覆われ、動物が侵入したような形跡も。「こつこつ働いて建てた家があんな状態で…」。荒れ果てた自宅を前に強いストレスを感じた。
柏崎市では職業安定所で紹介された清掃の仕事を3年ほどこなした後、病気の治療のため退職。現在は、公園や寺で花壇の手入れや草刈りの奉仕活動に精を出す日々だ。
避難した先にも立地している原発。「既にあるものはどうしようもない」。諦めにも似た心情を打ち明ける。でも根底にあるのは、事故を体験したことで抱く「原発は稼働してもしなくても怖い」との思い。今後双葉町の帰還困難区域の立ち入り制限が解除されても、当時の住民が皆戻ってくるとは限らない。「復興したって元通りにはならない」
柏崎刈羽原発は、福島事故の教訓を踏まえ、十分な安全対策が取られているのか―。新潟県の県民意識調査では一定数が疑問を抱いているとの実態が浮かんだ。しかし花角英世知事の容認判断で再稼働の日が近づく。
「動かすなら、関わっている一人一人が原発の安全を心がけて作業してほしい。それを望んでいる」。平穏な生活を脅かされたくないという切実な願いが言葉ににじんだ。
