2025.10.22
(最終更新:2025.10.22)

東京から気候危機ムーブメントを 日本初の「Town Hall COP」としてフォーラム開催

「TIME TO ACT フォーラム 2025」では小池百合子・東京都知事(中央)らが世界に向けてメッセージを発信した

編集部

【記事の要点】

◇東京都が2021年から展開している「TIME TO ACT」の一環
◇東京強靱(きょうじん)化プロジェクトのため新しい債券を発行
◇イクレイを通じて国やCOPの議論の場にフォーラムの成果届ける

脱炭素化に向けた実効性ある行動を加速させるため、東京都は気候危機行動ムーブメント「TIME TO ACT」を2021年から展開している。2025年10月7日には、「気候変動に戦略的に立ち向かう~都市から世界へつなげる『緩和』と『適応』アクション~」と題して、「TIME TO ACT フォーラム 2025」を開催。小池百合子都知事や国連大学のチリツィ・マルワラ学長らが、世界に向けたメッセージを発信するとともに、各国の事例について理解を深めた。(副編集長・藤田淳)

【基調講演】チリツィ・マルワラ  国際連合大学学長・国際連合事務次長

講演用の台についたマイクに向かって話す黒人男性
チリツィ・マルワラ国際連合大学長・国際連合事務次長(以下写真はTIME TO ACT事務局提供)

【発言要旨】
・気候危機は「将来の警告」ではなく現在の現実であり、世界の気温上昇を1.5度以内におさめるという目標は崩壊の危機にある。世界のCO2の約70%は都市部から排出されていると推定されている。都市は排出の約7割を占める一方、解決の中心でもあるため、世界的対応の中核に据えるべきだ。

・都市は単独では気候変動を解決できないが、変革を主導することはできる。東京都の「ゼロエミッション戦略」などは、SDGsと足並みをそろえた取り組みだ。

・11月にブラジルで開かれる国連気候変動会議(COP30)に向け、都市を不可欠なパートナーとして位置づけ、国家のコミットメントに都市支援の具体計画を組み込む必要がある。

・ケニアの活動家で、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏が、自身の原点として語った「ハチドリのひとしずく」をご存じだろうか。燃える森に一滴ずつ水を落とすハチドリが、「その行動に意味があるのか」と問われ、「私のベストを尽くしているだけ」と答える話だ。東京都の取り組みも、同じように粘り強く続けることが、気候変動の流れを変えるカギになる。

【パネルディスカッション】「都市から世界へつなげる『緩和』と『適応』アクション」

壇上に5人の男女が並んでいる
パネルディスカッションでは各国から事例などが紹介された

小池百合子(東京都知事)

マイクを持って話す女性
小池百合子(東京都知事)

【発言要旨】
・2035年までに温室効果ガスを60%以上削減し、2050年のネットゼロを目指す。

・新築住宅などに太陽光パネル設置と断熱性能の確保を義務化。蓄電池や断熱改修への支援で「省エネ住宅」を広げる。

・太陽光パネルの回収・高度リサイクルの態勢を整備。家庭で使った油を集めて航空燃料(SAF)に活用(回収量は7000L。

・総事業規模17兆円の「東京強靱(きょうじん)化プロジェクト」を推進。新しいボンド(債券)「TOKYOレジリエンスボンド」を発行して資金を集める。

・都市同士が横につながる「マルチシティー・ラテラル協力」を提唱し、国際ネットワーク「G-NETS」を強化。

クリスタ・ミルン(メルボルン市チーフヒートオフィサー兼気候変動・都市レジリエンスディレクター)

マイクを持って話す女性
クリスタ・ミルン(メルボルン市チーフヒートオフィサー)

【発言要旨】
・20年にわたる取り組みで、CO2排出79%削減、自治体運営の100%再エネ化を達成。

・15年以上の「アーバンフォレスト戦略」で植樹と樹木保全を進め、酷暑日に図書館やコミュニティーセンターを開放するクールスペースも運用している。

エリック・ユー(台湾・台北市副秘書長兼国際事務執行長)

縦型のモニターに映る男性
エリック・ユー(台湾・台北市副秘書長兼国際事務執行長)

【発言要旨】
・都市設計段階から「クーリング」を織り込むゾーニングを導入。屋上緑化の拡大、公共新築でのニアゼロカーボン基準の浸透を進めている。

・グリーンモビリティーを推奨し、低炭素な交通手段を簡単に選べるようにしている。シェアサイクルは、最初の30分の利用を無料化したことにより、4人に1人が自転車通勤をしている。

ヴィンセント・ヴィナラオ(フィリピン・ケソン市気候変動・環境持続可能性局副局長)

縦型モニターに映る男性
ヴィンセント・ヴィナラオ(フィリピン・ケソン市気候変動・環境持続可能性局副局長)

【発言要旨】
・循環経済、再エネ導入、建築物の強靱化、アクティブモビリティー、公平性の確保を緩和の柱に、都市農業、雨水回収、自然に根差した解決策などの適応を推進している。

ナオミ・カウワン(駐日英国大使館エネルギー・気候変動政策部長)

マイクを持って話す白人女性
ナオミ・カウワン(駐日英国大使館エネルギー・気候変動政策部長)

【発言要旨】
・イギリスでも夏の暑さが強まり、2022年には40度を記録。多くの家にエアコンがないため、熱中症対策の呼びかけを行った。科学者は「気候変動で、このような猛暑の起きる確率が約10倍に高まった」と説明している。

・英国では、排出を半減しながら経済は約80%成長しており、低炭素の分野は他の産業より速いペースで拡大。気候対策は成長のチャンスでもある。

・東京とロンドンという金融ハブ同士でグリーンファイナンスの連携が可能。マンチェスターと大阪の都市間連携など、地域同士の協力も広がっている。

クリストフ・プッシュ(世界銀行都市・強靭性・土地グローバル部東京開発ラーニングセンタープログラムマネージャー)

手ぶりを交えて話す白人男性
クリストフ・プッシュ(世界銀行都市・強靭性・土地グローバル部東京開発ラーニングセンタープログラムマネージャー)

【発言要旨】
・低、中所得国の都市を低炭素で強くするために、毎年約2560億~8210億ドルが必要。各国のGDPの約0.8~2.6%にあたり、多くは既存の公共投資の質を高めることでまかなえる可能性がある。

・日本政府と連携し「東京開発ラーニングセンター(TDLC)」を運営。30~40カ国から約200人を東京に招き、暑熱対策や緩和・適応の研修、現地視察で学びを広げている。

【閉会あいさつ】オタヴィオ・エンヒッケ・コルテス(駐日ブラジル大使)

講演台のマイクに向かって話す白人男性
オタヴィオ・エンヒッケ・コルテス(駐日ブラジル大使)

【発言要旨】
・ブラジル・ベレンで開かれるCOP30の焦点として、各国が温室効果ガス削減目標を定めた「自国が決定する貢献(NDC)」と呼ばれる計画を提示することになっている。

・熱帯林を保全する国々に対して資金を提供する新たな基金「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティー(TFFF)」が、COP30で正式に発足する。すでに10億ドル規模の資金表明があった。

・今こそ行動を起こすべきで、危機をチャンスに変える時だ。

国際ネットワーク・イクレイ(ICLEI)通じてCOP30に意見反映

マイクを持って話す男性
内田東吾(イクレイ日本事務局長)

このフォーラムは日本初の「Town Hall COP」として開催された。持続可能な社会の実現を目指す2500以上の自治体で構成された国際ネットワーク・イクレイ(ICLEI)が主催する気候対話イベントの枠組みで、イクレイを通じて国やCOPの議論の場に成果が届けられ、地域の声が国家・国際レベルのプロセスに反映される。

藤田淳

藤田淳
( ふじた ・じゅん )
朝日新聞SDGs ACTION!副編集長。1993年に朝日新聞社入社。山形、浜松、前橋で勤務後、東京、西部、大阪のスポーツ部でサッカーを中心に担当、ドイツ、南アフリカW杯を現地で取材した。欧州、アフリカなど35カ国、地域を訪問。その後、デジタル編集部、マーケティング戦略本部などを経て、2025年4月より現職。

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