欧州連合(EU)の域内に森林関連製品を輸入・販売・輸出する企業に対し、製品が生産される際に森林破壊を引き起こしていないかどうか、調査(デューデリジェンス)することを求める制度。「森林減少フリー製品規則」とも呼ばれる。2023年6月29日に発効した。目的は温室効果ガスの排出と生物多様性の損失を減らすことだという。

対象となる森林関連製品と派生製品

 対象となる森林関連製品は木材、アブラヤシ、大豆、牛、コーヒー、カカオ、天然ゴムの7品目。これらを原料に作られる紙やパーム油、チョコレート、タイヤ、皮革、家具といった派生製品も対象になる。EU域内に輸入・販売したり、域外に輸出したりする全ての企業にデューデリジェンスを義務付ける。

 20年12月31日以降に森林を伐採して作られた土地で栽培・飼育した作物を利用した製品は、EU域内を流通できなくなる。対象となる企業は、この日以降に森林の破壊・劣化に関与していない「森林破壊フリー」の製品であることや、生産国の環境保全や土地利用、労働などに関する法制度に従って生産されていることを証明し、EU加盟国にデューデリジェンス宣言書を提出する。

森林伐採の様子(写真=Richard Carey/stock.adobe.com)

森林伐採の様子(写真=Richard Carey/stock.adobe.com)

求められるデューデリジェンス

 森林関連製品のサプライチェーンを遡って収穫地の緯度・経度情報を突き止める完全なトレーサビリティ(追跡可能性)の確保を求める。罰則規定も盛り込んだ。対象企業のEU域内での年間売上高の4%以上の罰金が科され、公共調達から一時除外される。

 世界の生産国のリスクを「高い」「標準」「低い」と分類するベンチマーク制度を導入し、高リスク国からの調達には監視を強化する一方、低リスク国ではデューデリジェンスを簡素化する柔軟性も持たせた。

 高リスク国から対象となる原料を調達し、それを使った製品をEUに輸出する場合、輸入事業者から森林破壊フリー製品の証明を求められることになる。製紙や建設、食品、輸送、商社といった業界への影響が大きい。

適用開始の延期と見直し相次ぐ

 23年の発効時には、大手企業は24年12月30日から、中小企業は25年6月30日から義務づけを適用開始することになっていた。中小企業には(1)平均従業員数が250人以下、(2)純売上高5000万ユーロ未満、(3)賃借対照表総額が2500万ユーロ未満――の3つの基準のうち2つを満たす企業が該当する。

 だが24年12月、EU理事会と欧州議会は、これらの義務の適用開始を1年延期する改正案に合意した。大手企業は25年12月30日から、中小企業は26年6月30日から適用されることになった。

 25年4月15日には欧州委員会がEUDRのガイダンスとFAQ(よくある質問)を改定した。目的は、企業の負担を軽減する「簡素化」である。対象企業は、デューデリジェンス宣言書をEU向けに輸出する全ての出荷ごとではなく、年に1回の提出で義務を履行できることになった。

 5月22日には、欧州委員会が世界の生産国のリスク分類(ベンチマーキングシステム)を初めて発表した。「高リスク国」として挙げたのは、北朝鮮、ベラルーシ、ミャンマー、ロシアの4カ国。森林リスクが指摘されるブラジルやアルゼンチン、インドネシアは「標準リスク国」に指定された。

 欧州議会は7月9日、この分類に関する実施規則の撤回を求める動議を採択した。欧州議会の発表によれば「生産国のリスク分類案が古いデータに基づいて作成されており、入手可能なリスク指標が組み込まれていない」「現在の土地利用の動向と森林劣化を考慮していないため、関係国の現状を正確に反映していない」という。

 また、8月21日に米国と欧州連合(EU)が公表した貿易交渉に関する共同声明は、EUDRの見直しに触れた。さらなる制度変更の可能性も指摘される。

 9月22日には、欧州委員会で環境保護を担当するジェシカ・ロスウォール委員が、EUDRの適用開始をさらに延期すると公表したことが報じられた。これが正式に採択に至れば、大手企業には26年12月30日から適用されることになる。

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