欧州連合(EU)のタクソノミー規則(通称:EUタクソノミー)は、持続可能な投資を促進するための制度。2020年7月12日に発効し、22年1月1日から段階的に適用が始まっている。

 この規則が策定された当時、国や企業が独自の定義で「グリーン」な製品や「サステナブル」な活動をうたっており「ウオッシュ」(見せかけ・ごまかし)が混在しかねないと問題視されていた。環境配慮や持続可能性があるかどうかの判断基準を導入して、ウオッシュを防ぎながら環境配慮や持続可能性を認められる製品・活動への投資を促進することを目的にEUタクソノミーが策定された。

 「タクソノミー」という言葉は「分類法」を指す。EUは、環境に配慮し、持続可能である(environmentally sustainable)経済活動とはどのようなものかを独自に分類し、グリーンやサステナブルの定義をまとめた。そのうえで、企業や金融機関に対し、その定義に当てはまる事業や商品の売上高や設備投資、営業支出といったKPI(重要業績評価指標)を開示することを義務付けた。

欧州委員会はサステナブル投資を促進する (写真=HJBC/stock.adobe.com)

欧州委員会はサステナブル投資を促進する (写真=HJBC/stock.adobe.com)

制度の対象となる企業

金融市場の参加者(FMPs):金融商品を提供する事業者(資産運用会社、銀行、保険会社など)
企業:会計年度の平均従業員数が500人以上で、非財務情報の公表義務がある企業や企業グループ。日本企業のEU子会社も対象になる
EU加盟国:グリーンをうたう金融商品や社債に関する公的な制度や基準、ラベルを導入する場合は情報開示の対象になる

 金融商品を提供する資産運用会社などは、投資家に対しその商品がどの程度、環境に配慮し持続可能であるかを開示する義務を負う。どの環境目標に貢献しているかを明記し、金融商品に組み込まれている全投資のうちタクソノミー基準を満たす経済活動への投資の割合を示すといった開示が求められる。

 企業は、自社の活動のうちどの程度が基準を満たしているかについて、非財務報告書で開示する。特に「非金融」の業種の企業は、持続可能な経済活動・製品・サービスの売上高、設備投資(CAPEX)、営業費用(OPEX)の開示を義務付けられる。

 対象企業などに開示を義務付ける情報については「開示委任法」にまとめられている。

タクソノミーに「適格」な活動、「適合」する活動

 環境に配慮した持続可能な製品や活動かどうかを判断するための「技術的スクリーニング基準」を定義した。EUは6個のテーマ(環境目的)ごとに基準をまとめている。

気候変動の緩和(温室効果ガスの削減など)
気候変動への適応(高温化や異常気象などへの対策)
水資源・海洋資源の持続可能な利用と保護
循環経済への移行(リサイクルなど)
汚染の防止と制御
生物多様性と生態系の保護と回復

 それぞれの環境目的の基準は委任法としてまとめられた。1と2については「気候委任法」として22年1月から、3~6については「環境委任法」として24年1月から適用されている。

 環境に配慮した持続可能な活動であると判断する際には、まず経済活動が気候委任法や環境委任法に記載されていることを確認する。記載されていれば、タクソノミーに「適格」である。そのうえで、次の3つを満たせば、タクソノミーに「適合」した、環境に配慮した持続可能な活動であると判断できる。

(1)スクリーニング基準を満たしている

 スクリーニング基準として、様々な経済活動について温室効果ガス排出量の上限値などの定量的な数値(しきい値)が設けられている。報告対象となる事業や商品が、しきい値を満たしているかどうかを判断する。

(2)他の環境目的に重大な被害を与えない

 6つの環境目的のいずれかの基準を満たしていても、その他の環境目的に悪影響を与える場合は、環境に配慮した持続可能な活動とはみなされない。6つの環境目的の1つ以上の基準を満たし、かつその他の環境目標に「重大な被害を与えない」(DNSH:Do not significant harm)ことも確認することが求められる。どのような状況を「重大な被害を与えている」とみなすかについてのDNSH基準が委任法で決められている。

(3)人権に関する国際ガイダンスにのっとっている

 また、環境に配慮した持続可能な活動は、人権を尊重していることも義務付けられる。経済協力開発機構(OECD)の「多国籍企業のための行動指針」や国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」といった国際ガイダンスにのっとっている必要がある。これを「最低限の安全対策」(minimal safeguard)と呼ぶ。

オムニバス法案による簡素化

 欧州委員会は25年2月26日、EUのサステナビリティ関連規則の簡素化を提案した。これにはEUタクソノミー規則も含まれた。同年7月4日には、EUタクソノミーの適用を簡素化する措置を採択。「開示・気候・環境委任法を改正する委任法」として採択された。

 タクソノミー規則の下で開示の対象となる企業(金融機関ではない企業)に対し、その企業の売上高や設備投資、営業費の10%未満を占める活動は「重要ではない」とみなし、開示の対象から除外する。また、対象となる金融機関は、開示要件の1つだったグリーン資産比率 (GAR)などのKPIの報告が簡素化された。26年1月1日以降に開示する25会計年度分の報告から適用される。

参考情報

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