8月25日にリリースされたSnow Manの新曲「カリスマックス」が様々な形で話題になっています。

なにしろ、楽曲自体が遊び心満載。

現代バージョンのパラパラを取り入れたコミカルなミュージックビデオも非常に中毒性が高く、YouTubeのミュージックビデオのデイリーランキングでは世界3位にランクイン。
日本のランキングでは当然の様に1位を走り続けており、再生回数も4日ほどで2000万を超えています。

ただ、今回Snow Manの活動として特に新しい挑戦と言えるのが、この新曲「カリスマックス」のパフォーマンスの初披露が日本のテレビ局の音楽番組ではなく、「Mカウントダウン」という韓国の音楽番組だったことでしょう。

なぜ新曲の世界初披露が韓国の音楽番組なのか?

なにしろ、STARTO ENTERTAINMENT所属アーティストのこの番組への出演は、旧ジャニーズ事務所時代の2011年の堂本光一さんの出演以来のようですから、14年ぶりということになります。

ではなぜSnow Manの新曲の世界における初披露が、韓国の音楽番組だったのか。

これにはまず、Snow Manが東京と大阪を含んだ世界5都市で展開しているPOP-UPイベントの、韓国におけるプロモーションという背景があります。

参考:Snow Man 目黒蓮&ラウール&深澤辰哉、韓国初ポップアップストアのローンチイベントに出席

実際、番組放送の翌日には、深澤辰哉さん、ラウールさん、目黒蓮さんの3人が、ソウルでの先行ローンチイベントに登場していますから、今回の番組出演もこうした一連の韓国向けのプロモーションの一環だったのは間違いありません。

ただ、韓国の音楽番組出演というのは、実は韓国向けのプロモーション以上の価値があると言うのが重要なポイントです。

そもそも韓国の音楽産業が国内市場だけでは市場が小さすぎるために、最初から世界市場を視野に入れていたことが、K-POPが世界で普及する背景にあったことは良く知られていますが、この姿勢はアーティストだけでなく音楽番組も同様です。

今回Snow Manが出演した「Mカウントダウン」を運営するMnetは、韓国系音楽専門チャンネルの一つですが、世界を意識した番組展開が実施されているのです。

 

世界中から生でもアーカイブでも視聴できるMnet

例えば、MnetはMnet+というアプリを入れることで番組を生で視聴することも可能になっており、日本からも番組を生で視聴することができます。
実際にSnow Manの出演当日は10万人以上がアプリ経由で生で視聴しており、たくさんの日本語の応援コメントがチャット欄に飛び交っていました。

さらに今回のSnow Manの「Mカウントダウン」におけるパフォーマンス映像は、番組終了後にYouTubeでも自由に見られる仕組みになっています。

これにより、韓国の音楽番組の映像ではありますが、国を問わず世界中の音楽ファンが番組のパフォーマンスを視聴することができるわけです。

しかも基本的に全てのパフォーマンスがフル尺で、日本の音楽番組のような短縮バージョンにならないどころか、パフォーマンスの最後には「エンディング妖精」とメンバーをアップで映すサービスタイムまであります。

そのため、今回のSnow Manのパフォーマンスは韓国の音楽番組にも関わらず、日本でも関連キーワードが次々にトレンド入りを果たしていたようです。

参考:Snow Man、韓国音楽番組「Mカ」出演でトレンド入りの反響「3人のエンディング妖精貴重」「チッケム一生観られる」

日本に住んでいる人しか見ることができない日本の音楽番組とは、番組の位置づけが根本的に異なっていると言えます。

なにしろ、この動画が掲載されている「Mnet K-POP」のYouTubeチャンネルの登録者数は2190万を超えています。
韓国よりも人口が倍以上いるはずの日本で、「NHK MUSIC」のYouTubeチャンネルの登録者が65万であることを踏まえると、その広がりの圧倒的な違いが分かると思います。

定点カメラの「ファンカム」もメンバー毎の「チッケム」も

しかも、MnetのYouTube活用は、番組で放送されたパフォーマンス映像が観られるだけではありません。

「ファンカム」というファンがライブで撮影したような定点カメラによるパフォーマンスを引きで見られる動画も、別の「M2」というYouTubeチャンネルで公開。

こちらの方が140万再生超えと、番組のアーカイブ映像の100万再生よりも多く視聴されているところに、ファンのニーズの多様さを感じます。

また、さらに同じYouTubeチャンネルではメンバー毎の「チッケム」と呼ばれる特定のメンバーだけを撮影した映像も9人のメンバー全員分公開。

こちらも目黒連さんの50万再生を筆頭に、全メンバーの動画がそれぞれ20万回以上再生されるなど、ファンの間で大きな話題になっているのです。

(出典:M2 YouTubeアカウント)(出典:M2 YouTubeアカウント)

このように、せっかくアーティストがステージで披露してくれたパフォーマンスを様々な角度から撮影し、YouTubeにアーカイブで残してファンがいつでも視聴できるようにする取り組みは、もはや韓国の音楽番組では珍しいことではありません。

こうした様々な角度の映像が、世界中に新しいファンを生む効果もあることが、今回Snow Manがあえて新曲のパフォーマンスを、日本よりも先に韓国の音楽番組で実施した背景になっているとも考えられるわけです。

 

徐々に増加する日本人アーティストの韓国音楽番組出演

実は、韓国の音楽番組への露出が海外のファンを増やすための最初の一歩として重要なのは、数々の歴史が証明しています。

最も象徴的なのは、今年コーチェラに日本人グループとして唯一出演をはたしたXGが、デビュー直後は韓国の音楽番組への出演を活動の軸にしていたことでしょう。

この初期の韓国音楽番組での露出が、XGがデビュー直後から海外のファンを増やす上で非常に重要だったと言われているのです。

参考:なぜXGは世界同時ヒットを成し遂げられたのか。日本の常識に縛られない新しいアプローチ

こうした世界への入り口としての韓国の音楽番組のポジションが、YOASOBIやJO1、INIなど、日本人アーティストが徐々に韓国の音楽番組への出演に注力している背景にあります。

そうした中で、今回日本においてトップクラスに人気のあるグループであるSnow Manが、新曲のパフォーマンス初披露に韓国の音楽番組を選択した影響は決して小さくないと考えられるわけです。

 

日本の音楽番組はこのままで良いのか

そう考えると、振り返って気になるのが、日本の音楽番組が韓国の音楽番組が実施しているような新しい取り組みにほとんど挑戦していない印象が強い点です。

(出典:筆者作成)(出典:筆者作成)

日本の音楽番組のYouTubeやSNS活用は、いまだに横並びで番組の告知のみを中心にしており、パフォーマンスのアーカイブ動画は期間限定であったりハイライトしか公開されないケースがほとんどです。

ファンカムやチッケムなどの新しい取り組みも、NHKが唯一挑戦している程度で、そのチッケムも期間限定で消されてしまっているのが現状です。

参考:「紅白歌合戦」からミセス、ルセラ、ビーファ、ILLIT、ME:I、JO1、TXTの“チッケム”公開

そのため、例えば藤井風さんが9月に初めて「ミュージックステーション」に出演することが話題になっていますが、海外の藤井風さんのファンからはその映像を一切見ることができないために落胆の声が多く上がっている模様。

また世界に多くのファンがいるアーティストの事務所からは、日本での活動を長くしすぎると世界のファンから活動が見えなくなるので、日本の活動期間をどうするか悩んでいるという声も聞こえます。

韓国の音楽番組が「アーティストファースト」「ファンファースト」で音楽番組作りをしているのに対して、日本の音楽番組は「広告主ファースト」「テレビ局ファースト」だと言われても仕方がない状態になりつつあると言えるでしょう。

つまり、Snow Manのように海外も視野に入れた活動をするグループにとって、日本の音楽番組への出演の優先度が下がっていく可能性が見えてきていると言えます。

一方でMnetが行っているように、日本の音楽番組が本気で世界の音楽ファンを対象に取り組めば、YouTubeで1000万や2000万登録という存在を目指すことができる可能性も、まだ残されているはずです。

はたして今回のSnow Manの韓国音楽番組出演が、今後の日本の音楽番組が変化するきっかけになるのか、注目したいと思います。

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