メープル・スキャンの開発者、サーシャ・イワノフさん。彼のお気に入りの場所、カナダ・バンフ国立公園のモレーン湖にて。メープル・スキャンの開発者、サーシャ・イワノフさん。彼のお気に入りの場所、カナダ・バンフ国立公園のモレーン湖にて。Sasha Ivanov/Maple Scanサーシャ・イワノフは、カナダ人が自分の購入品を理解し、カナダで作られた代替品を見つけられるよう支援するアプリを開発した。イワノフによると、そのアプリは大きな注目を集め、11万回以上ダウンロードされているという。イワノフは、もしアメリカからの関税がなくなったとしても、カナダ製品を使い続ける人がいるだろうと話している。

この記事は、カナダのアルバータ州に住むアプリ開発者で、コンピューター・サイエンスの修士号を持ち、人間とテクノロジーの関係を研究しているサーシャ・イワノフ(Sasha Ivanov)さんのインタビューをもとにしている。内容を簡潔かつ明瞭にするために編集を加えている。

それはすべて、非常に個人的な思いから始まったことだった。

2025年2月、自宅でニュースを見ていたとき、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がカナダの製品に関税をかけると発表するのを目にし、「攻撃された」と感じたのだ。

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その瞬間、「カナダ経済やこの国を応援するために、これからはできるだけカナダ製品を買おう」と思ったのだが、すぐに「どれが本当にカナダ製の商品なのか」を見分けるのは想像以上に難しいと気付いた。

私は自分の家の食品庫の中をあさりながら、ケチャップを手に取り、それがカナダ製かどうかを調べようとした。原材料を見て、本当にカナダで作られた物かどうかを確認し、それがカナダ製でなさそうであれば、その代わりのカナダ製の商品をネットで探す。そんな手間のかかる作業を繰り返さなければならなかった。それは時間がかかるうえに、面倒で、現実的に続けられるとは言えない作業だった。

アプリ開発の経験があり、人とコンピュータがどのように関わり合うかを研究していた私が、この問題を解決するアプリを作るという発想に至るのはごく自然なことだった。

その週末、私は数日間かけて最初のプロトタイプを作り、その1週間後にメープル・スキャン(Maple Scan)を公開した。

メープル・スキャンは情報に基づく選択を重視するメープル・スキャンでよくスキャンされる商品カテゴリーの数々。メープル・スキャンでよくスキャンされる商品カテゴリーの数々。2025年上半期のデータでは、スナックや調味料、飲料などのカテゴリが最も多くスキャンされた。特にケチャップやピーナッツバター、清涼飲料など、日常的な食品に人気が集中した。Maple Scan

メープル・スキャンを知った人は、単に「これはカナダ製かどうか」を教えてくれて、代わりの商品をおすすめしてくれるアプリだと思ってしまう。しかし、それは微妙に違う。なぜなら、『カナダ製かどうか』という判断は単純ではなく、さまざまな要素が関わっているからだ。

この無料アプリをダウンロードすると、アプリ内のカメラで商品を撮影できる。すると、アプリに搭載されたAIによる画像認識機能がラベルを読み取って、オンラインやデータベースで情報を検索するものの、最終的にその商品がカナダ製かどうかを判断することはない。

代わりに、このアプリは原材料、所有者、製造場所、そこで働く人数などの情報を教えてくれる。アプリはさまざまな情報を提示し、利用者自身がカナダ製かどうかを判断できるようにする。利用者の代わりに判断をするわけではなく、あくまで正しい情報を提供したいだけだ。

例えば、アプリは「Made in Canada(メイド・イン・カナダ)」と「Product of Canada(プロダクト・オブ・カナダ)」という表示の違いを見分けることができる。これらは、商品の原材料の割合や製造工程によって意味が異なる(訳注:「Product of Canada」は原材料のほとんどがカナダ産、「Made in Canada」は最終的な加工や組み立てがカナダで行われていることを示す)。また、カナダ資本のブランドか、外国企業の子会社かといった所有者の情報も含まれている。このアプリは、ただの表面上の表示だけでなく、その裏にある詳しい情報や背景も含めて提供することを目的としている。

意識的な消費を広げるコミュニティができたメープル・スキャンは、2025年3月の公開以来、11万回以上ダウンロードされている。メープル・スキャンは、2025年3月の公開以来、11万回以上ダウンロードされている。Maple Scan

正直に言うと、メープル・スキャンの開発やそれを通じた取り組みで特に心に残っているのは、アプリを中心に広がったコミュニティだ。1人で始めたプロジェクトだったが、ほぼすぐに多くの支援が寄せられたのは心温まることだった。

私の大学の同僚やカナダ各地の人々、さらにはまったく面識のない人々までが連絡をくれて、「このプロジェクトを手伝いたい」と言ってくれた。

現在では、ソーシャルメディアのマーケティングから食品業界の規制、メンターシップ、エンジニアリング支援、ネットワーキングまで、さまざまな分野の専門知識を持つメープル・スキャンを支援するボランティアチームが結成されている。

すべての支援は、アプリの成長にとって欠かせないものだ。たとえば、食品業界の人々は、商品の原材料や製造地の情報がパッケージに反映されるまでに、時には数カ月かかることを教えてくれた。つまり、まだ「Made in Canada」の表示がない商品でも、実際にはカナダから原材料を調達している場合がある。その場合、メープル・スキャンはそうした情報のズレを解消し、より早くその内容を利用者に伝える手助けをしている。

メープル・スキャンは公開からわずか数カ月で11万回以上ダウンロードされ、これまでに55万回以上のスキャンが行われている。アプリ公開当初にはカナダのApp Storeで6位にランクインした。また、最近さらに関税が課される可能性が発表されたことで、このアプリは再び注目を集めているようだ。

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