米国資産が新たな売り圧力を受ける中、投資家は再び波乱の週明けを迎えた。今回ボラティリティーの原因となりそうなのは関税ではなく、米国の債務を巡る懸念だ。

  米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは16日夕方、米国の信用格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAクラス)」に1段階引き下げたと発表した。ライバル会社に続いて格下げに踏み切ったムーディーズは、財政赤字が縮小する兆しがほとんど見られないことについて、歴代の米政権と議会に責任があるとした。

  アジア時間19日の取引で米30年国債利回りは心理的節目の5%に到達した。米国株先物とドルは共に下落した。

  10年国債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.52%。30年債利回りは約6bp上昇し5.00%。5%を上回れば、2023年に記録した水準が視野に入る。同年のピーク時には07年半ば以来の高水準の5.18%に達していた。

  今回の格下げはウォール街で高まる米国債市場への懸念を一層強めるリスクがある。米議会は財源の裏付けがない減税を検討している上、トランプ大統領は長年の貿易関係を覆し通商協定を再交渉しており、米経済の減速が予想される。

  フランクリン・テンプルトン・インベストメント・ソリューションズの副最高投資責任者マックス・ゴクマン氏は「財源の裏付けのない過剰な財政支出が今後さらに加速すると見られる中、米国債の格下げは驚くべきことではない」と指摘。「ソブリン投資家や機関投資家といった大口投資家がいずれも、安全資産として米国債以外の選択肢に移行し始める中で、債務返済コストは徐々に上昇し続けるだろう。これは残念ながら、米国債利回りの危険なベアスティープナーを引き起こし、ドルにさらなる下押し圧力をかけ、米国株の魅力を損なう恐れがある」と分析した。

US Yields Grind Higher for Third Consecutive Week | Traders are parsing economic data for signs of lasting slowdown

 

 

  ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、マイケル・シューマッハー氏らは顧客向けのリポートで、「ムーディーズの格下げを受けて、10年物と30年物の米国債利回りはさらに5-10bp上昇する可能性がある」と述べた。

  通常、国債利回りの上昇は通貨高につながるが、債務への懸念がドルに対する不信感を強める恐れがある。ブルームバーグのドル指数はすでに4月の安値近辺にあり、オプショントレーダーのセンチメントは過去5年間で最も弱気だ。

  4月にトランプ大統領の関税方針を受け、多くの投資家が米国資産のポートフォリオ上での位置づけについて見直しを迫られ、米国市場全体に売り圧力が広がっていた。その後、対中関税が一時停止されたことで売り圧力は一部で巻き戻されたが、債券市場の投資家の関心はすぐに米財政見通しにシフトした。

  ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、スバドラ・ラジャッパ氏は顧客向けリポートで「高めの金利が長期化すれば政府の純利払いコストと財政赤字をさらに増やす」と指摘。「長期的に、米国債の安全資産としての信頼が揺らげば、ドルや米国債を含む米国資産に対する外国からの需要にも影響を及ぼす」と述べた。

「信頼喪失」

  欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、仏紙ラ・トリビューン・ディマンシュの17日掲載のインタビューで、最近のドル安は直感に反するものだが、「金融市場の一部に見られる米国の政策に対する信頼喪失と不確実性」を反映しているとの認識を示した。

  米国債利回りの上昇は、政府の利払い負担を増大させるだけでなく、住宅ローンやクレジットカードなどの金利を押し上げ、経済の下押し要因となる可能性もある。

  ベッセント米財務長官は、米国政府の債務や関税によるインフレ圧力を巡る懸念を重大視しておらず、トランプ政権が連邦支出削減と経済成長に向けた取り組みを進めていると述べた。

  ベッセント氏は18日、NBCの番組でムーディーズによる格下げについて問われた際、「ムーディーズは遅行指標だ。 それが格付け会社に対する一般的な見方だ」と答えた。

 

原題:‘Sell America’ Is Back as Moody’s Pushes 30-Year Yield to 5% (抜粋)

 

(米30年国債利回りなどを更新します)

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