米国と中国は10、11両日にスイス・ジュネーブで行った貿易協議で、相互の関税率を一定期間引き下げることで合意した。両国が現地時間12日午前9時(日本時間同日午後4時)に発表した共同声明や記者会見で明らかにした。

  米中間の貿易摩擦の緩和に向けた動きで、世界の2大経済大国である両国は今後3カ月かけて相違の解消を図る時間的猶予を持つことになる。

Scott Bessent, right, and US trade representative Jamieson Greer in Geneva on May 12.

スイス・ジュネーブで記者会見したベッセント財務長官とグリアUSTR代表(5月12日)

Photographer: Fabrice Coffrini/AFP/Getty Images

  それによれば、米国は中国に対する関税率を今月14日までに145%から30%に引き下げる。これには違法薬物フェンタニルの流入に絡む関税も含まれる。中国は米国産品に対する関税率を125%から10%に引き下げる。いずれも期間は90日間。

  現地で中国側との協議を行い、12日に記者会見したベッセント財務長官は「双方ともにデカップリング(経済的分断)を望んでいないという点で一致している」と述べるとともに、「フェンタニル対策に関して非常に活発で実りある議論ができた」と語った。さらに、中国による「購入合意」につながる可能性にも言及した。

  ベッセント氏はまた、今回発表された関税率引き下げは、米国が全ての貿易相手国・地域に賦課している特定分野の関税には適用されず、トランプ政権1期目に中国に対して課した関税も引き続き維持されるとも述べた。

  90日間の期間終了後についての質問には、延長の可能性があると示唆。「他の全ての貿易相手国との協議と同様に、誠意ある取り組みと建設的な対話がある限り、我々は前進を続けるだろう」と述べた。

数週間以内に再会談

  その後ベッセント氏はCNBCとのインタビューで、「今後数週間に再会談し、より包括的な合意に向けて動き出すことになる」と発言。米国は中国との全般的なデカップリングは望まないものの、「戦略的に必要な部分でのデカップリングは目指している」とし、国内の鉄鋼や医薬品、半導体の各業界は守る意向を示した。

  続いてブルームバーグテレビジョンとのインタビューでは、中国に対する米国の関税が10%を下回るのは「考えがたい」と述べ、現在の水準の対中関税が「下限」だと主張した。

  ロイター通信が事情に詳しい関係者の話として報じたところによると、今回の合意には申告額が800ドル以下の場合に関税を免除するいわゆる「デミニミス(非課税基準額)」は含まれていない。

  12日の取引でアジアや欧州の株式市場は上昇し、米S&P500種株価指数先物は3%の大幅上昇となった。原油相場は値上がりし、米国債利回りも上昇。ドルは対円で2%余り上げて一時148円59銭と、1カ月ぶり高値を付けた。オフショア人民元は対ドルでさらに上昇し、約0.5%高となった。

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  米側の声明ではまた、「双方は経済・貿易関係を巡る協議継続のためのメカニズムを確立する」としている。

中国の反応

  中国は常に相互尊重の原則に基づいて米国との関係に対処してきたと、中国国営新華社通信は国家安全保障に関する白書を引用して報道。中国は米国との関係の安定的な発展にコミットしており、圧力や脅迫を用いることは中国に対処する正しい方法ではないとしている。

  今回の発表は、太平洋を挟んだ貿易の急減を招いていた関税戦争の緩和に向けた一歩となる。両国はこれに先立ち、協議で「著しい進展」があったと説明。それを受けて中国株は、トランプ米大統領が「解放の日」と呼んだ4月2日に広範な関税措置を発表して以降の損失を取り戻すなど、相場の押し上げにつながった。

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  ベッセント氏とともに協議に臨んだグリア米通商代表部(USTR)代表は、中国との間で一段とバランスの取れた通商関係を望む考えを表明した。

  ホワイトハウスは11日に発表した声明で、この合意を「貿易協定(Trade Deal)」としていたが、双方にとって受け入れ可能な目標が何なのか、その達成にどれほどの時間がかかるのかは引き続き不明だ。中国はこれまで、米国が今年課した関税全てを撤廃するよう要求しており、これは貿易赤字の削減や解消を目指す米国の目標とは両立しない。

  市場は進展を巡る最近の報道を歓迎したものの、過去の例を踏まえると、合意に達するとしても詳細な協定締結までには長い時間がかかる可能性がある。米中は2018年にも、一連の交渉後に対立を「一時停止」することで合意したが、米国はすぐにその合意から離脱し、その後さらに1年半余りにわたって関税賦課と協議が続き、最終的に20年1月の「第1段階」貿易合意の署名に至った。

  中国は結局、この合意に基づく購入義務を果たせず、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期に米国の対中貿易赤字は急増。現在の貿易戦争の土台が築かれることになった経緯がある。

原題:US, China Agree to Lower Tariffs in 90-Day Cool-Off Period (2)、US, China Likely to Meet Again in Next Few Weeks, Bessent Says、Bessent: US Aims to Decouple From China on Strategic Necessities、US-China Trade Deal Does Not Cover De Minimis Exemption: Reuters(抜粋)

(ベッセント氏インタビューや各者報道の内容を加え、相場を更新します)

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