ドイツ経済の競争力喪失が顕著だ。それが経済から活力を奪ってもいる。

  ドイツ連邦銀行(中央銀行)のデータによると、化学品メーカーのBASFや自動車部品のZFフリードリヒスハーフェン、家電のミーレなどの企業が国外に資源を移し、2010年以降の純資本流出額は6500億ユーロ(約107兆円)を超える。しかも、この約4割は、ショルツ首相率いる連立政権が発足した21年以降に発生した。

  米大統領選挙でトランプ前大統領が歴史的勝利を収めたことにより、ドイツ企業には関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかる。これが資本流出を加速させる恐れもあるだろう。選択肢に乏しく次期総選挙の予定まで1年を切っていた中、経済再生を巡る論争がもとでショルツ首相はリントナー財務相を更迭。ドイツは05年以来の早期総選挙に向かう見通しとなった。

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NATO Secretary General Mark Rutte in Germany

ドイツのショルツ首相

Photographer: Krisztian Bocsi/Bloomberg

  連立政権が劇的に崩壊した核心には、高いエネルギー価格と時代遅れの技術、過大な負担を課す官僚制度などドイツの問題がある。これが国内優良企業を外へと追いやり、外国資本の呼び込みを頓挫させてきた。

  世論調査でリードするキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のメルツ党首は今週初め、「経済は機能していない。巨額の資本が流出している」と指摘し、早期総選挙を呼びかけた。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、マーティン・アデマー氏は「経済政策を巡る目先の不透明性がすでに極めて高かったところ、ショルツ首相は早期総選挙を目指すに至った。こうしたドイツ政府の混乱によってさらに視界不良となり、企業に投資決定の延期を促すだろう」と指摘した。

  不満は政府に向けられているが、ドイツの問題は何年も前から蓄積され、資源の移転を助長してきた。

  送電網や路面電車、長距離電話線などドイツの革新を主導してきたエンジニアリング会社シーメンスは、2020年以降の投資額が300億ユーロに上るが、そのほとんどは国外での買収と事業拡大に振り向けられた。国内最大のプロジェクトは100年の歴史を持つベルリンの地区再開発だが、投資額は7億5000万ユーロほどでしかない。

Siemens Energy AG Gas Turbine Factory With Green Shift Cutting Jobs

シーメンスが主導するベルリンの再開発

Photographer: Liesa Johannssen-Koppitz/Bloomberg

  「実際、ドイツへの投資を支持できる材料は何もない」と、シーメンスの税務担当グローバルヘッド、クリスティアン・ケーザー氏は10月半ばに同国議会の公聴会で述べ、低成長と重税を挙げた。「当社の最近の投資が外国で行われているのは、それが理由だ」と説明した。

  シーメンスは先週、米ソフトウエアメーカーのアルテアエンジニアリングを100億ドル(約1兆5300億円)で買収する合意を締結。同社にとって過去最大級の買収で、外国志向の姿勢が表れた格好だ。

  資本流出は弱まる兆しが見えない。自動車大手のフォルクスワーゲンは国内事業の縮小に動き、巨額の補助金を受けるインテルのドイツ東部工場のプロジェクトも問題に突き当たっている。

  「これまでのドイツのビジネスモデルは崩壊した。企業はますます外を見るようになっている」と、ケルン経済研究所のエコノミスト、クリスティアン・ルシェ氏は指摘した。

  ドイツが国内外の投資家を引きつけ流れを変えることができなければ、停滞は長引き、他の先進国にいっそう後れを取る恐れが生じる。それが有権者を動揺させ、政治的な混乱を繰り返すという悪循環も生まれる。

  巨額の資本流出を食い止めるには、行動を急ぐ必要がある。連銀によると、ドイツ企業が2010年以降に外国に投資した額は1兆7000億ユーロに上る。流出は脆弱(ぜいじゃく)なセクターで強まっている兆しがあり、エネルギー集約型の企業は22年の対米投資額が約700億ユーロと、10年前の3倍余りに増加した。

  近く退任するBASFのマーティン・ブルーダーミュラー最高経営責任者(CEO)は「他地域に比べて、欧州は競争力を失ったと実感できる」と、今年前半の決算発表で述べ、「欧州の中でも、ドイツはとりわけ競争力を失った」と続けた。

  特に問題視されるのは官僚制度だ。何度となく簡素化の試みはあったものの、ドイツ企業が影響を受ける規制はおよそ5万ページと、10年前の3万4000ページからかえって増加した。Ifo経済研究所による1700社余りを対象とした最近の調査では、この問題を理由に過去2年間で約半数の企業が国内でのプロジェクトを延期した。

原題:The €650 Billion Exodus at the Heart of Germany’s Turmoil (1)(抜粋)

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