「夏の終わりまでにアメリカは民主主義国と言えなくなる」その理由は…【報道1930】

「夏の終わりまでにアメリカは民主主義国と言えなくなる」その理由は…【報道1930】

トランプ大統領は考えを変えたのか…“相互関税”の発動を突如90日間延期した。株価や米国債の価値低落が影響したかのように見えるが、中国などにはさらに報復の報復として125%という高い関税を課した。GDP1位と2位の国同士のチキンレースの様相は世界経済に悪影響を与えインフレが進むのは間違いない。さすがにアメリカ国民も気づいたのか…最近トランプ人気に陰りも見えて来た。

「共和党候補がいくら選挙区に尽くしてもこの“トランプ・ペインン・トレイン(=痛みの列車)”から逃げられない」

“相互関税”を一端は延期したもののあくまで延期。90日後に再び復活することもある。トランプ氏が“改心”するとしたら何なのかを考えてみた。

笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー
「中間選挙で民主党に過半数取られたら、弾劾を受ける場合があるわけで、それだけは避けたいんだろうと私は思う。やはり保身が第一に来るので…。この先かなりトランプ氏が憲法違反のようなことをやる可能性があるので…。そういうのに対して下院で過半数を民主党が持ってれば弾劾決議できるわけですよ。それをトランプ氏は一番気にするんじゃないかと…」

トランプ氏が最も心配しているのは選挙。その心配を煽るような事態がここのところ相次いでいる。先月ウィスコンシン州であった最高裁判所の判事選挙に肩入れしていたのはイーロン・マスク氏。地元の産業であるチーズの被り物まで身につけ盛り上げた。

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被り物だけではない。金も70億円を使ったという。共和党側の候補を支援する人の中から2人に1億5000万円を渡すキャンペーンも行った。しかし結果は民主党側が10ポイントの差で勝利。この選挙の2日後トランプ氏はマスク氏が政権を去ることを匂わせ、逆にマスク氏は「欧州の関税はゼロにすべき」と発言した。

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そして重要州ペンシルベニア州でも。州議会上院議員選挙で136年ぶりに民主党の候補者が勝った。トランプ政権の勢いが陰りを見せていることの象徴とも言われている。

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ペンシルベニア州 元民主党トップ T.J.ルーニー氏
「トランプ氏が挑戦的姿勢を取り続ける限り民主党は有利な立場に立ち続けるだろう。民主党はトランプ大統領を“不利な要素”として活用する術を見出した。我々はトランプ氏を対立軸とした…(中略)共和党候補がいくら選挙区に尽くしてもこの“トランプ・ペインン・トレイン(=痛みの列車)”から逃げられない。共和党候補者たちは全国区でこの列車に轢かれるのだ」

“関税”というトランプ氏の政策が民主党の追い風になるという見方は渡部恒雄氏もうなずく。

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笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー
「物価高、インフレは民主党にとっては二重にアピールできる。“トランプ氏はウソをついた”これが一つ。それから“現職の政権がやってることは間違っている”とも言える。物価は所得が低い人ほど、株価は所得が高い人ほど影響を受けるんです」

「トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」

選挙に絶対負けたくないトランプ氏が手をつけた“憲法違反”かもしれないことがある。ある大統領令への署名だ。それは“選挙の有権者登録に市民権の証明書類の提示を義務付ける”というものだ。戸籍が整備された日本では理解しにくいが、この“市民権の証明”というのがアメリカでは決して簡単ではない人が少なくないらしい。米選挙監視団体の訴訟部門担当者に話を聞いた。

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『キャンペーン・リーガル・センター』ブレント・ファーガソン氏
「パスポートを持っているのはアメリカ人の半分で、残りの半分は容易に取得できない人たちだ。今回の大統領令ではほかの書類(出生証明書など)も市民権の証明として認められる可能性がある。但しその基準があいまいなのだ…(中略)本質的には(パスポートを持っていない人が多い)民主党支持者が投票しづらくなるようにするものだ。トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」

市民権の証明書類をすぐに用意できない人は有権者の9%(約2000万人)に上るという。

トランプ氏の言い分はこうだ。

「この国は偽の投票や不正な選挙のせいでとても病んでいる」

確かに不法移民など本来投票権を持たないものが不正に投票した事例はあるが、選挙結果が変わるほどの数ではない。

この事態についてかつて日本外国特派員協会の会長を務めたジャーナリスト、ジェームズ・シムズ氏は言う…。

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ジャーナリスト ジェームズ・シムズ氏
「私はパスポートを提示して投票してます。大昔は電気料金の請求書を見せて住んでることが証明できればよかった…(中略)これは有色人種特に黒人の票を抑えたい。黒人はほとんどが民主党に入れますから、それを抑えたい。…例えば黒人は病院で生まれていない場合がある。その場合出生証明書はない。これは人種に対する劣悪な政策です。投票権を奪いたいという…」

同志社大学の三牧聖子教授は、不正選挙はなくすべきなのでトランプ氏の言い分は正しいと言いつつ、この大統領令は本質的には権力闘争だと話す。

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同志社大学 三牧聖子教授
「女性の間でも姓が変わった場合どうなるんだ(出生証明書と)IDが違うとか…。7000万人ほどが姓を変えている。この法律では、許可を出した側の罰則も重いんです。なので管理する側もちょっとでも怪しい場合はダメにしちゃう。実際に共和党が握っている選挙区では投票箱の数を減らすとかドライブスルーをなくすとか…」

つまり生活に余裕のある共和党支持者には関係ないが、投票所が遠くなれば投票に行けない人が民主党支持者には多くいるということらしい。

番組のニュース解説、堤氏は証明書類が免許証なのか出生証明なのか何なのかを明確化していないことが問題だと指摘する。

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国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「明確化しないということは現場の恣意的な運用を認めてしまう。例えば投票所にいる人がどちらかの党の支持者であれば、非常に恣意的運用が偏ってしまう。だから非常に差別的…」

「夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなる」

強権を発動し続けるトランプ大統領。イエスマンで固めた人事によりトランプ氏を止める人もいさめる人もいない。まるで専制国家だ。スウェーデンの調査機関は毎年、民主主義についての調査を行っている。最新の調査報告書ではアメリカの民主主義の低下が懸念されている。その調査機関の代表はこう表現している。

『V-Dem』創設所長 リンドバーグ氏
「アメリカの政府体制は来年の報告書では間違いなく格下げになるだろう。現状のペースで行くと夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなるだろう」

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夏の終わり…、それほど先のことではない。

(BS-TBS『報道1930』4月7日放送より)

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