カナダカナダの医療制度は多くのアメリカ人にとって魅力の1つとなっている。Bruce Yuanyue Bi/Getty Imagesグレース・ハーンさん(36)は2023年、大学院進学とアメリカの政治から逃げるためにカナダに移住した。ハーンさんは友人や家族にもカナダへの移住を試す道を開きたいと考えている。ナショナリズムが高まるカナダで、ハーンさんは自分がアメリカ人であることを意識するようになった。

※この記事は2023年9月、アメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーからカナダのトロント大都市圏(GTA)に夫とともに移住した事務職のグレース・ハーンさん(36)への取材をもとに聞き書き、編集したものです。

「どうして移住したの?」と聞かれたら、わたしは「自分の国が何をするか、ちょっと怖くて…」と答えるしかない。

ウィスコンシンは今、本当に進歩的だけれど、共和党と民主党それぞれの支持率が拮抗するパープル・ステートだ。だからこそ、わたしは「もし誰かが権力を奪取して、法律を破り始めたらどうなる? わたしが望む人物を誰かが権力の座から追い落として、法律が全て変わってしまったらどうなるの?」と感じていた。

最後の決定打は「ロー対ウェイド判決」が覆されたことだった。わたしたちは、自分たちの身体の大半ではなく、全てが医療を受けられる国に移住しようと考えた。

カナダに移住すると友人たちに伝え始めると、「自分たちも考えるべきなのかも… 」という反応が返ってきた。これには少し驚かされた。自分たちの決断はクレイジーと言ってもいいほど極端なものだと思っていたのに、わたしが話した相手は皆「確かに… 自分にもできるかな」などと言うからだ。

わたしはパスポートを用意して遊びに来るよう、人々に勧め続けている。近くを案内するし、移住生活がどんな感じか話すよ、と。彼らが必要とするなら、わたしは”足がかり”になりたいと思っている。

学生ビザが一番かもしれない

夫とわたしはラッキーだった。移住できるだけのお金を貯めていたし、わたしたちの仕事もミルウォーキーに縛られていなかったからだ。家も買っていなかったので、友人や家族のように、経済的にも法的にもミルウォーキーに縛られることがなかった。

今はトロント大都市圏のトロントとストラットフォードの間に住んでいる。交通事情を考慮すると、トロントからは2時間半~3時間くらいの距離だ。

皆、わたしが「北へ」移住したと言うけれど、実際は湖を挟んで東に引っ越した。わたしたちの両親から雪が降ったと聞いた2日後にはこちらでも雪が降る。

わたしは1年間の大学院課程に進んだ。その方が圧倒的にビザが早く、多少容易になるからだ。ティーチング・アシスタントとして多少の収入も得たかった。夫は就労ビザを取得した。わたしは大学院を修了してすぐに「ポスグラ(PGWP)」と呼ばれる就労ビザを申請しなければならなかった。

夫とはビザの取得を容易にするために結婚した。夫とは13年近く一緒にいて、わたしたちは書類にサインしていないだけだった。国をまたいで移住するとなった時に「法的に正式にした方が国境を越えやすいね」となった。

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家と仕事は見つけるのが大変

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