欧州連合(EU)は全欧州的な防衛を強化するため、1500億ユーロ(約23兆4000億円)の融資を提案する予定だ。トランプ米大統領が欧州大陸への安全保障提供を後退させていることを受け、長年にわたる防衛費の過少投資を補う。
EUの行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長が4日ブリュッセルで発表した。
同委員長はEUが財政規則の適用を例外的に免除するエスケープクローズ(免責条項)を発動することを提案するとも述べた。これにより、各国はペナルティーを課されることなく、4年間で6500億ユーロを防衛費として追加支出することが可能になる。
各国政府がこれを最大限利用すれば、新たな融資と組み合わせることで、総額8000億ユーロ近くを動員できる見込みだという。
フォンデアライエン氏は記者団に、「われわれは再軍備の時代に突入した。欧州は防衛費を大幅に増やす準備ができている」と述べた。
ユーロは一時0.7%高の1.0559ドルと昨年12月以来の高値を付けた。
欧州債は上げを縮め、ドイツ10年債利回りはフォンデアライエン氏が発表する前の2.43%前後から2.47%付近へと上昇した。

フォンデアライエン欧州委員長
Source: Bloomberg
新たな融資制度は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時に加盟国の時短労働制度や類似の措置を支援するために設定されたものと同様となる見込み。事情に詳しい関係者によると、欧州委が挙げた法的根拠は、加盟国による全会一致の支持を必要としないことを示しており、ハンガリーなどの阻止を回避できる。
EUが新たな借り入れを推進して返済不要の助成金を提供しようとすれば、27カ国の支持を得る必要があり、大きなハードルとなる。
欧州は数千億ユーロの追加資金動員で、重要な局面にあるウクライナへの支援を継続しようとしている。トランプ米大統領がウクライナへの軍事支援の一時停止を命じ、欧州の支援はいっそう緊急の度合いを増した。
フォンデアライエン氏は加盟各国に、短期的な国防強化の考え得る選択肢を列挙した書簡を送った。この提案は6日に開催されるEU首脳会議で議論される予定。
ブルームバーグが入手したサミットの結論に関する最新の草案には、詳細なイニシアチブへの言及はなく、代わりに「緊急の取り組み強化を求める」とだけ記載されている。
事情に詳しい関係者が匿名を条件に述べたところによると、首脳らは各自の案を検証し、それらの案のさらなる検討を欧州委に指示する見通し。早ければ21-22日に予定される次回の会議で具体的な提案が提示される見込みだという。
フォンデアライエン氏の書簡では、資本市場で調達した民間資金の動員、他のEU基金の防衛目的への再配分、欧州投資銀行(EIB)の融資範囲を拡大し現在除外されている一部の軍事プロジェクトを含めるなどの選択肢も挙げられている。
ブルームバーグが入手した書簡によると、EIBは軍事利用に特化したプロジェクトへの融資権限拡大を別途提案する予定。これによりEIBの融資に防衛支出がより多く含まれることになる。
ドイツ連銀、借り入れ上限緩和を提言
また、ドイツ連邦銀行は同国が憲法で定める借り入れ制限の緩和を勧告した。この勧告に従うと、2030年までに最大2200億ユーロの支出余力が追加される計算で、インフラや防衛費の増額に充てることが可能になる。
ドイツ連銀は4日公表したリポートで、いわゆる「債務ブレーキ」の選択肢について論じた。その上で、構造的財政赤字の純借り入れ上限を現在の国内総生産(GDP)比0.35%から最大で1.4%まで引き上げることを提言した。
ただ、この上限は公的債務残高がGDP比60%を上回っているか、下回っているかで変化すると、連銀は説明。欧州連合(EU)はGDP比60%未満の公的債務を健全な財政の目安としている。
連銀のナーゲル総裁は、この債務上限引き上げで「緊急に必要な投資を後押しすると同時に、健全な公的財政を維持できる」と発表文で述べた。
原題:EU Proposes €150 Billion Defense Loan as Trump Pulls Back (1)、Bundesbank Urges Looser German Debt Rules to Free €220 Billion(抜粋)
(ドイツ連銀の借り入れ制限緩和について最終4段落に加えます)
