「イタリアは夢と美の国」と評した熱烈なイタリア好きに、デンマークの童話作家のアンデルセンがいます。17世紀から19世紀の初めまで、多くのヨーロッパの裕福な貴族の子弟や、アンデルセンのように国を代表して選ばれた優秀な若者たちは古代ローマやルネサンス、バロックの聖地イタリアを目指し歴史や芸術を学びました。今回訪れた先はプーリア州。一昨年からアジア・ラバーMusic & Film フェスが開催され、昨年6月にG7サミット開催、同7月にはアッピア街道がユネスコ世界遺産に登録されたホットなエリアです。
取材協力:ENIT SPA(イタリア政府観光局)、PUGLIAPROMOZIONE(プーリア州観光局)
歴史的建造物と現代建築が立ち並ぶ州都
プーリア州はブーツの形をしたイタリアのかかとにあたる部分に位置し、アドリア海とイオニア海に挟まれた海洋都市です。立派なオリーブの樹がはるか遠くまで続き、丘の上にはユニークでかわいらしい街が広がります。そこは豊かな土地と歴史と文化があり、魚介の料理天国でもあります。
歴史的建造物と迷路のような小路が続く旧市街と、新しい現代建築が立ち並ぶ新市街が融合した州都バーリ。州の玄関口として交通の要所にもなっています。その歴史は古く、紀元前の古代ギリシア、古代ローマにさかのぼります。中世にはビザンツ、イスラム、ノルマン、そしてフランスのアンジュー家やスペインのアラゴン家など多くの外国からの支配を受け、その名残は各所で見ることができます。
バーリの港サンタクロースはトルコ出身だった!?
ではここからは、プーリア州内でおさえておきたいスポットについて紹介します。
サン・ニコラ聖堂(Basilica di San Nicola)
サンタクロースの由来となった聖人、聖ニコラ(サン・ニコラ)の聖遺物が祀られているサン・ニコラ聖堂は、プーリア・ロマネスク様式のバーリのシンボル的教会です。赤い上下の服に白い豊かなお髭をたくわえたサンタさんのイメージは、北の国ですっかり定着していますが、実は現在のトルコで生まれ様々な伝説をのこした聖人でした。海運の守護聖人でもあり、この海運都市バーリの守護聖人となったのです。
サン・ニコラ聖堂
バーリの旧市街の路地(Il centro storico di Bari )
まるで迷路のような路地は、洗濯物を風にたなびかせながら今も中世のたたずまいをのこしています。女性たちがテーブルを通りにだして耳たぶのような形のオレキエッテとよばれるこの地の伝統的パスタを朝から晩まで練っています。
オレキエッテを練る女性たち
カステル・デル・モンテ(Castel del Monte)
バーリ郊外レ・ムルジュの高原に忽然とそびえ立つ八角形の謎の城。ドイツ、ホーエンシュタウフェン家のフリードリッヒ2世(フェデリコ2世)が13世紀に建てました。王冠を模したような八角形の塔に八角形の中庭。彼の宮廷には国際色豊かな多くの学者が集いました。学問好きなフリードリッヒ2世らしい、ユニークなスタイルの城はイスラムとオリエントの建築様式を取り入れ、地中海文明の知識と発想のたまものです。こちらは1996年に世界遺産に登録されています。
カステル・デル・モンテ。外からみても中庭から空を見上げてもやはり八角形

ポリニャーノ・ア・マーレ(Polignano a Mare)
世界有数のリゾート地であり、歌手の宇多田ヒカルさんが挙式をしたことでも有名になりました。断崖の浸食された岩肌の合間にみえる海はまさに絶景。また、ビーチ以外にも見どころが。イタリア現代美術のアーティスト、ピーノ・パスカーリ(1935-68)の美術館があります。早世した息子の作品を両親が遺贈し、現在は財団によって運営されています。こちらも海岸沿いにある見晴らしがよく気持ちのよい空間。日本では豊田市美術館(愛知)などに作品が所蔵されています。
イタリアが誇るグラミー賞受賞歌手ドメニコ・モドゥーニョ(1928-94)の出身地でもあります。誰もが一度は聴いたことのある曲「ヴォラーレ」。その歌詞のイルミネーションが頭上に光る通りを歌いながら歩いてここは陽気にサヨナラとしましょう。
海岸に面した絶好のロケーションのピーノ・パスカーリ財団美術館
「ヴォラーレ」の歌詞のイルミネーションが続く
アルベロベッロ(Alberobello)
1996年に世界遺産に登録された、真っ白な壁にとんがり屋根の「トゥルッロ」(単数形。複数形はトゥルッリ)が並ぶ街、アルベロベッロ。驚くべきことにこの可愛いトゥルッリは、壁や屋根はすべて接合剤を全く使わず、1枚ずつ石を重ねて積み上げられています。簡単に壊すことができ、その由来は、領主が農民を簡単に追い出せるようにとか、課税対象となる屋根つき家屋に税の徴収人がくると屋根を取ってしまい徴収から逃れるようにしていたとか、諸説あるようです。近年はだいぶ減ってきてはいるそうですが、それでもまだこの周辺には1000以上ものトゥルッリが見られます。
世界遺産アルベロベッロのトゥルッリ
(左)旅する猫と、(右)店番する猫
オストゥーニ(Ostuni)
眼下にオリーブ畑が広がる山の上の白い街。石灰で白く塗られた壁面の続く坂の上の小径を歩いていくと、その頂上には美しいバラ窓をもつ大聖堂が鎮座しています。この日は結婚式が行われ、聖堂前の広場にいる大勢の人たちも幸せな気持ちに包まれているようでした。
オストゥーニの街
大聖堂
ロコロトンド(Locorotondo)
ロコロトンドは、丸い場所という意味。「イタリアの最も美しい村」(イタリアの民間団体による認定)に登録されています。まるで映画のセットの模型のように白く美しい街です。
意匠をこらした鉢植えが家々のバルコニーや窓、壁面に飾られ、家の番地プレートもかわいらしいデザインに。
ロコロトンドの街
レッチェ(Lecce)
古代ローマの遺跡から中世やバロックの建築までがまるでかたつむりのようにぎゅっと渦巻いている壮麗かつ豪華な旧市街。中でもバロック建築に囲まれたドゥオーモ広場はタイムスリップしたかのような感覚に。
ドゥオーモ広場
![イタリアの“かかと” プーリア州の食・歴史・アートを訪ねて | 朝日新聞デジタルマガジン&[and] イタリアの“かかと” プーリア州の食・歴史・アートを訪ねて | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]](https://www.walknews.com/wp-content/uploads/2025/03/d091235f0234574aa288a32758db1f9e-1024x683.jpg)