南海トラフ地震に備えて気象庁が発表する「臨時情報」の認知度が、3割にとどまっている。想定震源域で一定規模の地震が起きた時、時間差で発生する2度目の大地震への注意を喚起する目的で2019年から運用が始まったが、まだ一度も発表されておらずリスクを誤解している人も多い。4月には想定震源域の愛媛県沖で最大震度6弱を観測する地震があり、理解の浸透が急がれている。(平井宏一郎)最短2時間後 臨時情報は、想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が起きた場合などに気象庁が発表する。
発生から30分以内に「臨時情報(調査中)」を出し、専門家が2度目の大地震が起こる可能性を検討。リスクに応じて、最短2時間後に「巨大地震警戒」や「巨大地震注意」を呼びかける。
「警戒」の場合、国が指定する太平洋側の14都県139市町村では、地震が起きてからでは短時間での避難が難しい住民らに1週間程度の事前避難を呼びかけるなどする。「注意」では、すぐに避難できる準備をして日常生活を送ることなどを求める。 南海トラフを震源とする地震では、1944年の昭和東南海地震(M8・2)、1854年の安政東海地震(M8・6)で、それぞれ2年後、32時間後にM8以上の地震が続いて起きたとされる。これを踏まえ、2度目の大地震での被害を軽減する狙いがある。「予知のよう」 内閣府が2023年に南海トラフ地震の被害想定地域の約1万6000人を対象に実施した調査では、臨時情報を「知っている」と答えた人は29%。「詳しく知らない」「知らない」は計71%に上っていた。
震度6弱を観測した地震で災害対策本部に集まる愛媛県職員ら。震源は南海トラフ地震の想定震源域内だった(4月18日未明、県庁で) 事前避難の対象地域の指定は全国でほぼ完了したが、55%は住む地域が対象かどうか「わからない」と回答した。 リスクについても、正しい理解が浸透していない。 内閣府は「巨大地震警戒」の発表時、実際に1週間以内に巨大地震が起こる確率を6・8%、「注意」では0・4%と算出している。 しかし、関西大の林能成教授(地震防災)らが昨年行ったインターネット調査(対象・8都府県3200人)では、「注意」時の発生確率を回答者の3割以上が「80%以上」、6割以上が「50%以上」と答えた。林教授は「臨時情報が予知のように思われており、発表すると社会の混乱を引き起こす恐れがある」と指摘する。住民向け勉強会 自治体も対応を模索中だ。 愛媛県では今年3月、臨時情報発表に備えた全市町参加の訓練を実施した。 「巨大地震警戒」の発表を想定し、県から市町に2週間程度は大規模地震に備えた態勢をとるよう連絡。市町が事前避難を呼びかけるといった手順を想定しているが、具体的に決まっていないことも多い。 「注意」発表時の過剰な反応を懸念する声もある。 内閣府が挙げる対応は▽家具の固定▽防災グッズの準備▽家族の安否確認の方法の確認――だが、愛媛県愛南町の担当者は「現状で防災無線で流せば、『注意』でも勘違いして避難が必要と考える住民も出るかもしれない」と悩む。 こうした中、愛知県豊橋市などは先進的に住民への啓発を進めている。同市と連携して少人数の住民向け勉強会を開催している名古屋大の平山修久准教授(地域減災)は「行政は、まず丁寧に地域ごとに説明し、発表時の対応を一緒に考えることが大切だ」と話している。想定震源域でのM6以上は2回…運用開始後 4月17日に愛媛県と高知県で震度6弱を観測した地震は、南海トラフ地震の想定震源域での地震だった。 地震の規模はM6.6で、臨時情報の基準には達しなかったが、2019年の運用開始後、想定震源域内でM6以上の地震が起きたのは2度目だ。 1度目は22年1月22日に起きた日向灘を震源とする地震(M6.6)で、大分市や宮崎県延岡市などで最大震度5弱を観測した。
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