インタビューに応じるカインズの高家社長(東京都新宿区で)インタビューに応じるカインズの高家社長(東京都新宿区で) カインズは、ホームセンター業界の草分け的な存在で、北関東を中心に、東日本や近畿地方で業務を展開している。2022年には、東急ハンズを買収した。コロナ禍には巣ごもり需要を取り込んで成長し、買い物を効率化するデジタル化にも力を入れている。高家正行社長に話を聞いた。(聞き手・貝塚麟太郎)

「ターゲットを絞り、お金と人をかけて研究開発」「本業で稼げる会社にしたいというのが一番」…三菱ケミカルグループ・筑本学社長

コロナ特需はげ落ちの中で善戦 ――足元の事業環境をどうみるか。 「結構長い間、10年くらい頭打ちかなという気もする。ホームセンターの市場規模は4兆円くらいにとどまっている。人口が増えないことも影響しているのではないか。 コロナで、業界は特需があった。衛生用品を始め、巣ごもり需要も活発だった。逆に言えば、この特需がはげ落ちてきたので売り上げが落ちている会社は多いと思う。24年2月期決算がまとまったが、わが社はおかげさまで、既存店ベースで前年を上回り、善戦した。 小売業が直面しているのは為替だ。円安の影響は輸入商品の金額が多い会社ほど、ダメージを受けている。3年くらい前と比べて、30円も円安・ドル高に振れている。為替予約を使っても逃れようがない。ざっと計算しても、1円円安になると、数億円のインパクトがある。 ホームセンターの商材は海外から仕入れているところが多い。ダメージを受けている会社も少なくないのではないか。日本以外の国に進出して為替の影響を小さくするという考えもあるが、なかなか難しい。一朝一夕にはいかない。日本の店舗をそのまま海外に持っていけばいいというわけでもない。 企業努力で影響を小さくするために、メーカーと協力してコストを下げるにはどうしたらいいか、物流費を下げるにはどうしたらいいかということをやり続けるしかない」西日本では着実に展開したい ――出店についての考えは。 「国内のパイは頭打ちだが、出店の余地はある。約240の店舗を展開している。郊外に大きな店舗と広い駐車場を設けるのが標準的なパターンだ。これだと、(出店場所が限られる)首都圏はカバーできない。そこで、通常店舗の半分から3分の1の広さの店を商業施設に出店する実験をしている。 西日本は、(地域に集中して出店する)ドミナント化が進んでいない地域がたくさんある。着実に展開していきたい。優先的に出店したいエリアは明確にしており、結果的に、出店は西日本が多くなる」 ――商品戦略は。 「大きく分けて、価格を訴求する商品と、価値を訴える商品とがある。価格を重視する商品は、衣料用洗剤といった日常的に使うもので、競合を意識しなければならない。 価値を求める商品は徹底的にこだわりたい。いずれも明確に打ち出そうとすると、現在、金額ベースで全体の約3割程度を占めるプライベートブランドの比率が大きくなっていくだろう」デジタルを駆使した店舗も ――デジタル化に力を入れている。 「数年前に、新店の出店ペースを抑えてデジタルやIT分野への投資に回してきた。今後はデジタルを駆使した店舗も展開できると期待している。 ファインドインカインズという店内マップは、その最たるものだ。売り場は広いので、ほしい商品を見つけるのが大変だというお客様の声があった。スマートフォンのアプリを使って商品を読み取ることができるポケットレジを始め、レジを使わなくても会計を済ませることができる。 デジタル化には、面倒なことの解消と、店に楽しさを作るという切り口がある。今後もやり続けていく領域だと思っている」 ――物流対応について。 「(トラック運転手の残業規制が強化される)2024年問題を見越して、三重県桑名市に物流拠点を3月に本格稼働させた。それまでは、海外から仕入れた品物を保管しておく機能が群馬県太田市にしかなかったが、西日本の店舗には、桑名の拠点から配送できるようになった。 数量が多くない品物は、メーカーの倉庫を回って集めるという実験もしている。24年問題で、コストが増えることは覚悟しているが、なんとか吸収していきたい」 ――買収したハンズの状況は。 「カインズもハンズも、目指していることは同じで、暮らしをよくしていこう、快適にしていこうということだ。店の出し方や大きさは異なる。アプローチが違うので、それぞれの良さが、よりとがっていけばいい。 ハンズはデジタル化が進んでおらず、コロナ禍に業績はダメージを受けた。(買収後の)2年間で財務内容も良くなってきた。これから積極展開する段階だ。ハンズは駅前などに出店できる。今後は積極的な海外展開も考えられる」
 
◆高家正行氏(たかや・まさゆき)
 85年慶大経卒、三井銀行(現三井住友銀行)入行。主に工場の自動化向けや金型の部品製造を手がけるミスミグループ本社社長などを経て、2016年にカインズ取締役就任。19年から社長。テニスが趣味で、週に1回以上はラケットを握る。東京都出身。

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