ニッセイ基礎研究所 天野馨南子さんに聞く、自治体の婚活支援天野馨南子氏(ニッセイ基礎研究所提供)天野馨南子氏(ニッセイ基礎研究所提供) 富山県は人口100万人を割り、大きな転機を迎えている。未婚の若者が増えたことに伴う少子化、そして若い女性の転出超過への対策は喫緊の課題だ。ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子さん(県政エグゼクティブアドバイザー)に、自治体が対策を進める際に見落としがちなポイントを尋ねた。(聞き手・川尻岳宏)

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対象年齢の点検を 自治体は少子化対策として婚活支援サービスや相談会などを行っています。これ自体は悪くないのですが、本当に少子化対策につながっているのかは考えてみる必要があります。 自治体の婚活サービスで一番問題になるのは加入者の年齢です。私は2017年から愛媛県の結婚支援センターでアドバイザーを務めていますが、登録者で多いのは35歳以上。ただ統計上、初婚同士に限ると、女性の9割、男性の8割が34歳以下です。35歳以上を集めても、少子化対策にはなりにくいのです。 平均初婚年齢は男女とも30歳近くに上がっていますが、これは中高年で結婚する人が増えて平均を引き上げているからで、ピークを見ると昔から男女ともに27歳と変わっていません。ですから、少子化対策としての婚活支援は、この世代をいかに多く集められるかが勝負になります。 仮に40歳の人に子どもができたとしましょう。そうすると、子どもが30歳の時に親の介護が発生する可能性があります。30歳は子育てを始めるのに一番良い時期ですが、その子どもが介護と自らの子育ての板挟みになります。出産が早ければ、逆に我が子の子育てを手伝うこともできます。 自治体は婚活支援が中高年支援になっていないか点検し、必要なら方針を転換してもらいたいです。同世代が基本 県は今年度から婚活支援サービス「とやまマリッジサポートセンター」の20歳代登録料を無料にしました。これは妥当です。ニュースでは“年の差婚”が話題になりますが、実際には年齢差が3歳以下の夫婦が7割を占め、平均の年齢差は1・5歳程度です。少子化対策としての結婚支援であれば、20歳代同士の出会いを増やすことが重要です。 若者同士をマッチングさせる方法として、朝日町が行った「メタバース婚活」は効果的です。ITを活用した瞬間に40歳以上は参入しにくくなります。結婚相手を決める上で、お互いの体力やデジタル能力が同じことは必須です。最新技術を入れると「若い世代とやりとりする覚悟がない人」をふるいにかけられます。 氷見市や小矢部市では学校の同窓会や婚活イベントの開催経費を補助しています。「男女混在のイベント」という条件はよいのですが、年齢階層をもっと細かく分けてはどうでしょうか。過去に東北や九州の自治体で起きた事例ですが、40歳以上の男性が20歳代の女性にばかり声をかけ、女性から「もう二度と来ません」との声が寄せられました。 やはり、結婚は同年齢・同世代が基本です。開催前にマッチング可能な男性の年齢を女性に聞き取るなどして、効果の高いイベントにしてほしい。男性側からは「差別だ」と言われるかもしれませんが、目的が少子化対策なら限られた公費で最大限の効果を上げなければなりません。 40歳を過ぎてからの婚活は妊娠・出産を前提とするものではなく「おひとりさま対策」です。「20歳代からの婚活なんて早い」「35歳を過ぎても子どもは授かる」という考えに落とし穴があると知ってもらうため、「教育」を進めることも行政の大切な役割でしょう。

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