受け入れは3自治体目
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場を巡り、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が10日、選定の第1段階となる「文献調査」の受け入れを表明した。これまで調査が行われてきたのは寿都、神恵内の道内2町村のみ。道外の自治体が新たに議論に加わることを、両町村長は前向きに受け止め、さらなる全国への広がりに期待した。 最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は2020年11月、両町村で調査を開始した。その後目立った動きはなかったが、23年9月に長崎県対馬市議会が調査受け入れを求める請願を採択。だが比田勝尚喜市長は拒否を表明し、議論は引き続き道内だけで進んでいた。 寿都町の片岡春雄町長は「3年半、同じ思いの首長が早く出てきてほしいと思っていた。さらに新たな調査地が出てきてもらいたい」と述べた。神恵内村の高橋昌幸村長も「最終処分は日本全体で必ず解決しなければならない重要な課題。全国で自分事として捉え、関心が高まることを期待する」と受け止めた。
文献調査は論文やデータの収集にとどまるのに対し、第2段階の概要調査はボーリングをして地質を調べるなど踏み込んだ内容となる。概要調査への移行判断について、片岡町長はこれまで住民投票を選択肢に挙げ、実施には両町村に続く「第3の自治体」の出現という条件を付けていた。今回、玄海町の「参入」で環境が整った形だ。片岡町長は10日、読売新聞の取材に住民投票を行う考えを明らかにした。鈴木知事は「概要調査」移行に反対 ただ、概要調査に進むには地元の首長のほか、知事の同意が必要となる。道は核のゴミを「受け入れ難い」とする条例を00年に制定。鈴木知事は道条例を根拠に調査に反対の姿勢で、10日の定例記者会見でも「国民的議論が必要。そういう状況にはなっていない」と述べ、改めて反対する意向を示した。両町村長が同意しても知事の考えが変わらない限り、両町村で概要調査を行うのは難しい状況だ。 玄海町の受け入れ表明について、北海道大の大沼進教授(環境社会心理学)は「一歩前に進んだとは言えるが、玄海、寿都、神恵内の3町村とも本州の都市部から離れており、原発の受益者である都市住民の関心が低い実情が変わったわけではない。国は、玄海町長の判断を契機とし、さらに幅広い地域での議論へつなげるよう取り組むべきだ」と指摘する。住民「仲間増えよかった」「選択肢増よいこと」 玄海町長の調査受け入れについて、寿都町と神恵内村の住民からは様々な声が上がった。 「対話の場」の委員を務めてきた寿都町の家電販売業、田中則之さん(68)は「仲間が増えてよかった」と述べた。原発に隣接する神恵内村、直接関係がない寿都町に、原発が立地する玄海町が加わったことで「条件が異なる自治体がそろい、より国民の議論が深まる。自分には関係ないという言い方は成り立たなくなるだろう」と期待した。 神恵内村の自営業の50歳代男性も「選択肢が増えたのはよいこと。調査を受け入れることが、施設が建つことだという誤解が一番の問題だ」と語った。寿都町長「同じ思いの首長を期待していた」 片岡春雄・寿都町長のコメント全文は下記の通り。 まずは、原発立地自治体の脇山(伸太郎)・玄海町長におかれましては、地元業界団体から町議会への請願、そして町議会における採択、更に経済産業相からの要請を大変重く受け止め、決断されたことに心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。 鈴木知事が「最終処分場の選定は日本全体で考えるべき問題」と発言しているとおり、特定の地域だけでの問題ではなく、日本社会にとって欠かせない最終処分事業の推進に向け、玄海町での取り組みが国民的議論を喚起する一石になればとの思いから決断されたこととお察しします。 私もこの3年半、同じ思いの首長が早く出てきてほしいと期待しておりました。 寿都町では、このたび玄海町が文献調査の受諾を表明したことにより、これまで再三申し上げていた通り、町民を対象とした勉強会などにより理解を深める取り組みを進めていきたいと考えております。 しかしながらこの事業は、国家プロジェクトであり、国が積極的に推進しているところでありますが、先行する諸外国では10地区程度の関心地域から徐々に絞り込んでいる一方、我が国ではそれに至っておりません。 この地層処分事業を、ニンビー(Not in My Backyard)問題にしてはいけないと思います。国民一人ひとりが自分事として受け止め、考えていくことが重要なことではないでしょうか。 最後に、寿都町、神恵内村、玄海町での議論の輪が、全国に広がり、さらに新たな調査地区が出てくることを期待しております。神恵内村長「日本全体の重要な課題」 高橋昌幸・神恵内村長のコメント全文は下記の通り。 このたび佐賀県玄海町の脇山(伸太郎)町長におかれましては、町議会による請願の採択、そして経済産業相からの要請を大変重く受け止められ、文献調査の受け入れを決断されたことに心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。 高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原子力発電の賛否にかかわらず、日本社会全体で必ず解決しなければならない重要な課題です。 私といたしましては、文献調査を実施する自治体がこのまま当村と寿都町だけにとどまると「ベター」を選ぶことになってしまうが、調査地区がさらに複数あれば「ベスト」を選べるのではないかと申し上げてきたように、当村はもとより、寿都町、玄海町での議論の輪が全国に広がり、さらに新たな調査地区が出てくることに加え、高レベル放射性廃棄物の最終処分について、全国の皆さまが自分事として捉えていただき、その関心が高まることを期待しております。 神恵内村では、引き続き原子力発電環境整備機構(NUMO)が作成した当村の文献調査報告書案に関する国の特定放射性廃棄物小委員会での議論を見守りながら、今後も開催される「対話の場」などにおいて地層処分に関する知識や理解をさらに深めていただく取り組みを進め、全国に発信していきたいと考えております。
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