爽やかな好青年に見える作家は、「理屈っぽい」性格だ。「何の意味があるのかを気にしている。理屈が分からないことはあまりやりたくない」。常識や伝統を疑う姿勢が、就職活動やネットの炎上などを題材に、華麗なひねりを加えた秀作を生んできた。
『方舟を燃やす』角田光代著
家族がテーマの本作も、単なる人情
譚(たん)
では終わらない。家族にまつわる世の常識や概念を分解し、本質を追い求める中で「だんだん奇妙な話になっていった」。
家族がそれぞれ転居するために、山梨の実家で行っていた引っ越し作業の中で、謎のご神体の像が見つかる。青森の神社から盗まれたとみられる像を返すために、家族は長いドライブに出ることになる。誰が、何のために像を盗んだのか、なぜ追跡や妨害を受けるのか――。様々な謎をはらみながら、旅は進む。その姿は、家族や、人生の姿にも似て見える。「何かを抱えながら、同じ車の中で共闘していく。終わってみると、メタファー(隠喩)になっている感じがします」 大学在学中に書いた小説でデビューし、2年ほどで会社を辞め、アルバイトをしながら執筆を続けた。売れない時期もあったが、覚悟を決めてミステリーに打ち込むと徐々に風向きが変わり、2021年の『六人の嘘つきな大学生』がヒット作になった。「書きたいのは、曖昧であり、中庸」
表計算ソフトを使って物語を
緻密(ちみつ)
に組み立て、伏線を張り巡らせる。その一方で、「僕が書きたいのは、善と悪ではなく、
曖昧(あいまい)
であり、中庸」。論理を突き詰め、それを超えた人間の姿に迫ろうとするのが、この作家のスタイルだ。
「トリックでも、読み味でも、誰かが書くものであれば、僕が書く意味はない。『何かまた、変なことをやっている』というのが、僕に求められていることかな」(KADOKAWA、1870円)川村律文
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