球磨川の源流域に位置する人口わずか2000人の熊本県水上村が、陸上競技の新たな「聖地」として注目されている。箱根駅伝を制した青山学院大をはじめ、実業団も含む全国の強豪チームが合宿地に指名し、昨年度は延べ6000人超が訪れた。人口減に悩む山あいの地に奇跡を起こしたのは、村を挙げて選手を支える「おもてなし」の心だ。(山之内大空)
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青学大の原監督ほれ込む
自然豊かなダム湖畔を走る青山学院大の選手たち(3月、熊本県水上村で) 熊本市から電車やバスを乗り継いで3時間あまりの水上村で3月下旬、青学大陸上競技部員が市房ダムの湖畔を駆けた。関東を拠点とする同部の合宿は初で、約50人が村内の旅館「市房庵なるお」に10日間ほど滞在した。食事は村が熊本保健科学大(熊本市)や食品大手の明治と共同開発した特別メニューだ。地元産の鹿肉や米をふんだんに使い、栄養のバランスにも配慮しながら成人男性の必要量の倍近い1日約4000キロ・カロリーを確保。村自慢の湯山温泉で疲れも癒やせる。 旅館は名将・原晋監督(57)が村にほれ込んで買い取ったもので、2015年の箱根初制覇時のメンバーだった村井駿さん(30)が支配人を務める。原監督は「ダム湖周りやアップダウンのある道など、練習環境がとてもよい。『睡眠』『栄養』『休養』の三拍子もそろっている」と太鼓判を押すと、田中悠登主将(21)も「温泉はすべすべで、疲労が抜ける」と笑顔を見せた。「高地トレーニング」に準じた効果 宮崎県境にあり、かつては温泉地として栄えた水上村だが、ピーク時(1955年)に約7400人だった人口は2000人を割った。村が着目したのが陸上競技だ。競技関係者から高低差のある森林や草原を走る「クロスカントリー」のコースづくりを提案されたことが決め手となった。 17年には約5億円を投じ、標高約1000メートルの地に村営のコース「水上スカイヴィレッジ」が完成した。村が村内13の旅館や民宿にも呼びかけて合宿の誘致活動を本格化させると、心肺機能を高める「高地トレーニング」に準じた効果が見込め、夏でも冷涼な気候が評判を呼ぶ。村によると、高校駅伝界の強豪・九州学院高(熊本県)や大牟田高(福岡県)、箱根常連の早稲田大や東海大に加え、トヨタ自動車九州(同)やマツダ(広島県)などの実業団も合宿に訪れた。パリ五輪の女子マラソンに出場する鹿児島出身の一山麻緒選手(26)も、1月の大会で優勝している。プーマジャパンと協定 スポーツ用品大手のプーマジャパン(東京)は村と協定を結び、自社製シューズを試し履きしてもらう活動を始めた。シェア(占有率)拡大を図りたい同社と、同社の製品を愛用するサッカー選手らの誘致を目指す村の思惑が一致した形だ。 「地方創生推進アドバイザー」に就任した原監督も、村に助言を行う。選手らの延べ宿泊数は17年度の約2300泊から3倍近くに増え、村地方創生推進課の那須裕平主幹(47)は「農作物の地産地消にもつながっている」と手応えを語る。
支配人として村に住む村井さんも「村の職員が一生懸命営業し、旅館側も客に『よかった』と思ってもらえる対応をする。こうした好循環が口コミで広がり、合宿文化が根づいていった」と成功の
秘訣(ひけつ)
を解説する。
村は全天候型400メートルトラックの建設も計画中で、招致するスポーツの幅を広げて村おこしのさらなる起爆剤とする考えだ。中嶽弘継村長(69)は「選手がよい成績をあげれば、自然とリピーターになる。周辺自治体とも連携して受け入れの裾野を広げ、『陸上の聖地』を目指したい」と夢を描く。スポーツで地域おこし広がる スポーツを通じた地域おこしは九州各地に広がる。来季から国内最高峰の「リーグワン」3部リーグに参入予定のラグビーチーム「ルリーロ福岡」は、「地域の人事部」をうたい、拠点を置く福岡県うきは市などで企業に選手を紹介。約50人が病院や学校、工場といった幅広い職場で働く。 人件費を抑えつつ、地域に働き手も供給する一石二鳥の取り組みで、島川大輝代表(40)は「企業からは『(選手が)誰よりも成果を出している』といった声をもらっている」と喜び、「リーグ戦での観客増にも期待したい」と話す。 女子サッカー「ヴィアマテラス宮崎」の本拠地・宮崎県新富町では、地域おこし協力隊員となった選手らが農業などに従事している。
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